Keyさん作「終のステラ Stella-of-The-End」の感想になります。
「終のステラ Stella-of-The-End」(以下、終のステラ)は、
Keyから2022年9月に発売された全年齢美少女ゲームです。
人類が機械に支配されてしまったポストアポカリプスの世界を舞台に、
運び屋の主人公“ジュード”が、アンドロイドの少女“フィリア”と共に旅をする物語です。
※ネタバレ全開ですのでご注意ください。
終のステラのネタバレ無しレビューはこちらのサイトに掲載しております。
シナリオの感想
旅の始まり
終のステラはこのような感じで、チャプタータイトルが表示されて進んでいきます。
毎回チャプターの画像貼ると煩雑なので、以降は省略しますね。
《あらすじ》
運び屋で生計を立てる主人公“ジュード・グレイ”は、
“ウィレム・グロウナー”という公爵からアンドロイドの回収任務を請け負うことに。
アンドロイドの少女“フィリア”を回収したジュードは、
中継地点の街で休憩を挟み、次の交信地点へと向かう。
なんか普通に面白いですね。
機械に支配された未知の世界を旅するなんて、
男心が刺激されちゃいますよね。ワクワクします。
話としても、
フィリアを欲し、人類の復興を謳うウィレムの狙いが気になるところ。
ウィレムが何やら悪いことを企んでおり、
それを知ったジュードはフィリアの引き渡しを拒んでしまう……
みたいな展開が王道かと思われますが、はてさて。
主人公のジュードは気難しそうな性格してますが意外に優しいですし、
ヒロインのフィリアも普通に可愛いので見ていて癒される。
二人が心を通わせる場面を早く見たいですね。
(二人の親子みたいなやり取りが微笑ましい)
また、退廃的な世界を独特のタッチで描いた背景には見入ってしまいますし、
UIもサークル状の項目を選択する凝ったデザインで、雰囲気を上手に演出しています。
細部まで凝ったハイクオリティな出来で、
作品への没入感を深めているのはさすがのKey。
ビジュアルノベルメーカー大手の面目躍如と言ったところでしょうか。
歪な機能
《あらすじ》
自我を持ったアンドロイドであるフィリア。
彼女の非機械的で人間のような振る舞いに、ジュードは歪さを覚える。
Ae型アンドロイドと呼称される彼女たちは、どのような意図で作られたのか。
制作者の真意を図りかねるジュードは、「正解を知りたい」という思いに駆られてしまう……。
私たち現代人からすれば自我を持ったアンドロイドが誕生すれば、
世界に激震が走るレベルの大ニュースですが、
終のステラの世界はすでに「シンギュラリティ」が起こっているようなので、
それ自体は驚くことではないみたいです。
ただ、フィリアのような「人間と見紛うアンドロイド」はレアケースなようで。
外見年齢12歳の可愛い女の子(アンドロイド)。
……ふむ。ロリコンの制作者が愛でたいだけだな?
