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【エロゲ感想】アオイトリ(Purple software)

Purple softwareさん作「アオイトリ」の感想になります。

「アオイトリ」は、Purple softwareから2017年に発売されたエロゲです。
西洋風な女学園を舞台に、特異な力を持つ主人公がヒロインたちとの交流で自分の“色”を見つける物語です。

物語開始時点で100人斬りというヤリまくりの主人公が、
純潔のヒロインたちを抱きまくるのが魅力の作品ですね。

どうやらこのアオイトリ、公式サイトの説明によると「アマツツミの対比的な作品」のようです。

「アマツツミ」は「アオイトリ」の前にリリースされた作品で、非常に評価が高かったんですよね。
「そのアマツツミを超える!」って感じの心意気で作られているようなので、とても楽しみです。

※ネタバレ全開ですのでご注意ください。

目次

シナリオの感想

プロローグ

始まりの3日間

何だこのエッチシーンは!?

またしても開幕で見せつけてくるとは・・・パープルソフトウェア、侮れんw

というかエロい。エロすぎる。
快楽堕ちさせてチン〇ねだらせるとか律くんテクニシャンすぎない?
君、性のテクニックに不安があるとか言ってたけど、全然そんなこと思わなくていいからね?

それはともかく・・・あかりが性欲強めだったのは笑った。
ああいう大人しそうな子に限って、いざ行為となると積極的にチン〇求める・・・あると思います。
私も陥没乳首舐めて隆起させたい

その後は温室でフワフワ浮かぶ吸血鬼こと「メアリー・ハーカー」とご対面。
100年生きる彼女の過去が語られ、律も自分の境遇を打ち明けてお互いに仲を深めます。

そしてメアリーと律の奇妙な共同生活が始まるのかと思いきや・・・まさかのメアリーの自殺願望。
ここからラストまで、目を離せない展開でした。

なぜ律の血を飲むと日光が平気になるのかとか、
えらいあっさり血を飲むんだなとか些細な疑問は浮かびましたが、
最後のシーンがとても良かったのであまり気にはなりませんでした。

CGの構図も素晴らしかったですね。
吸血鬼には天敵とも言える陽光を浴びるメアリーと、傍らに佇む律の二人。

悪魔と吸血鬼という陰の象徴を、陽の象徴と言える太陽と対比させたこのCGは、
この作品のテーマのようなものを表しているようにも思えます。

神父であり悪魔の力を持つ主人公と、穏やかで純粋な心を持つ吸血鬼であるメアリー。
そして冒頭に出てきたあかりと、未だ少ししか姿を見せないヒロインたちの物語が気になってきました。

プロローグでこれは非常に良い掴みだと思います。先が気になる作りというか、魅せ方が上手いですね。

共通ルート

双子の妹小夜が現れて、律のこの先をどうするかを話し合い、
メアリーから「悪魔の力には愛で対抗するんだ!」と説かれます。
そしてメアリーが作った劇を演じることになり、主役を演じる女の子を律が決定することになります。

なんというか、普通に面白かったです。
妹である小夜の登場はなかなか意外でしたね。
同じ能力を持つ身内がやってくるとは思いませんでした。

にしてもいきなりキスして、その後しっかりセックスするハイスピード感よ。あなたたち、身内ですよね・・・?
まあお互い触れ合った時の快感から抑えが効かなくなるあの場面は、良く描けていたと思います。

・・・なんか思わずヤっちゃった的な雰囲気はありますけどねw 気持ちよけりゃいいんだよ!(おい

そして最後のヒロインである理沙が登場。
理沙が律の初めての相手だったのはちょっと驚きました。
「あーこの人が・・・!」と思わず声に出してしまった。

にしても共通の終盤でギリギリ滑り込んできたって印象がありますけど、
もうちょい早く登場させることはできなかったのでしょうか。出番が少ないですよね。

あとこの人だけ原画の人が違いますね。
絵柄が違うので、攻略ヒロインなのにそこはかとなくサブキャラ感が出ている・・・w

メアリー、小夜、あかりを描いてる克さんの絵が凄く完成度が高いので、出来れば克さんで統一してほしい。
単独原画はやっぱり負担が大きいから厳しいのでしょうか。

絵柄の話はこれぐらいにして。律の相手となる劇の主役を決めなければなりませんね。

個人的な気持ちで言えば正直・・・メアリー一択ですよね!
だってこの子ほんとに可愛いんだもん。

見た目はもちろんのこと、律くんの悩みとか的確に見抜いてくれるし、
しっかりとしたアドバイスをくれる頭の良さも兼ね備えているし。

正直非の打ち所がないというか、ストレートに魅力的なヒロインって感じなんですよね。

他のヒロインは小夜はちょっと癖が強すぎるし、理沙はなんか印象が薄いし・・・w
あかりも結構好きなんですけど、こちらは悲しみのルートロックがかかっているんですよ・・・。

というわけで、メアリーの√から行きたいと思います。
・・・君が主役になるんだよ!!

