FrontWingさん作「グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-」の感想になります。
FrontWingさんの作品はこれが初プレイとなります。
グリザイアシリーズに関しての前知識はほぼありません。主人公がかなり強い、天音の過去が重い?ぐらいの知識です。
評価がすこぶる良いので、とても期待しております。
というかパケ右端のカッター持ってる女の子が気になるんですが。
ビジュアルといい雰囲気といい、化物語のひたぎさんにしか見えない(
※ネタバレ全開ですのでご注意ください。
シナリオの感想
共通パート
最後まで進めました。
いやー面白いですね!
なんというかキャラの掛け合いがすごく楽しいです。
頭のネジが3本くらい外れた人間ばかりですが、見ていてほんと飽きないです。
天音の性的なネタ、蒔菜の口の悪さ、みちるの頭の悪さ、幸の天然ボケ、由美子の・・・手癖の悪さ?(カッター的な意味で)
まあ由美子だけ若干キャラ薄い気もしますけど、そこは気にしない(
中でも蒔菜の口の悪さがかなり好きです。
「いやそこまで言っちゃうの?」って思ってしまうような、暴言一歩手前ぐらいの口の悪さが良いですね。
ランニング中の「ジジイのファックの方がまだ気合いが入っている! この腐れマ○コども!」にはめっちゃ笑いましたw
みちるの頭の悪さはかなりのものですね。
はっきり言ってやばいです。脳の病気を疑うぐらいというかw
海に行く前の車に乗り込むシーンで、後だしでじゃんけんに負けるところはめちゃくちゃ笑ってしまった。
直前で水着のまま現れてからのあれですから、耐えられませんでした。久しぶりに大笑いしましたよw
とはいえ、みちるのアホさ加減についてはとあるシーンでよくわからなくなってしまった感はありますが・・・。
あれは一体なんなんでしょうねー。まっさきに思いつくのが多重人格説ですけど、情報が少なすぎてわかりませんね。
妙な豆知識を織り交ぜつつ描いたコメディメインの日常と、ときおり垣間見せるヒロインたちの闇とのギャップも良かったです。
惜しむらくは尺の長さですね。べらぼうに長いです。ざっと15時間ぐらいでしょうか。早い人でも10時間はかかりそうな勢い。
内容は面白いので良いんですけど、もう少しコンパクトにしてほしかった。いくらなんでもこれは長すぎる。
もっともっと色々と語りたいんですけど、際限なくなりそうなので共通の感想はこのあたりにしておきます。
というか何日もかけてプレイしていたので、最初の方とかもうあんまり覚えてない(
さて、それでは個別の感想に参りましょう。
最初は由美子√から!
榊由美子√
由美子の過去があそこまで重いとは思わなかった・・・。
いやほんと舐めてました。めちゃくちゃ重いです。軽い気持ちでプレイすると手痛いしっぺ返しをくらうぐらいには。
カッターで切りつけるシーンは「やっちゃったか・・・」って心境でした。
まああそこまで追いつめられると仕方ないのかもしれない・・・。
由美子の父「榊道昭」は悪役として描かれ続けていましたが、根っからの悪人というわけではなく。
社長の座から引きずり降ろされたことで自らの過ちに気付いたようで。ラストでフォローされていたのは良かったです。
彼のしたことは決して許されることではありませんが、由美子や雄二と共に真っ当な人間になることを願うばかりです。
この√での個人的ハイライトはやはり七面鳥でバードストライクを起こす場面でしょうかw
あの場面色々とご都合主義が酷いですけど、それでもとても面白かったです。
なんというか「300キロ出せるガヤルドスパイダーで飛行機の傍を並走し、ジェットエンジンに七面鳥を投げつける」っていう発想がすごい。
ぶっちゃけとんでもないことしてて、現実でしようものなら迷惑行為やスピード違反等々で即逮捕されるレベルのシーンなんですけど、
ゲームだからそれもアリというか。こういう勢いに任せたようなシーン、すごく好きです。
あとはその他雑感など。
全体的に良かったとは思いますが細かく気になる点も少々。
榊道昭をどうやって失脚させたのか。JB経由で国交省となにかしらのやりとりがあったようですが、具体的な内容とその詳細が描かれません。
ラストのJBとキアラの会話シーンによると、この失脚劇は元々想定されていたようですけど、
「だからなんだというのか」って感じで、微妙にモヤっとしました。
こういうの詳細に描いてほしい人なんです。私頭良くないので!(
あと、由美子が「女だから」って理由だけで迫害されるのはどうなのかなと。
今どきそれだけの理由であそこまでの悲劇が起こるものなんでしょうか。
まあ周りに恵まれなかったのもあるのでしょうけどね。クズみたいな人間ばかりで反吐が出そうになります。
まあとにかく男尊女卑が過ぎるというか、「男でないといけない」っていう価値観はあまりに前時代的で、
やや現実離れしているように感じてしまいました。
もしかするとラストで会社を興したのはそういう理由もあったのかも?