(うーん可愛い)
認識不能な空間
《あらすじ》
朝、起きたジュードは危険を察知して離れようとするもフィリアの姿が見当たらない。 外に出ていたフィリアは何もない空間に手を伸ばそうとしていたが、 そこには光学迷彩に身を包んだシンギュラリティマシンが潜んでいた……。
なかなかヒヤっとさせられましたね。
シンギュラリティマシンが用いる光学迷彩の表出、隠蔽演出は力が入っていて凄かった。
シンギュラリティマシンは、
敵対すると襲い掛かってくる巨大な機械のことで、
この世界の人類にとってはかなり危険な存在らしいです。
フィリアは「あの子と仲良くなれたかも」とか言ってたので、
彼女にはシンギュラリティマシンと意思疎通できたりする能力でもあるんでしょうか。
「Ae型アンドロイドには未知の能力が備わっている」みたいな設定があってもおかしくなさそうなので、
フィリアはこの世界にとっての特異点的な存在なのかもしれません。
そこがウィレム公爵の狙いにも繋がってくるのかなと、勝手に推測してみます。
生き残るための教育
《あらすじ》
森の中で野宿をすることになったジュードとフィリア。
ジュードはフィリアの護身用に拳銃を渡そうとするも、彼女はそれを拒否。
ジュードは恐怖を知らないフィリアを説得するのは無駄だと判断し、
「自分が守ればいい」と自分に言い聞かせる。
嫌な前振りですよね~。
これでなんか危険がやってきて、
ジュードとフィリアの関係性に変化が訪れるみたいな感じでしょうか。
まあいずれにせよ、何かが起こるのは間違いないと思ってます。
フラッシュバック
《あらすじ》
肉を得るために銃で鹿を仕留めようとしたジュードだったが、
鹿を可哀想に思ったフィリアは彼の狩りを妨害してしまう。
怒り心頭のジュードではあったが、なんとか鎮める。
そんな彼の心には、昔のとある女の姿がフラッシュバックしていた……。
ジュードの昔の女?という伏線が置かれました。
今のところはよくわかんないですが、
その女とフィリアの考えが似ているということらしいです。
ジュードの過去の女はフィリアと何か関係があると考えるのが自然ですが、
さすがに情報が少ないので、まだなんとも言えない感じですね。
哺乳類を殺すことに抵抗を示すのに、魚や虫を殺すのは平気という者は一定数いる。
と、ジュードが言っていました。
私見ですが、こういうのは女性に多い気がしますよね。
女性は男性よりも感情的なので、動物が死ぬところを見たくないって思う気持ちが強いんじゃないかと。
最近話題のヴィーガンも、男女比は女性の方が多いみたいです。
海外のヴィーガンは76%が女性だとか。参考リンク(Yahoo知恵袋)。
まあヴィーガンは魚とか卵もアウトみたいなので、今回の話とはまた少し違うかもしれませんけども。
ちなみに私はお肉大好きです。
週一で焼肉食べに行きたい!!!(大声)
廃墟都市
《あらすじ》
森を抜けた先に巨大な都市を見つけたジュードとフィリア。
ルートの都合もあって都市を突っ切ることにした彼らは、
その過程で様々なモノを目にする。
巨大なアーコロジー、穴の開いた城壁、廃墟だらけの城下町、白骨化した死体など、
様々な人の痕跡が残されていた。
夜、フィリアが外を眺めていたところ、一人の子供を発見する。
万が一に備え、ジュードとフィリアは家を移動して夜を明かす。
いやー面白かったですね。
都市を回りながらジュードがフィリアに色々解説するわけですが、
ジュードの運び屋としての経験則や、見識の深さには恐れ入りますね。
突然「この辺りに野獣はいない」と言い切るジュードは、
「辺りに草が生えていないから草食動物がいない。
餌となる草食動物がいないから、肉食動物もいない」
とフィリアに解説します。
これには私も「なるほど……!」と、フィリアと同じように頷いてしまいました。
こういった説得力のある発言をされると、
運び屋として死線をくぐり抜けてきた、主人公の魅力が引き立ちますよね。
読者に納得感を与えつつ、主人公の評価も上げる。
シナリオを書いている田中ロミオ氏の、筆力の高さが伺えるシーンでした。
他にも磔にされた白骨化死体や、巨大な穴が空いた都市の外壁など、
荒廃した都市の様子が伺える描写、背景もお見事。
特に、背景やCGに関しては本当に凄い。
惜しみなくバンバン挿入してくれるので、かなり没入できます。
まだ途中ではありますが、
並のフルプライスのゲームより背景とCGの枚数多いんじゃないかと思いますね。
そのぐらい豊富に出てくるんですよ。