メアリー・ハーカー√

前半は良かったですが、後半が割と疑問の残る√といった感じでした。

劇の進展を描く前半は普通に面白い。
演技に感情が籠ってないと指摘されたメアリーは律と恋人同士のフリをし、その果てに結ばれるという王道展開。

恋を知らないメアリーが恋を知っていく過程は素直に楽しめました。
あーんのシーンはイチャイチャレベル高かったですね。

あと温室での逆さまkissは結構印象に残りました。あ、そういう風にするのね、とw

後半はメアリーの吸血鬼問題と律の力に関してを描きます。
律を支配したくなって首筋に牙を立てようとしたメアリー。
それを悪魔に糾弾されたから、
「吸血鬼の私はやっぱり死ぬべき」と自己嫌悪に陥り、再び自殺をしようとするわけですが・・・

これはなんだかなーと。
律はメアリーの自殺を一回止めていて、
メアリーの様々な未練を解消して生きてもらおうと頑張っていたわけですよ。

なのに、ちょっと吸血鬼の衝動に飲まれそうになったから「やっぱり死ぬ」というのは短絡的すぎませんか。
この時のメアリーは話聞いてくれないので、辟易しましたね。
「自分が死ねば全部解決」とか思ってるの大間違いだよ。

自分が死ぬ以外の選択をハナから受け付けようとしないメアリーの振る舞いは、独りよがりがすぎる。
もっときちんと律と話し合ってほしい。

というかプロローグで綺麗にオチが付いていて完成度高かったのに、個別√で安易な自殺展開の焼き直しをしないでほしかった。

律の力に関しては不明な点が多すぎますね。

律は吸血鬼の力を取り込み、自らの悪の力を「これまで救ってきた女の子たちとメアリーの想いの力?」で抑え込むわけです。
まあ正直意味が分からないですよね。

律に宿った「彼女たち」の善性が、「救世主」の悪性に打ち勝ったみたいな感じなんですかね?
多分律が彼女たちやメアリーから得ていたものは悪い感情だけではなかったということなんでしょうけど・・・
詳しい説明がないので理解できません。
まあ今は置いておけってことですね、多分(

ところでED後に幕間で悪魔とあかりのやり取りがありましたね。
なかなか気になる内容でした。

メアリー√の出来事が悪魔を通じてあかりに語り聞かされていた・・・ってことでしょうか。
悪魔はいくつも世界線を観測できる存在なんでしょうか。
そしてこの話を聞かされているあかりはどこの世界線のいつのあかり・・・?

アオイトリというのは「内に宿る力」のことを示しているんでしょうか。

色々疑問は尽きませんが、不穏な雰囲気を漂わせていますね。あかりの狙いが気になるところです。

さて、伏線が大量に撒かれてしまいましたが、
全てを終えないと真実には辿り着けないので個別√進めていきましょう。

赤錆理沙√

後半で怒涛の展開といった感じですが、モヤッとする感じのシナリオでした。

前半に伏線が散りばめられていて、それを後半に回収するわけですが・・・理沙の病に関しては疑問が大きいです。

理沙が何か事情を抱えているのは読み取れますが、それが病だと推測できるような材料が何も描かれていません。

診断書が机に置かれていたりだとか、病院との通話記録が見えたりだとか、
電話で理沙と病院の人がやり取りしているのを聞いちゃうとか。

そういった匂わせるような描写が一切ないまま本人の口からそれを語られるので、非常に唐突な印象しか与えません。

まあこれに関しては「理沙が巧妙に隠していたから誰も気づけなかった」ということなのかもしれませんが・・・
少しだけでもいいので、推測できる要素がほしかったです。

あと理沙の病気に関してもう一つ言いたいことがあって、
「病で余命が短いヒロイン」という、この使い古されたお涙頂戴要素が、
「美果子の死と理沙の死の二択を迫る」という展開のために用意された、
「安易な舞台装置」としか思えないということです。

それはなぜか。
「命の扱いが軽いから」です

なぜ「扱いが軽い」なんて言えるのか。
この物語の終盤を簡潔にまとめましたので、まずはこちらをご覧ください。

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過去に戻った律の超常パワーで、理沙の病を早期治療!
悪魔「二つに分かれた世界、繋げといたで」
理沙の病気はこれで完治! 美果子の契約も理沙の病気が無くなったから無効! 
二人とも元気でハッピー! バンザイ!!
Fin.