女でもできるんだぞーってところを世の中に示したかった、とか。
まあ憶測なので真偽のほどは定かではないですが。
小嶺幸√
いやー素晴らしかったです。
過去のトラウマに囚われる幸を救いだす物語、でしたね。
EDへの入り方や、ラストの綺麗な締め方なども最高でした。
これ以上はないくらい、後腐れのない終わり方ではないでしょうか。
両親がトラックに撥ねられる場面は正直「ありがちだ・・・」とは思ってしまいましたが、そこからが良かったです。
大切なものを守るために「良い子」を演じ続けた幸ですが、「良い子」であろうとするがために大切なものを破壊してしまう。
幸のそんな生き方は本末転倒であり、「非常に危ういもの」だということを雄二が身体を張って証明してくれました。
学園爆破はかなり面食らいましたけどねw
そして母親の残した「どうして・・・」という言葉に苛まれる幸。
ここのちょっとしたトリックというか引っかけには思わず唸らされました。なるほど、そういうことだったのかと。
工場に用意されていた幸への誕生日プレゼント。幸の頑張りへのコメントがひとつひとつ丁寧に綴られておりました。
このシーンは本当に素晴らしかったですね。まじで涙が出そうになりました・・・。
そしてエピローグで靴飛ばしの伏線を回収し、幸√はENDですね。
いやーほんと良かったです。
雄二がしっかり幸のことを考えて行動しているのもポイントが高かったかと思います。
初めのエッチシーンで最後までしなかったり、幸の生き方は危険だということを学園爆破で気付かせたり、母親ときちんと向き合わせたりして。
問題の根本的な解決に向けて動こうとする姿勢がとても素晴らしい。見習いたいものです。
欠点らしい欠点も見あたらない、とても完成度の高い√だったかと思います!
・・・あ、バッドエンドだけは許さないです。あれは普通に引っかかるよ!
内容に関しては思い出したくもないのでこの辺で。
松嶋みちる√
いやー良かったですね。面白かったです。
ラスト一人二役みたいになってたのが愉快でしたw
あとEDがすごく凝ってて驚きました。ポップな雰囲気でとても可愛らしいですし、右下に黒猫がいるのもグッド。
シナリオに関してはまずまずといったところ。
悪くはないですが、のめりこめるようなデキでもなかった感じで。
人格の入れ替わりに関しては結構驚かされましたけどね。
みちるの過去の描写が浅いので、そんなに重く感じなかったです。
由美子や幸の過去はかなり詳細に描かれていましたけど、みちるの過去はなんか概要だけって感じであまり感情移入できなかったですね。
あと親友も自殺して終わりだったのが残念。もう少し掘り下げてほしかった。
というか本編で明かされてませんけど、親友が惚れてた男ってみちるの父親なんでしょうか。もしそうだとすれば本当に酷い話ですが・・・。
入巣蒔菜√
いやー良かったですね。
終盤は少し尻すぼみしていたような気もしますが、非常に読ませるシナリオだったように思えます。
蒔菜の妹「沙里菜」が爆破テロの憂き目に遭うまで日常描写が続きます。
この日常描写も普通に面白いんですよね。
二人で繰り広げるレンジャーごっこがかなり本格的で笑いました。
あと銃描写のこだわりが完全に軍事マニアの域という。
というか銃に限らずですけど、バイクの部品や薬品の名称等、あらゆる事物を専門的に描写できるこのライターさんの筆力には目を見張るものがあります。
これぞまさしく「プロの技」だなと。そんじょそこらのなろう作家には到底描けないものでしょう。素晴らしい仕事です。
話をシナリオに戻しまして。
爆破テロが起こってからは流れが変わり、お家騒動が徐々に佳境へと迎っていくわけですが。
ここの情報を提供してくれるのは由美子ですが、ちょいと事情通すぎるような気が。
一応情報ソースは明かされているわけなんですけど、取ってつけた設定感が半端ないです。
まあ雄二に情報をもたらす人間が必要であることは理解できますが、
雄二と蒔菜の二人にとってかなり都合の良い存在になってしまっているので、大分違和感がありました。
蒔菜の務めるパン屋が火事に遭い、蒔菜暗殺作戦が開始されます。
蒔菜と共に逃げる道を選択した雄二。その逃避行の果てにあるものとは・・・。
ここが蒔菜√のクライマックスですね。
内容に関しては80%満足・・・といったところでしょうか。
蒔菜が撃たれて病院に行くところまでは良かったんですけど、そこからなんですよねー。
正直決して悪くはないんです。とことん争って血を流して得た平穏というのも一つの答えなんだろうと思います。
しかし、やはり「蒔菜と清夏の和解」を見たかったというのが私の偽らざる本音ですね。
「母親との和解への道」を、もう少し探ることはできなかったのだろうかと。
親の愛情に飢える蒔菜を本当の意味で救ってあげたかったように思うんです。
そして見てみたかったんです。母と手を繋いで歩く蒔菜の、とびきり嬉しそうな笑顔を。