「これ本当に1,980円でいいの?」と、
良い意味で不安になってくるレベルですね。
歓迎された侵入者
《あらすじ》
子供を追って都市に入ってしまったフィリアが住人に襲撃、拉致されてしまう。
ジュードは攻勢を掛けてなんとかフィリアを取り戻すも、多くの人間を射殺してしまう結果となった。
暴力や略奪が横行する世紀末的な世界に、フィリアは悲しみを隠し切れない。
ジュードも、現実を受け止めずに周りの人間を助けようするフィリアにかつてない苛立ちを覚える。
未だ銃を持ちたがらないフィリアに、ジュードは探索中に得たおもちゃの銃を彼女に渡す。
これからは弟子として厳しく扱うことを宣言したジュードだったが、
当のフィリアはどこか嬉しそうに笑っていた。
なかなか重いチャプターでしたね。
生き残った都市の住人がフィリアに襲い掛かってくる、
危惧していたことが実際に起こってしまいます。
ここはまんまと連れ去られているので、
正直ジュードの管理能力が低いと言わざるを得ませんね。
運搬対象のフィリアが拉致され、
あげくに足首を破壊されるという失態を犯しているわけですから、
報酬の減額は免れないでしょう。
まあそんな仕事の話は置いておいて、
ここはジュードとフィリアの心境の変化を描くためのシーンなのかなと。
もしものことがあったときのために、フィリアを庇おうとしたジュード。
おもちゃとはいえ銃を持つことを了承したフィリア。
お互いの距離が少しずつ縮まってきている気がしますね。
生きる廃墟
《あらすじ》
廃墟都市の上層に侵入したジュードとフィリアは、
得られた情報から、この都市が内戦状態であったことを知る。
道中、親子の死体から上層市民のIDを抜き取ったジュードたちだったが、
それを持っているせいで軍用ロボットに襲撃されてしまう。
EMPグレネード弾で対抗し、ロボットを無力化したジュード。
だが、それはアンドロイドであるフィリアをも不調にさせる、諸刃の剣であった。
体調を取り戻したフィリアと共に、ジュードは最上階に上詰める。
そこに広がる開放的な景色を眺めたジュードは、
下層との落差に皮肉を零さずにはいられなかった。
索道を利用し、ジュードとフィリアは次なる目的地「リゾート地」へと向かう……。
この廃墟都市で過去に何があったのかが明かされるチャプターとなっていました。
アーコロジー型の都市が迎えた破滅、
人類の業とも言うべき実態が見えてきて、色々考えさせられますね。
支配者階級が集う上層、貧困層が集う下層という階層構造の都市は、
オーガストの「穢翼のユースティア」を彷彿とさせます。
なんかふと思いましたけど、
終のステラはちょこちょこ問題提起が含まれているような気がしますね。
廃墟都市で言えば「差別問題」であったり、
前のチャプターで言えば、動物を殺す殺さないの「殺生問題」であったり。
終のステラは全年齢対象作品なので、
若い方が本作をプレイして、
色々考えるキッカケになってくれると良いですよね(アラサーのおっさんくさい意見)。
それはともかく、
ジュードとフィリアは廃墟都市を抜けて別の目的地にいきますよ。
終のステラ、一緒に旅をしている気分になれてとても楽しいです。
否定
《あらすじ》
フィリアのことを色々と気にかけるジュードだったが、
彼女から「お父さん!」と冗談交じりに言われ、思わず大声で否定してしまう。
ジュードはフィリアに謝ろうとしたところ、先に彼女が謝罪の言葉を口にする。
雰囲気が戻った二人は、そのまま「親子」の話題にシフト。
「親は子のために死ねる」という人間の言葉に興味を示したフィリアだったが、
ジュードは「それは本能由来のモノだ」という彼らしい合理的な答えを示したのであった。
なんかジュードとフィリアを「親子の関係性」に見せたいような、そんな意図を感じますね。
ここに至るまでにもそれっぽい描写はちらほらありましたので、狙ってやっていると思います。
ジュードは「親が子のために命を捨てるのは本能ゆえだ」と言いましたが、
この先でもし、ジュードがフィリアのために命を捨てる行動を取るのであれば、
それは紛れもないフィリアへの愛の証明になりますよね。
あんまり主人公やヒロインが死ぬことを想像したくはありませんが、
本作の世界観的にどちらも無事に済むとはいかなさそうなのが辛いです。
願わくば二人ともに生きていてほしいですが、一体どうなることやら。
束の間の休息
《あらすじ》
ジュードとフィリアは海岸に寄ることに。 楽しそうに海で遊ぶフィリアを、泳げないジュードは砂浜で静かに見守っていた。
可愛い!