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・・・もうね、アホかと。
人の命を何だと思っているんだ。

このように、悪魔の匙加減一つで人の命なんて簡単に引っくり返せるわけですね。
だから扱いが軽い。人間の死を無かったことに出来る。平気で理を捻じ曲げる。

そのような「反則」がまかり通る物語で、「病気で死が近くて~」なんて言われても何も響かない。

正直このシナリオはやりすぎだったように思えます。
残りの√で律とヒロインたちにどれだけ過酷な運命が待ち構えていても、
私は「悪魔の力でやり直せばよくない?」と思ってしまうでしょう。

そこを逆手に取り、そこまで見据えたシナリオがグランド√で展開されているならば・・・私は手のひらクルーします(

「この世は舞台、人はみな役者だ」

かの有名なシェイクスピアの言葉を示唆するようなシナリオでした。

物語を読んで感情が動き、その情動を感想に起こす。
それがもし、誘導された結果だとしたら・・・?

プレイヤーである私までもが、何者かの手の上で踊らされていたのかもしれません。

黒崎小夜√

生き別れた兄妹の愛を描いた√でした。

前半はコメディメインの日常が多めではありますが、
律の能力の成長や小夜の身体の不調などの伏線がしっかりと配置されていましたね。

また、小夜と律が二人で行動する理由付けも丁寧に書かれていると感じました。
何かとメアリーが気を遣ってくれるわけではあるんですが、それが無理なく違和感がないんですよね。

劇の主役同士、生き別れの兄妹がお互いを兄妹だと知った時の感情の機微を学ぶためだとか、
物語の設定を上手く使って、違和感なく律と小夜が二人でいる時間を確保している。

不自然さを感じないので、律と小夜の会話に集中できる。仲を深める二人を微笑ましく眺めていられる。
こういった細かい部分の配慮が物語への没入具合を高めてくれるんですよね。

ちなみにダメな例は共通パートの「あかりとプールで出会うシーン」とかですね。
急にメアリーがトイレに行くとかいってその場から消えるあのシーン、違和感が半端ないw

話を戻しまして。
後半で「自身に宿っている母親の記憶を辿る」という形で、律と小夜の過去が明かされます。

これに関しては正直ちょっと無理やり感はありますが、
でも「律の力を使って胎内にいた頃の記憶を辿る」というのは上手く落とし込んだなと思います。

母親以外誰も知らないわけなので、説明する機会がどこにもありませんからね。

内容に関してはなかなか衝撃的でしたね・・・。
母親に愛されていなかった律。
産み落とされたときの「人の形をしているけど、人じゃない」というあの書き方が秀逸ですね。

母親が思わず落として、あげく石で殺そうとするとか・・・やばい。
「どんな醜悪な見た目をしているんだ」と思わせるような、
人ならざる「何か」を上手く想像させていた気がします。

他にも処女懐胎だとか母親自体が人外だとか、割と想像を絶するような内容で凄かったです。

小夜の名付け親がメアリーだったのも予想外でした。
というか母親がメアリーと出会っていたのが意外でした。

気になる律と小夜の過去が明かされたのは非常に良かったです。夢中で読み進めてしまいました。

そして物語のクライマックス。

律は衰弱する小夜の死を見届けるかと思いきや、メアリーを殺して小夜を助けようとする。
が、それもフェイクで本当の狙いは「自らが死んで、小夜を助ける」こと。

そのために悪魔とメアリー、そして最愛の小夜をも騙しきる。
律の想いの強さが凄かったですね。

「小夜を意地でも助けたい、でもメアリーを殺すことなんてできない。だから自分が死ぬ」

葛藤の先の答えにそれを出し、実行するなんて並大抵の人には出来ないですよ・・・。

あの携帯電話を空に放った理由は「なるほど・・・!」と納得できるものでした。
これは悪魔もしてやられただろう、と。

まあこの律の奇行を徹底的に突き詰めて考えない悪魔はかなり間抜けではあると思いますが・・・w
ここは律が一枚上手でしたね。

廃駅のベンチで自殺を試みる律のシーンはなかなか強烈でした。
いよいよってところで手が動かなくなるの、凄く人間味がある。
内に悪魔の力があるとかどうとか言ってますが、律もやっぱり人間なんですよ。

