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【エロゲ感想】さくらの雲*スカアレットの恋(きゃべつそふと)

きゃべつそふとさん作『さくらの雲*スカアレットの恋』の感想になります。

『さくらの雲*スカアレットの恋』は2020年にきゃべつそふとから発売されたエロゲです。
公式略称は「さくレット」ですね。

主人公“風見司”が100年前の1920年にタイムスリップしてしまい、
そこで出会った“所長”と共に、過去に飛ばされたミステリーを解き明かす物語です。

※ネタバレ全開ですのでご注意ください。

『さくらの雲*スカアレットの恋』のネタバレ無しレビューはこちらのサイトに掲載しております。

『さくらの雲*スカアレットの恋』の公式サイトはこちら。

目次

シナリオの感想

第一章 邂逅! 未来の使者

さくレットは章立ての構成となっており、章の始めに上記のような画像が挿入されて進んでいきます。
毎回画像を入れると記事が長くなりすぎてしまうので、以降は省略いたしますね。

1章は主人公“風見司”が1920年にタイムスリップして所長と出会い、
彼女と一緒に蓮と遠子の依頼をこなす章ですね。

めっちゃ面白くて普通に良かったです。

まりもを手に入れるために様々なドラマがあって盛り上がりましたし、
すぐお金に目が眩んでしまう所長が最後にはカッコイイところを見せてくる……王道的で熱いですよ!

(所長、めっちゃ良い人です)

この一章ではかなり謎がばら撒かれましたね。

  • タイムスリップの真相
  • 電報に隠された意味
  • アララギや加藤大尉の素性
  • 所長の名前

といった感じで、これらが一体なんなのかが気になります。

この中でも所長の名前は謎という感じで描かれてはいませんでしたが、私は何か隠されていると思っています。
遠子と出会ったときの自己紹介で彼女だけ名前名乗らなかったので、さすがに怪しいなとw
個人的に気になるところですね。

あと、本作は大正時代が舞台なわけですが、この描写が素晴らしいですね。

人物や時代背景などの細かい部分が、非常に丁寧に描かれていました。

  • 「銭」が通貨の基本単位
  • 存命中の宮沢賢治の面影
  • 米騒動の影響
  • 選挙運動

「本当に大正に来てしまったんだな……」と思わせられる説得力がありましたね。

また、私たちの時代では華やかさばかりが強調されがちな大正浪漫ですが、
100年前ならではの問題、課題もしっかり描いていたのが良きです。

軍人が幅を利かせている、女性の権利が確立されていない、警察と金持ちが癒着しているなどですね。

現代ほど社会が整備されていない、大正時代の問題を実感できる作りになっているのは高評価。
本作の時代描写は結構レベルが高いのではないかなと。

後は背景とBGMも素晴らしいですね。
背景は細部まで描き込まれていて思わず眺めてしまいましたし、
BGMも雰囲気が出ていてかなり良かったです。

依頼をこなしていく中で所長と司は様々な場所を巡るわけですが、
上記の演出のおかげで実際に大正時代を観光しているかのような気分になれて最高でした。

(上野公園の背景。めっちゃ綺麗です)

第二章 出没! 時奪いの大怪盗

話としては怪盗を追っていくわけですが、
構造的には「伏線ばら撒きパート」といった印象でした。

かなりの伏線を張ってきました。情報量が凄いです。

  • 怪盗の正体
  • 怪盗がアンティキティラ島の機械を狙う理由
  • 右手の運動(何をしていたか?)
  • 司が怪盗のマスクに恐怖を覚える理由
  • 双竜館、リーメイ、謎の占い師の今後の絡み

とか、色々ありますね。

右手の運動は単なるギャグシーンに思えますが、私は少しネタバレを踏んでしまっていて、
このシーンが重要なシーンであることを把握しちゃっています。

まあ、それが何なのかは全然わかんないんですけどね! 
アメグレのときと同じです。ヒント得ていてもわかりませんよ、こんなの。

普通に考えたらオナニーなんですけど、多分違うんでしょうね。
司がこのときに何をしていたか、なんですけど……うーんわからん。てかナニをしていたんじゃないのかよと

というか「本当にこのシーンに何か隠されてるの……?」と半信半疑な気持ちになりました。
何も知らなかったら「なにオナニーしてんだよw」だけで流してたと思います。

進める過程で気付ければ良いですが、そのまま騙されてみたい気持ちもあり。
知ってしまっている以上は、知った上での楽しみを探していく方向性でプレイしていきます。
「答え」そのものを知らないのが不幸中の幸いですね。

まあそんな私の事情はともかく、この二章はかなり謎が増えたパートでした。

怪盗の正体は多分メリッサだと思うんですけど、それだと普通過ぎて面白みに欠けますよね。
けど他に候補もいないんですよねぇ……。消去法的にメリッサしかいなくないですか?