途中海に沈んでしまうフィリアでしたが、普通に戻ってくるの笑いました。
海草塗れのフィリアがお茶目で、可愛かったです。
到着
《あらすじ》
中継地点に到着したジュードとフィリアは、公爵が所有する施設の中へ。
ウィレム公爵との通信で、
シンギュラリティマシンやAe型アンドロイドがAIによって生み出されたことを知る。
また、フィリアの人間になりたいという願いを叶えることも、ウィレム公爵は可能だと告げる。
フィリアは嬉しそうにしていたが、具体的な方法を聞いたジュードは眉根を寄せていた。
中継地点から出立する準備も整ったころ、
シンギュラリティマシンの襲撃を受ける。
急いで脱出用の車輛に乗り込むジュードとフィリア。
案内してくれたAe型アンドロイド、ガブリエルと別れて施設を離れる。
情報量の多いチャプターでした。
色々説明が入りましたが、要点をまとめると、
- 過去、社会はAIが管理する時代になり、人間には理解できない領域に突入
- シンギュラリティマシンとAe型アンドロイドは人類のためにAIが作った(具体的な意図は不明)
- AIにも派閥があって対立しているが、直接本拠地を叩いたりはしない(人類の発展という共通目的のため?)
- フィリアは人間になれる。だが意識の劣化コピーといった方法なので、完璧とは言えない
- フィリアの人間化は、公爵の夢と衝突する(両立不可能)
こんな感じでしょうか。
AI云々の説明はまだいいとしても、
フィリアの人間化のくだりはちょっと理解できなかったですね。
自我を持ったアンドロイドを人間にするって、
私たちの現代科学水準の2歩先をいった話なので、
まあ理解できないのは当たり前なんですけどもw
ジュードとフィリアは最後に何を望むのか。
AIや公爵の狙いとは。この世界は一体どうなるのか。
この辺りに注目していきたいですね。
救難信号
《あらすじ》
ジュードとフィリアは山を移動していたところ、救難信号を捉える。
罠だと言って警戒するジュードだが、フィリアは姿だけでも見たいと告げる。
仕方なく承諾したジュードだったが、案の定それは敵の罠で二人は捕らえられてしまう。
装備を奪われて拘束されてしまったジュードとフィリア。
尋問してくる男たちの言語が理解できないため、意思の疎通は不可能。
ジュードは男たちの暴力に耐えながら、フィリアと共に脱出の計画を練る。
またフィリアが人助けようとして、失敗しちゃいました。
うーん、ちょっと展開の仕方がワンパターンですよね。
フィリアの博愛主義には意味があるのでしょうけども、
それにしても同じ展開なので見飽きてきます。
ジュードも危険だとわかっているのにあっさりやられちゃいますし……。
機械とかデバイス類に頼りすぎているので、白兵戦がめっちゃ弱いですね。
神経毒首元にプスッ! 「あっ、意識が……」はさすがに間抜けすぎませんかとw
もう少し戦闘面でのかっこいいところを見せてほしいなと思ってしまいました。
あとフィリアの服はオリジナルの方が可愛いので、 できれば戻してほしいな(小声)。
囚われの運び屋
《あらすじ》
アンドロイドのデリラの提案に乗り、
脱出を試みるジュードとフィリア。
脱出は成功。装備も取り戻したジュードは男たちの拠点を爆破し、