死への恐怖はちゃんとある。
しかもこれ電車に飛び込むとかじゃなくて、自分で首を切るわけですからね・・・。そんなの怖いに決まってる。

そして律はいなくなり、小夜は一人、律を探す旅に出る。

「劇の最後はビターエンド」

おそらく、この物語の最後を示唆していたのではないかと思います。

生き別れた兄妹二人の重く儚い物語でした。
小夜の行く先に律がいることを願ってやみません。

海野あかり√

さて、いよいよ大詰め、あかり√へ参ります。

最後まで一気に進めました。
いやはや・・・これは衝撃ですね。

律の子を妊娠して、「特別」な者たちへの復讐を行う。
これがあかりの狙いだったと明かされただけでも衝撃なのに、それもブラフで本当の狙いがあったことにも驚いた。

そしてその本当の狙いに関してもサラッと冒頭で明かされていて、
また終盤に差し掛かって一気に畳み掛けてくる構成も巧みであり、
伏線の配置と話作りが実に綺麗で感服いたしました。非常に素晴らしいですね。

内容に関しても驚きの連続でした。

律とあかりが山荘に言ってひたすらメーテルリンクの『青い鳥』を考察してセックスしまくってるときは、
ぶっちゃけちょっと眠くなっていたのですが(おい

律の子を妊娠して起き上がったときのあかりの豹変ぶりは本作屈指の衝撃シーンだったと思います!

今まであかりが演じていた「お喋りが好きでエッチな女の子」というキャラ印象を吹き飛ばすような、
凄まじいギャップを醸し出していましたね!

あのあかりの氷のような視線からの「豚のようね……」は間違いなく最大瞬間風速200m/sを記録しました。
秋野花さんの演技が上手すぎて一瞬本気でヒヤっとしました。めっちゃ怖いよ! あのあかり!

彼女の内に抱える深い闇が一気に表出したかのような、
特別な存在「アオイトリ」を憎悪する彼女を象徴するようなシーンだったと思います。

そしてその後もまあヤバいんですよね。
メアリーと小夜、そして美果子と理沙を殺してしまうあかり。
特別な存在であるメアリーと小夜を殺しちゃうのは百歩譲ってわかる。
けど美果子と理沙は許してあげて・・・彼女たち、普通の人間だから。

まあ本編でも言ってましたけど、積極的に殺すつもりはなかったんですよね。
その場にいたから殺したと。うん、それにしてもちょっと可哀想・・・w

そして礼拝堂でメアリーを殺して吸血鬼の力を奪い、
特別な存在である者たちはみな、普通の存在であるあかりに蹂躙されてしまいます。

ここからの悪魔とのやり取りが熱かったですね。

あかりは、己の勝利を確信する悪魔を滅ぼす一言を放ちます。

「神を信仰しなさい」

神と対局の存在で、世界を破滅させようと企む「悪魔」が神を信仰する。
己のアイデンティティを引き裂かれた悪魔は存在意義を失い、消滅する・・・。

見事な手腕でしたよね。みんなあかりの手の上で踊っていたという。

数多の世界を観測して自由自在に飛び回り、
自らの最も理想とする世界を掴み取ろうとした闇の悪魔が、
凡人とこき下ろしたあかり(光)にかき消されるという皮肉なオチ。

だが、最後まで偽の悪を演じきったあかりは、
救世主の力をその身に宿すという重すぎる負担を抱えた末に、こと切れてしまう・・・。

これは悲しすぎました。

「こうするしかなかった」なんて、そんな悲しいこと言わないで。
特別とか平凡とかそんなこと気にしなくていい。
悪魔に一人で立ち向かったあかりはめちゃくちゃ凄い人間です。
世界をたった一人で救ってみせたんだ。人類の未来を守ったんだ。自分を誇っていいんだよ。