新キャラもちょこちょこ出てきてますし、色々気になることが多いパートでした。

(怪盗の正体、気になりますね……)

第三章 恐怖! 隠し財宝と臆病メリッサ

不知出邸で起こる幽霊騒動を司が解明するお話。

綺麗にまとめられていたので、良い章だったなと。

司とメリッサが一緒に寝ているのに、周りが何も言わないのは少し違和感ありましたが……w
この時代ではそういうの普通――ってわけでもないですよね。男女同衾はさすがに問題でしょう。

まあ気になったのはそれぐらいですね。

(怯えるメリッサは可愛かったです)

にしても、この章も結構伏線がありましたね。

加藤大尉の狙いとか、別府から手を引けとか、万斎の機織り機とお見合い話とか。

もう大渋滞してきている感じですが、いつ回収されるんでしょうか。
まあ冬茜トム氏なので、綺麗に回収してくれることを期待していますけどね!

第四章 崩壊! 帝都の桜は豪華に燃ゆ

起こるはずがない大震災が起きて、それに乗じて加藤大尉が暗躍しようとする話。

加藤大尉が震災が起きることを予見していそうな口ぶりだったり、
遠子が怪盗の命を奪っていたり、なかなか驚かされましたね。

(怪盗……なぜ遠子に殺されたんだろう)

あと、さくレットは「世界が無数に存在する」世界観のようで、
パラレルワールドの存在がこの章で確定しました。

謎の電報は別の世界の司からもたらされたもの、ということでしたね。

で、司は自分が元いた未来に戻るために歴史の歪みを修正しなければならない……と。
当初からアララギが言っていたことではありましたが、ここまで進めることで実感を得た感じ。

タイトル画面が遠子に変わったので、この先は遠子√が展開されそうですね。

とりあえず先が気になるのでどんどん進めたいと思います!

第五章 戦慄! 白銀の指輪と呪いのヴァイオリン

序盤から姿を現していた怪盗の正体が明かされ、
怪盗騒動に一つの決着が付くお話でした。

遠子とリーメイの間には遠子の母親である浅見蘭花の死を巡る因縁ゆえに歪な関係性が構築されていましたが、
司が怪盗の正体に辿り着いたことで二人の間にあったわだかまりが解け、より良い関係に昇華されました。

遠子は過去の呪縛から解放され、リーメイも浅見蘭花に対して一つの踏ん切りをつけた。

綺麗にまとまっていて良かったですね。

私は「遠子は所長に怪盗を追ってほしくなさそうな振る舞いをしていたこと」や「怪盗関連の話題になると明らかに不自然な挙動をしていたこと」が読み取れたので、
遠子が裏で糸を引いているのは間違いないと思っていました。

実際それは合っていたのですが、肝心の怪盗の正体がリーメイだったのは予想外でしたね。

私は怪盗の正体はメリッサだと思っていたので……w
これはしてやられました。

博物館襲撃のときにメリッサがその場にいなかったので「絶対にメリッサでしょ」と思ったんですが……これは「思わされた」というべきかもしれませんね。
完全にしてやられましたよ、ほんとに。

ともあれ読後感は非常に良かったので、完成度の高い章だったかなと。

私がこの章で特に良いなと感じたのは、遠子がリーメイに対して自らの思いを告げるシーンですね。

遠子は母の死に関する真実が見えていなかった。見ようとしていなかった彼女は己を恥じていました。

遠子は母を死に追いやってしまったリーメイを許してはいませんが、その旨を伝えた上でこう告げます。
「今のあなたが、母さまの助けた命だというのなら。私にそれを裁く権利はございませんもの」と。

母の死に際に何が起きていたかを知ろうとしなかった。
そんな自分を反省してリーメイとの“賭け”を失効させた遠子はカッコよかったですよね。

自分のことを醜い女と言っていましたが、全然そんなことはないと言いたいです。
きちんと反省して己の言動を顧みることができるのは本当に立派だと思います。
彼女の高潔な精神が垣間見えた、非常に良いシーンでしたね。