デリラが希望する南の地に向かおうとする……が。
車に乗りつけた男たちがジュードを追いかけてくる。
石堤にて待ち伏せしたジェードは銃撃戦を開始。
アンドロイドのデリラもライフルで戦闘に参加。獅子奮迅の活躍を見せ善戦する。
しかし男たちの追手がやってくる。
デリラの弾も尽き、ピンチに陥りかけたところ、
ジュードの近くに度々現れたシンギュラリティマシン「クリムゾンアイ」が近くまでやってくる。
これを好機とみなしたジュードは索敵を仕掛けてこちらを認識させ、クリムゾンアイに光学迷彩を解かせる。
姿を現したクリムゾンアイに敵の男たちは発砲する。
敵対行動を仕掛けた男たちにクリムゾンアイは応戦。男たちを消し炭にする。
これで危機は去ったかと思われたが、クリムゾンアイはデリラにも攻撃を仕掛ける。
瀕死の重傷を負ったデリラ。彼女の最後の希望で、デリラの父がいるという南の地に向かう三人。
南の地に到着した三人。
白骨化したデリラの父の傍に、動けない彼女を添えるジュード。
デリラは父の横で、静かに息を引き取ったのであった……。
熱さと涙が押し寄せたチャプターでした。
デリラが非常に良いキャラをしていましたよ……。
ライフルで応戦するの痺れましたし、
ジュードとフィリアをサッと連れ出してくれた功労者。
めちゃめちゃかっこよかったです。
あと、デリラの父とデリラが、確かな絆で結ばれていたことも示してくれましたよね。
「父が抱いていた夢を捨てる=デリラという娘のために死ねる」と解釈でき、
chapter9で示唆した、「血の繋がらない親子の愛」をここで描いてきたのかなと推察します。
終のステラのテーマは「親子の愛情」なんでしょうか。
デリラと父のエピソードは描かれましたが、
ジュードとフィリアのエピソードがどのように描かれるのか。
彼らを親子として捉えてほしいと言う開発のメッセージを節々に感じるので、
これはますます目が離せなくなりましたね。
しかし、なぜクリムゾンアイは彼女に攻撃したんでしょう。
人に敵対する意思を見せたアンドロイドも攻撃対象、ということなのかな?
シンギュラリティマシンはAIが作ったみたいなので、
「人を殺すアンドロイド=人類の発展を妨害する者」と認識され、抹殺されたということなんでしょうか。
けどシンギュラリティマシンは人もバンバンやっちゃってるみたいなので、
なんか微妙に一貫性を感じないんですよね。
「人のために何かをやっているけど、その目的を妨害する者は人であっても抹殺する」
という、意味の分からない代物になっています。
AIの作った人類の理解できないモノの演出としては、
これ以上ないぐらい雄弁に示していますけども。
ちゃんとした説明を早く聞きたいところですよね。
揺れ動く心
《あらすじ》 南の目的地に到着したジュードとフィリア。 船に乗って移動する途中、ウィレム公爵から通信が入る。 様々な問答を繰り広げながら、長旅の終着点へと向かう……。
公爵との問答では、
デリラの父親がデリラのことを酷く扱っていたというまさかの情報が含まれていました。
綺麗な話だったなーと思っていたのに泥を塗られちゃいましたよ!
デリラの記憶がおかしくなって都合のいいように改変していたとか、聞きたくなかったです。
ということは、本作のテーマは親子の愛ではない?