しかし、彼女が救われる未来はないのか。
光に満ちた最高の世界はいずこに。このままでは終われない。

ハッピーエンドを求めて。ラスト、行きます。

海野あかりトゥルー

視点があかりに変わり、悪魔とみんなを騙しきるまでの過程と通常のあかり√では描かれなかった日常、
及びあかりの細かな心情が描かれる√。

基本的にあかりの心情補足といった感じで、舞台の裏側を知っていくことになります。

奇妙なメールやゆきちゃんとの日常など、
律の視点ではわからない彼女の過ごした日常風景はとても貴重でした。
カップサイズの話は笑いました。

そしてやってきた終盤。
辛い気持ちを必死で抑え込みながら律を豚と罵って、足を引きずりながら屋敷へ向かうあかり。

屋敷の入り口で対峙した、小夜の対応が神すぎた。

あそこであかりの背中を押すって・・・常人には絶対に出来ないですよ。
自分が死ぬと薄々わかっているのに、何かをしようとしているあかりを止めずに「やれ」と言い放つ。

あかりへの強い信頼が垣間見えた、小夜の一番かっこよかったシーンでした。あれは惚れてまう・・・w

そして運命のラストシーン。

救世主の力を律に戻せば、あかりは生き永らえることができる。
何者かの誘惑の言葉。まさに禁断の果実が差し出されたかのような悪魔的提案。

しかし、あかりはそれに乗ることなく、再び自らが死ぬ結末を選ぶ。

かっこいい・・・かっこよすぎる。
このあかりの選択は本当に凄いですよね。彼女は決してブレないんですよ。

アオイトリを憎悪し、特別な存在を疎ましく思う彼女は、
特別な存在である「メアリー」「小夜」、そして「律」を普通の平凡な人間にすることに成功したわけです。

みんなに普通の日常を送ってほしい、そんな彼女の優しい願いと祈りがようやく実現したわけです。

なのに、救世主の力を律に戻してしまうと、
律は再び力による束縛を受ける。そして学園という鳥籠に閉じ込められる。

それでは意味がないわけですよ。鳥籠から解放したアオイトリを檻に戻してはいけない。

解放された彼らの生と、内に宿したあかりの死。
あかりの言った『青い鳥』のテーマ「生と死の意味」。

非常に綺麗な対比であり、
アマツツミとはまた違った視点で、死生観について考えさせられる構造になっていた気がしますね。

ここでは終わりかと思いきや、なんとまだ終わらないんです。
お馴染み死後の世界?っぽいところで、あかりは律に出会います。

この律はどうやら小夜√の律みたいです。
これは素直に驚きました。まさかここでそう繋がるとは思わなかったです。

このまま諦めて死に行こうとするあかり。
律はそんなあかりの胸倉をいきなりガバっと掴んで詰問する。「それでいいのか」と。

・・・荒い、この律荒いよw

そしてあかりの「生きたい」という本音を引き出す仕事を終えた彼は、再び真っ暗な世界を歩き出す。

イケメンすぎました。最後いいとこ持って行きやがって・・・。
さすが主人公ですね、別の世界のヒロインでさえ助けないと気が済まない。
そんな生き物なんだ、主人公ってやつは。

そしてラスト。
何事もなく生き返ったあかりは律の子を産み、律の子が世界を憎まないように祈ります。
空に羽ばたく青い鳥が幸せを運ぶことを信じて・・・。

良いラストでしたね。
最後の青い鳥は思わせぶりですが、ここは単純に「幸せがやってきたのかなー」と解釈しました。
めでたしめでたし。

主人公“白鳥律”の感想

かなり特殊な身の上と環境に置かれた主人公。
救世主の力もアレですが、学園の女の子とヤリまくって物語開始時点で100人斬りって・・・うらやまけしからん

女学園に唯一いる男子、天涯孤独、料理が得意、実はお金にはあまり困ってない。
・・・うん、エロゲ主人公だ。正しくエロゲ主人公してますね。

ただ、女の子を抱き続けている理由が結構シリアスで、
この重い過去が律の行動原理の中核を担っていた気がしますね。

度々「どうして~」って出てくるので、彼は相当思い悩んでいます。
人を幸せにしないと気が済まない狂人とは悪魔の評ですが、いやまさにって感じですね。

おまけに世間知らずなので、普通の人よりかなりずれてます。同人って言葉を知らなかったり。
境遇や生い立ちが特殊すぎるゆえに、感情移入できるタイプの主人公ではないですね。