あともう一つ良かったのは、司が遠子に指輪を贈るあのシーンです。

司くん、それはさすがにカッコつけすぎでは?w

ギャラリーAみたいな黄色い声を上げそうになりましたよ。
女の子は惚れた男にこんなのされたらもう一撃でしょうね。ったく、主人公みたいなことしやがって……(主人公だけど)

そんな感じで良いシーンもあって全体的に良いデキではありましたが、細かい部分で気になるところもありました。

一番はやはり浅見蘭花が古時計の下敷きになって死んだと説明されるシーンですね。

リーメイがあまりにも間抜けすぎて「これ、ギャグかな?」とぶっちゃけ笑ってしまいましたよw
「ヘマをやった」と言ったので「あー無理やり持ち去ろうと騒々しくして、不知出の主人に気付かれたりするやつかな……?」と思ってたら、倒れてきた時計に潰されそうになるという……。

いや、これはちょっとないですよ。
「リーメイのしょうもないやらかしのせいで浅見蘭花の死が早まった」としか受け取れないといいますか。

浅見蘭花の死に直面するシリアスなシーンなのに、ギャグにしか見えなかったのは痛い。
ここは大いに改善の余地ありと言ったところですね。

五章は解決編といえる内容でしたので、実質的には遠子ルートといって差し支えないかも?
各ヒロインに順にスポットを当てていきそうなので、攻略順はほぼ固定といった感じでしょうか。

第六章 密命! 真贋見極むネフェルティティの左目

遠子とひたすらイチャイチャしながら伏線をちょろっと撒いてくる章。
遠子とラブラブセックス祭りでしたね!

遠子と恋人になった世界線を描いているので、本筋の進展は全くなかったです。
加藤大尉の伏線が配置されたくらいでしょうか。

遠子、めっちゃエロ可愛い。

男を知らない育ちの良いご令嬢を自分好みに染めていくのは最高でしたね。

第七章 てんてこまい? はぐれ狼とバームクーヘンと南極磁石の一週間

3つの依頼が同時に発生して、チェリィ探偵事務所がかつてないほど忙しくなるお話。

「3つの依頼は同時進行して最後に収束する構成かな?」と思っていたんですが、
どうやら順番通りに進んでいくようです。

3つの依頼を受けて、万斎のところに赴いたところで八章に突入します。
この七章はさわりというか、全体の導入って感じでしたね。

第八章 吟詠 あさきゆめみし戀の唄

3つのうちの2つを解決して、司と蓮が恋人同士になるお話。

ランドルフの依頼は途中で「まさかニホンオオカミ……?」と頭を掠めたんですが、本当にそうだとは……w

ランドルフが老衰で早々に亡くなってしまうのは悲しいですが、
過ごす時間が増えれば別れも辛くなるのでこれはこれでって感じもします。

博物館にはく製として保存するのはランドルフの命を無駄にせず、歴史的な史料にもなる良い方法だと思いましたが、
私たちが知る歴史では1920年にニホンオオカミの生存は確認できていないので、これも「歴史の歪み」となってしまうようで。

より良い方向に歴史を修正しても、司は元いた未来に帰れなくなってしまう。世知辛いですね。

バームクーヘンの依頼はみんなで案を出した後、万斎に専用の機械を作ってもらうことになります。
それと並行して、司と蓮が仲を深めていく感じでしたね。

ここは普通に読んでいて面白かったです。
バームクーヘン制作はみんなで協力して作っている感があって、賑やかで楽しかったです。

(機械は完全に万斎頼みでしたが……w)

第九章 夢の動力? 大正永久機関奇譚

成金の成田権造ことナリゴンの「単一磁石(モノポール)を見つけろ」という無理難題を解決するお話。

なんですが――

なんや、この美少女は。

洋服姿の蓮の破壊力がすさまじくて、依頼の件なんて頭から吹っ飛びました。
これは可愛すぎますって。いつも和装なので、ギャップにやられちゃいましたね。

司たちは単一磁石や永久機関については発見不可能ということでナリゴンの動機にアプローチしていく方向に切り替えましたが、その先で加藤大尉とナリゴンの関係及び加藤大尉の情報が明かされます。

なかなか面白かったですね。
加藤大尉、本当何者なんだろう。実は偉人の誰かだったり……?