うーん、ここにきて色々わからなくなってきました……。
フィリアも心が育って、ジュードが報酬目的で動いていたことを見抜きますし、
色々と不穏な雰囲気に包まれてきてます。
いよいよクライマックスがやってきそうですね。
対峙
《あらすじ》
公爵の元に向かう途中、フィリアは人間になることを止めると言い出す。
ジュードに嘘を吐かれていたフィリアは、利害の絡まない関係性を彼に求めていたのだ。
そんな彼女に、ジュードは銃を突き付け、厳しい言葉をぶつける。
彼はフィリアを突き放すことで、運び屋と荷物の関係に戻ろうとした。
が、フィリアの目が赤く輝き、逆に彼女がジュードに銃を向ける。
結果として銃は撃たれなかったが、彼女の心が強い悲しみや怒りを抱いたのは明白だった。
そこで突如高射砲に射撃されるジュードたち。
AIに島のシステムを乗っ取られ、攻撃された結果だった。
森を歩いて公爵の元に向かうジュードとフィリアだったが、
フィリアは歩くのを止めてしまう。
明確な拒絶をジュードに向けたフィリア。
だが、ジュードは己の職務を果たすべく、攻撃を仕掛けてくる無人機械に迎撃を続ける。
そしてジュードは自らの過去を語る。
妻と娘がいたこと。娘が出来た時に村を追い出されたこと、村に戻ってみると、妻と娘が亡くなっていたこと……。
己の過去を赤裸々に語ったジュード。
それを聞いたフィリアはようやくジュードのことが知れて嬉しくなり、
公爵の元に向かう決意を固める。
いよいよ間近という距離まで迫ったころ、
二人は、海を渡ってやってきたクリムゾンアイの猛攻を受ける。
応戦するジュードは追い詰められるも、
すんでのところで駆けつけた二機のシンギュラリティマシンに助けられ、事なきを得る。
二人はいよいよ公爵と対面することになる……。
色々詰め込まれていたチャプターでした。
フィリアの眼が赤く輝いたのは驚きました。
人に対して明確な敵意を抱くと、ああなるんでしょうか。
デリラのときもそうでしたもんね。
アンドロイドが人に危害を加えようとする瞬間、ですよね。
ロボット原則を超越し、自らの意志を手にする。
そこを自我が芽生える明確なラインと、クリムゾンアイは認識しているのかもしれません。
これであのときデリラだけが狙われた説明がついた感じですね。
ようやく明かされたジュードの過去は悲しかったですね
奥さんなんで新しい男と同じ土に入っているの……。これはジュードには同情を禁じ得ない。これだから女ってやつは。
というかジュードの両親って死んでたんですね。
公爵がジュードの親父さんなんじゃないかなーとかうっすら思ってたんですけど、違いそう。
でもジュードのことを公爵は「知ってる」とか言ってたのが気になるんですよね。
あと、後半のシンギュラリティマシン同士の大バトルは、
ぶっちゃけわけわかんなかったですねw
なんでフィリアの味方してるの?
シンギュラリティマシンって人の味方だよね?
ジュードに銃を向けたフィリアは敵のはずだよね?
何の説明もないのでわかりまてん!!!
しかもこのシーンめっちゃあっさり終わるので、
機械たちの大乱闘も楽しみきれなかった印象。
どうせやるならもっと尺取って、ド派手にやってほしかったかな。
さて、それではいよいよ公爵の元に、ですね。
謎については全て説明してくれることでしょう……。
頼むよ、レム爺。
人類の選択
《あらすじ》
ようやくウィレム公爵と直接出会ったジュードとフィリア。
公爵の描く計画の全容が明かされる。
AIは現人類を人類と認識していない。
AIは人類を見失ってしまったという事実が語られる。
いわく、人類の遺伝子は少しずつ変質しており、
時代の流れで変化した現代の人類の遺伝子が、
AIが認める初期設定の「人類」の定義から外れてしまったという。
Ae型アンドロイドは、AIが見失ってしまった人類を見つけるために生み出された存在であり、
AIと人類の間に立って現人類の支援をサポートする、橋渡し的な役目を担っていたのだ。