・・・あ、BADENDは何もかもヤバすぎたので特に言及しないでおきますね(
周防天音√
天音の過去が明かされるところまではあまり面白くないです。
なんか上っ面だけの関係というか、てきとうなイチャイチャを見せつけられてるような感じ。
「エロシーンのノルマをここで回収しておくぜ!」といわんばかりです。
「それはほどほどでいいから早く天音の過去を教えて」と思ったのは、私だけではないはずw
毒虫の噂を耳にした雄二はそれを天音に質問する。日記を読み返すという形で、ようやく天音の過去が明らかになります。
ここから先はマイクロバス転落から天音生還まで一気に描かれます。ここが天音√の本編といっても過言ではない(
「天音の過去が重い」という話は耳に挟んでいたのでそれなりの覚悟はできていたのですが、
それでもあの惨劇は堪えるものがありました・・・。
「集団でのサバイバル生活」においての、まさに最悪の結末というか。
思わず目を背けたくなるぐらい悲惨なものでした。
この過去編においての見所はやはり、名前だけ出てきていた雄二の姉「風見一姫」が登場するところでしょうか。
いきなりのサバイバル生活に混乱する部の仲間を、明晰な頭脳と能力の高さで導く一姫は非常に頼りになる存在。
天音と一姫のやり取りもなかなか面白かったです。基本的に天音が弄られているだけですけどw
ボイスが青山ゆかりさんだったのは意外でした。ちょっと合ってないような気がしないでもないですが。
一姫の安否については結局明かされませんが、多分生きているんじゃないかなと。
明確な根拠があるわけじゃないですけど、死んだならはっきり死んだと書けばいいわけで。
わざわざボカすということは、続編のTRUE√(あるのかわかりませんが)でひょこっと戻ってきたりするのではないかと。
雄二と一姫の掛け合いはかなり見てみたいですね。まあ天音と同じく雄二も基本弄られる感じになりそうですけどw
あと弟に対するスキンシップの仕方が異常だったのは笑いました。
風呂場でマ○コ見せつけたりベロチューしたりはさすがに頭がおかしいとしかw
過去編を終えた後は頭のおかしい坂下父をぶちのめし、
雄二と天音の最期を描いています。
EDラストのCGは素晴らしい。あと孫の鈴音ちゃん可愛い攻略したい(
バッドエンドの方もそんなに悪くはなかったです。
死してなお足にしがみつくのはもう執念の深さというか、天音の強さが垣間見れたような気がしましたね。
主人公“風見雄二”の感想
非常にクセのある主人公ですけど、めちゃくちゃ強いです。
初っ端から引ったくり犯をぶちのめしたり、
由美子のビンタを頬に触れる寸前で受け止めたりとなかなかの超人ぶりを発揮します。
あと育った環境ゆえか軍事的な発言が多いのも特徴ですね。
すぐそっち方面に解釈して思考を巡らせるのはフルメタの宗介を思い出しました。あそこまで酷くはないですけどw
結局雄二の過去は明らかにされませんでしたが、続編の迷宮で明かされそうな感じなのでそちらのほうに期待。
雄二の過去そのものはもちろん、師匠である日下部麻子、そしてJBとの馴れ染め、「市ヶ谷、赤坂、霞ヶ関」といった、
度々口にするこれらの詳細も気になるところです。どこまで明かされるのか楽しみですね。
総評
訳ありの生徒が集う美浜学園にて、重い過去に囚われるヒロインたちと雄二との交流を描いた本作。
初めは六人しかいない学園に違和感を覚えましたが、学園の成り立ちとヒロインたちの抱える過去を鑑みれば納得できますね。
日常描写とコメディメインの共通パート、ヒロインたちの過去に焦点が当たる個別√と、
きっちり住み分けできているところは良かったかなと思います。
シナリオの出来はどれも素晴らしく、止め時を見失ってしまうぐらいのめりこんでしまいました。
個人的には蒔菜√が一番面白かったです。
筆力の高さはもちろん、先が気になる構成の上手さ、どうなってしまうんだ?っていう緊張感等、
読み物として非常にレベルが高かったです。全力で楽しめた√でしたね。
反面、みちる√だけはちょっと弱かったように思えますね。他の√と比べて眠くなってしまう場面が多かったのが残念。
雄二の過去等明かされていない要素も多々存在するものの、非常に完成度の高いゲームでした。
続編の迷宮に期待です!
点数
シナリオ 19
(全編に渡って非常に面白い。みちる√のみやや弱い)
キャラ 20
(どいつもこいつも個性が強すぎるw この作品の魅力の一つかと)
音楽 16
(音楽に関しては若干弱いかもしれない。不安を煽るBGM「デッドロック」の出来は素晴らしい)
システム及び演出 17
(おまけがすごく充実していて満足。システムボイスはランダムがあると良かった)
全体の完成度 19
(非常に高い完成度。共通√が長すぎるのは玉に瑕ですが、それ以外の欠点はほぼありません)
合計91点です(100点満点中。各項目は20点満点)
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