発電所や金集めの件は伏線ですが、震災復興に向けての準備って感じなんですかね。
帝都再建のひとつとして震災復興は外せないので、その手を先に打っている……みたいな。

今思えば後藤新平が殺されそうになったのは、加藤大尉が差し向けたからなんでしょうね。
しかしそう考えると、後の後藤新平の活躍を加藤大尉は把握していることになりますが。

明らかに未来を知っている感じなんですよね。
加藤大尉も司と同じく自分からの電報を見て動いているんでしょうか。

加藤大尉はアララギが見えていたので何か特殊な事情があるんだと思いますが……。
アララギは「帝都には異能持ちが一人いる」と言ってましたけど、私はおそらく加藤大尉ではないんじゃないかなーと考えています。

すごいメタ的な意見であれですけど、「加藤大尉異能持ち説」は意外性がないので……w
所長が異能持ちだと面白いですけどね。どんな異能なのかは全然わからないし予想もつきませんが。

いずれにせよ、その辺りはかなり気になるところです。

以上で蓮編は終了ですね。

総括(七章・八章・九章)

3つの依頼をこなしながら蓮と仲を深めていくお話でした。

依頼を順番に解決していく綺麗な流れは読んでいて気持ち良かったです。

ランドロフくんの最期には涙を誘われましたし、
バームクーヘン作りでは「案出し、調理器具作成、調理、味見」をみんなで協力して行っていて、賑やかで楽しかったですね。

最後には先に続く伏線が配置されていて引きも十分。
加藤大尉が何者なのか気になって仕方ないです。

「3つの依頼の解決+蓮との恋愛」とかなり詰め込まれた章でしたが、
しっかりまとめきっていたのは素晴らしいですね。冬茜トム先生、さすがの手腕でした。

司が陸軍省内部に普通に入り込んでいけるのは違和感MAXでそこだけ気になりましたが、
全体としては悪くないデキだったと思います。むしろしっかり楽しませてくれたので、満足度は高いですね。

ヒロインの蓮は大正時代に生きる普通の女の子ですが、
わりと強情であったり、司を性の快楽で支配しようとしたりするなど強かな一面も見られて面白かったです。

あと、洋服に着替えてくれるシーンは最高でした。
これぞギャップ萌え。めちゃめちゃ可愛かったです。

「この世でもあの世でも、ずっと同じ蓮華の上で」

自由恋愛に憧れを持っている蓮らしい、ロマンチックなやり取りが印象に残る√でした。

第十章 急行! オーバー・ザ・ミステリートレイン

閉鎖された列車内で数々の事件が起こり、所長と司が解決に尽力するお話。

この十章はもうシンプルに最高でしたね。

謎が謎を呼ぶ数々の事件、遠子とメリッサの不穏なやり取り、
千里眼を持つ少女の情報、謎のヒントカード、真犯人の動機、
これらの様々な要素が複雑に絡み合った果てに描かれる、衝撃の結末。

綺麗に完結した話は一冊の推理小説を読み終えた時のような充足感を得られました。
かなり読み応えのあるシナリオだったと思います。

ちなみにですが、カヤノの正体はネタ晴らしまでに気付いてしまいました。
まあこれ、だって……ね?

エッチCGの右肩に三日月のアザありましたから!w

初見では気付きませんでしたが、
千里眼の少女の話が出てきた段階で「まさかね……?」と思ってCGを見返したら、そのまさかでした。

まあ種明かしのシーンがすごくあっさりですし、CGもわざと見えるように描いているので、
ある程度プレイヤーに気付かせる想定だったのかもしれませんけども。

いずれにせよ、意外で面白かったですね。

あと、シナリオが良かったのはもちろんですが、この十章はキャラクター描写も秀逸だと感じました。

列車内に本作の主要キャラが軒並み集められるわけですが、
中森氏と真霧氏、ちよと成田氏などのサブキャラ同士の意外な接点を見られたのが良かったですね。

司の知らない人間関係がしっかり存在しており、
この時代の人たちの息遣いというか、人と人との関わりを想像できて大変良かったです。

また、殺人事件に発展して疑心暗鬼に陥る中森氏、元気だったのにすっかり気が滅入ってしまったマイなど、
追い詰められた人の心理状態や言動なども巧みに描いており、細かな部分まで妥協なく表現しているなと。

練られたシナリオ、秀逸なキャラ描写、総じてかなり完成度の高い章だったと思います。

私がこの十章で特に良いなと思ったのはラストシーンですね。

ラスト、メリッサが己の秘密を打ち明けるシーンなんですけど――

演出がすごい。こんなの全人類興奮する……!