フィリアの核となる部分を公爵が用意した衛星に組み込み、
永久の合鍵として人類へのサポートを可能にする。
ウィレム公爵はそれが狙いであった。
己の仕事を全うし、フィリアを諦めて人類の発展を取るか。
仕事と人類の未来を投げ捨て、フィリアと共に残りの人生を生きるか。
ジュードは究極の二社択一を迫られていた。
フィリアを選ぶということは、仕事を放棄するということ。
それは、今まで生きてきた自分の人生を否定することと同義であった。
そのとき、傍らにしゃがみこんだフィリアの顔を見たジュード。
彼女の顔に人間の顔を見出したジュードは、気付けばウィレム公爵に向かって発砲していた。
フィリアを選んだジュードは命からがらその場から去り、
彼女と一緒に過ごしていく日々に向かって歩んでいく……。
いやー良かったですね。
なぜシンギュラリティマシンがフィリアに味方していたのかとか、
なぜクリムゾンアイが人に危害を加えたのかとか、
色々な疑問が氷解してスッキリしました。
AIが人類を見失って「人類、どこ……?」状態になっているのはぶっちゃけ、
「ドアホ!」
と思ってしまいましたがw
なんかAIの融通の利かなさを人類史レベルで見せつけられた気がしますね。
AIに任せすぎるとこういう世界になっちゃうかもしれないよという、開発のメッセージなのかもしれません。
しかし本作、構造的には、
「フィリアを取るか、世界を取るか」の二者択一を迫る王道展開ではありましたが、
葛藤や争いが深くない、あっさり目のクライマックスでしたね。
それ自体は良いと思うんですが、
個人的にはここに選択肢を用意して、
- 人類発展END(別離END)
- フィリアと共に生きるEND(GOODEND)
みたいな感じで分岐させても良かったんじゃないかなと。
両方のENDをしっかり描くことで選択の重みを感じられそうですしね。
人類の未来はここで二つに分かれる、みたいな。
まあジュードがフィリアを選んでくれたのは素直に嬉しいので、
とりあえず、この先も見ていきたいと思います。
本当の旅
《あらすじ》
ジュードはフィリアと旅を再開し、
運び屋の知識や経験、技術をフィリアに教え込んでいく。
しかし、ジュードの命は長くなかった。
最期の時を察した彼は高台に赴き、美麗な景色を望む。
必至に延命させようとするフィリアだったが、
もうジュードの命は風前の灯火で、なすすべもなかった。
ジュードとフィリアは残り少ない時間を語り合う。
親子の絆で結ばれた二人は、まさしく父親と娘であった。
こと切れたジュードをフィリアは埋葬する。
彼女は彼と共にあった銃と、自らの髪飾りを墓に供える。
そしてフィリアは旅に出る。
彼に恥じない運び屋として、彼女は強く生きていく……。
やられました。あんなの全人類泣きますって……。
ジュードが72日後に死ぬっていうことは一応示されていましたが、
わかっていてもあのラストは堪えます。
最後の最後でフィリアのことを娘と呼ぶジュードと、
ジュードのことをお父さんと呼ぶフィリア。
おそらく、本作をプレイした全ユーザーが望んだやり取りだったと思います。
が、これはあまりにも切ないし悲しい……。
ジュードには死んでほしくなかった。
頑張って生きてほしかった。
親子になったジュードとフィリアの掛け合いをもっと見たかった……。
ジュードの銃が突き立った墓標を写しながら、EDを流す演出もズルすぎる。
どれだけ泣かせれば気が済むんですか……? もう涙残ってないよ。
EDの後はエピローグに入りますが、
成長したフィリアとVer君が、
新たに生まれたAe型アンドロイドを助ける場面で物語は幕を閉じます。
フィリアが立派に成長していて、感無量です。
Ver君、犬の姿に変わっててびっくりしましたw
締めの文言は、タイトルの「終のステラ」と対比させているのかなと。
しばらく余韻に浸れそうです。
素晴らしい作品をありがとうございました……!