ただ、そんな歪な「白い鳥」である彼が、ヒロインと関わっていく中でどんな色に染まっていくのか。
それを見守っていくタイプの主人公と言えるでしょう。

そういえば名前って全員色入ってますね。

白鳥(白)、ハーカー(赤)、黒崎(黒)、あかり(赤)、赤錆(赤)、ゆき(黄)。
赤率高いですねw 身内で白と黒も綺麗に揃ってますね。
あかりは個人的に赤ニュアンスよりも光って感じがするんですけど。

あと「アオイトリ」と「アかリ」のアとリを一致させてる辺りとか、
海の灯台(海の底知れない闇とそれを照らす光の対比?)とか、
あかりの名前は大分考えられてる気がします。まあ、深読みしすぎなだけかもですけどw

総評

全寮制の女学園にいる唯一人の男子学生である律と、
特殊な力、性質、想いを持つヒロインたちとの交流の物語である本作。

描かれるドラマはどれも美しく魅力的でした。
中でも小夜√とあかり√は特に際立っていたように思います。
小夜√は単体でもほろ苦い兄妹恋愛の話で良かったですが、最後があかり√に繋がるのがかなり衝撃でした。

そしてあかり√はセンターヒロインの√ということでかなり力が入っており、
あかり√が「アオイトリの本編」と言ってもいいぐらいです。

各√のラストで描かれる幕間が伏線となっており、
あかり√に全てが集約していく全体の構成は、物語を盛り上げるための最高の働きをしておりました。

ただ、終盤の内容に関してはあかりが悪魔を倒して全て片付けてしまったので、
ぶっちゃけあかりが主人公になっていたかのような印象も少しありました。

あかりに関しては他にも言いたいことがありますが、長くなってしまったので以下に格納しておきます。

海野あかりに関して(クリックで展開)

律とあかりがお互いを好きになっていく過程の描写なんですが、
二人とも「いつの間にか好きになっていた」というような感じなので、唐突な印象を受けます。

この辺りに尺を割く余裕はなかったのかもしれませんが、
ここをしっかり描くことであかりにとっての律を、
例外的かつ好意的な「特別な存在」という、一つ上の存在に昇華させることも出来たと思うんですよね。

律という存在があかりの中で矛盾になる。
そうなっていたら律を地べたに這わせることによる抵抗が強くなり、
あのシーンのあかりの葛藤がさらに苦しみに満ちた、光るものになっていたんじゃないかと思います。

またあかりは自分に自信を持っていないのが「平凡だから」という理由ですが、
これだとやや漠然としていて説得力に欠けるきらいがあります。

平凡だからという理由自体はいいんです。
私が言いたいのは「なぜそう思うのか」というところですね。

あかりの過去をもっと掘り下げて、
海野あかりという人間を理解させてほしかったんです。
なぜ自信を持っていないのか、なぜ特別な人間が嫌いなのか。

もっと具体的な描写を通じて海野あかりを理解したかった。
あかりに深く感情移入できるようにしてほしかった。

そうすることで彼女とのシンクロ率が高まり、
あかりトゥルーにおける律の「僕が、君を赦すよ」の威力が最大限に高まると思うんです。

あかりの力尽きる前のあの叫びは、彼女の「主張」なんです。
その主張はどこからくるのか、海野あかりという人間の人格を構成する過去、そこを詳らかに描いてほしかった。

少し長くなってしまいましたが、要するにあかり自身の掘り下げをもっとして欲しかったってことですね。

全体的には綺麗にまとまった良い作品だったと思います。

あかり√はなかなか盛り上がるものがあって、トゥルーまで一気に進めてしまいました。
面白かったです。

・・・そういえば、メーテルリンクの『青い鳥』は読んだことがなかったので今度読んでみたいと思います。
自分の知らない何かに興味を持たせてくれるような作品って良いですよね。

「アオイトリ」楽しませていただきました!

点数

シナリオ 17
(共通部分、小夜√、あかり√が良かった)

キャラ 16
(メアリー、あかり、ゆきが好き)

音楽 16
(なかなか。メアリーのテーマとあかりのテーマは◎)

システム及び演出 17
(良い。システム面は洗練されている感じで、不便無し。
演出も劇の演出の背景や効果音がしっかり反映されていて芸が細かい。
ただ、電話の悪魔の声がやや耳障り。エフェクトがかかっているんですけど、キンキンするのが少し気になった)

全体の完成度 19
(非常に高い。各ヒロインの√が伏線になっており、かつ破綻していない。
そして納得の結末。綺麗にまとまった作品だと思いました)

合計85点です(100点満点中。各項目は20点満点)

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