主人公“ジュード・グレイ”の感想
終わりに向かう世界で運び屋を務めるお兄さん。
レム爺からの依頼をきっかけに、
アンドロイドのフィリアと旅をすることになる。
フィリアの勝手に動き回る子供のような振る舞いに困ってはいましたが、
なんだかんだ彼女の頼みを断れない辺り、根っこの人の良さがうかがえます。
文句言いながらフィリアの傍にいるのはツンデレって感じがしますねw
銃持つの嫌だってダダをこねるフィリアにおもちゃの銃を持たせたときは、お父さん感半端なかった。
私だったら「持つまでここから動かないからな」と言って我慢比べに入る(子供)。
ジュードの過去が明かされる終盤は、彼に対するイメージががらっと変わりますね。
妻と娘の三人で暮らしていたが、村の人間の嫌がらせでジュードは追放されてしまう。
そして様子を見に帰ってきたとき、村は飢饉で廃村となり、妻は別の男と墓に入っていた……という惨いオチ。
これはさすがに可哀想でした。
フィリアに「お父さん」と呼ばれたときの強い否定は、他でもない娘がいたからなんですよね。
けど、フィリアに看取られて亡くなる最期の場面では、
我が子のように思っていたフィリアを、ついに娘と呼ぶわけです。
この場面はもうエモすぎて、涙が止まりませんでしたね……。
本当の親子のような確かな愛。
良いものを見させていただきました。
けど、やっぱフィリアと一緒に生きてほしかったな……。
総評
終のステラは運び屋のジュードがアンドロイドのフィリアと旅をして、
彼女が背負わされた運命を打ち払い、「家族」になるお話でした。
アンドロイドのフィリアと一緒に世界を旅する物語はシンプルに面白かった。
未知の場所に飛び込んでいくワクワク感。
これはもうイヤというほど男心が刺激されますよ。
新しい場所に着くとしっかり背景が挿入され、
状況に応じて新たなCGがドンドン差し込まれていく演出も誠に素晴らしい。
鹿が現れれば鹿のCGが、
ナマズが獲れればナマズのCGが、
カブトムシを見つければカブトムシのCGが。
「いや、そこまでしなくてええんやで……?」と思わず言ってしまいそうになるほど、
CGや背景が潤沢に用意されています。
これはもう手放しに褒め称えたいですね。
この豪華な演出のおかげで旅を最大限に楽しめました。
スタッフさん、本当にありがとうございます。
そしてシナリオの出来もお見事という他ないですね。
レム爺の狙いはもちろんのこと、
シンギュラリティマシンやAe型アンドロイドが存在する理由など、
先が気になる要素が随所に見受けられ、飽きがこない作りとなっています。
クライマックスでの怒涛の情報開示から、
フィリアと過ごす最期の時まで片時も目を離せませんでしたし、
ラストでしっかり泣かせてくる辺りは「さすがのKey」と脱帽いたしました。
ジュードとフィリアの親子愛が尊すぎます。
「家族」というテーマに強いKeyが、また一つ名作を生み出してしまいましたよ……。
欠点と言うほどのものは正直ありませんが、
シナリオで気になったのは、
「フィリアが勝手に動き回る→トラブルに巻き込まれる」という流れがお決まりで、
ややワンパターンに感じてしまいましたね。
あと、デリラが力尽きるまでの一連の流れはとても良かったんですけど、
レム爺から父親の真相を聞かされた時に後味の悪さを感じたので、ここも少し気になりました。
それと、終のステラは恋愛モノではないので、
恋愛ストーリーが好きな方には合わないかもしれないな、というのがもう一つ思った点です。
ただ、本作は本作が恋愛モノではないことを暗に伝えてくるような描写がありますので、
そこの配慮はきちんとされていたかなと思います。
あと、子供がいる方にはめちゃくちゃ刺さりそうな作品だなとも思いました。
特に娘でしょうか。
フィリアを重ねて見てしまうと、ラストシーンは涙腺崩壊間違いなしですよ……。
……まあ私は子供はいないので、想像になりますけどもw
気になった点はそんな感じで。
終のステラ、めちゃめちゃ面白かったので、
みなさんもぜひプレイしてみてください。
- 世界を旅する物語に惹かれる方
- アンドロイドやAIなどのSF要素が好きな方
- 泣きゲーを求める方
に特におすすめです。
さすがのKeyでしたね。
最高の作品をありがとうございました!
点数
シナリオ 19
(ほとんど文句なしですね。とても良かった)
キャラ 19
(キャラの造形はよく出来ていました。
フィリアは最初と最後でめっきり印象が変わるので、成長ぶりが感じられます)
音楽 18
(主題歌、挿入歌、BGM全て質が高い。
EDのOrtusが流れると泣きます。耐えきれる人はいないでしょう)
システム及び演出 20
(最高でしたね。特に演出は本当に良かった)
全体の完成度 20
(素晴らしい完成度。ほぼ完璧と言えます)
合計96点です(100点満点中。各項目は20点満点)
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