両目を光らせたメリッサかっこよすぎますし、
挿入歌の桜爛ロマンシアInstver.が流れるのもズルすぎますし、
この先への期待感をMAXまで引き上げるこの締め方は、正直言って反則。

最後の最後でこんなに盛り上げてくるのはヤバすぎますって。完全にやられました。

ちなみにメリッサの千里眼に関してですが、
私は「メリッサが真の異能持ちである」というのは勘付いていて、
「それを打ち明けて、メリッサ編は幕を閉じるんだろうな」と予想していました。

扉を見つめる描写、二段ベッドの上の司の足元を眺める描写がありましたので、
「もしかしたら本物かもしれないな」と考えていたんですね。

いたんですが、その上であの「次に繋げる描写、演出」で畳み掛けてくるとは思わなかったわけですよ。
これはもう完全にやられましたね。完全にこちらの予想を超えられたので1本取られました。

このラストは本当名シーンすぎて、それこそ100年先まで語り継ぎたいレベルですね。
「エロゲはこれだからやめられない」と、また思わされてしまいましたよ。

メリッサ編で気になったところはほとんどありませんが、
強いて挙げるとすれば閉鎖状況(クローズドサークル)の作り方でしょうか。

殺人事件が起こっているにも関わらず、
「線路を新たに作ってそこを走らせているから、途中下車できない」といって閉じ込めるのは……ちょっと無理があると思いました。

私があそこに乗車していてそんなこと言われたら多分キレますねw
殺されるかもしれないのに暢気に列車乗ってる場合じゃないですよ。

まあ気になったのはそんな些細なことぐらいでした。

いやー十章はかなり面白かったですね。
今までの振り返りでは間違いなく一番面白かったです。
十章単体でいえば100点付けられるぐらい、素晴らしいデキでした。

メリッサがヒロインである理由も納得できましたし、本当良い章だったと思います。

さて、お次はいよいよオーラスの所長編ですね。
物語も色々大詰めということで、どんなラストが待ち受けているのか。楽しみですね。

外伝 桜花転輪

アララギ視点で今までの流れを振り返るパート。

特に新しい情報はなかった気がするので次にいきましょう。

第十一章 満開 帝都の桜は豪華に萌ゆ

所長視点でこれまでの流れを振り返るパート。

亡き師との会話中に所長の名前がしれっと出てきて驚きました。

それにしても、なんで名前をここまで隠してきたんでしょうね……?
何か理由があるんだとは思いますが、いまいちわからないです。

第十二章 開眼! 未来を視る才女

5つの依頼が舞い込んだチェリィ探偵事務所はメリッサに協力してもらい、依頼人の歪みを視てもらう。
依頼をこなすことで歪みが減少することに気付いた所長たちは、依頼を解決して歴史の歪みを修正していく。

少しずつ真相に近づいている気がしてワクワクする章でした。

「加藤大尉未来人説」が浮上し、彼が故意に歪みを生み出しているのではないかと一行は推測します。

いやー歪みを視覚で捉えるメリッサの能力がチートすぎるなとw
彼女だけとはいえ歪みを可視化できるというか、直接見れるのはズルいですよ。

(彼女の千里眼はかなり強力です)

そして歪みを修正していく中で、司と柳楽刑事の謎の行動がここでようやく取り上げられます。

不審に思った所長は司の行動から彼の考えを推理し、一つの答えに辿り着く。
カフェーを飛び出した彼女は事務所へ向かって駆け出していきます。

この先でいよいよ本作のトリックが明かされるといったところでしょうか。
少し止めて自分も考えてみたんですが、やはり解答には辿り着けず。

「電気代が増えている」「バチバチする電気の描写」「司の“限界が近い”」という描写があったので、
「司の手ってバッテリー駆動の義手なのかな?」とか考えたんですけど、
「だからなんなんだろう……?」と納得できる答えにいまいち結びつかなくて。

結構考えたんですけど、わからなかったですね。
解答を教えてもらうといたしましょうか。

※この先、強いネタバレ要素があります。 未プレイの方の閲覧は自己責任でお願いします。

第十三章 桜の雲 スカアレットの恋

司がひた隠しにしてきた秘密が明かされる章でした。

いやー……見事に騙されました!w

こんなのわかんないですって。まさか違う未来の人間だったとは。
司くんの義手は合ってましたけど、そういうことだったのかと瞠目しました。

最初の硬貨が伏線になっていたのも驚きでしたね。
元号が「昭和」ときて「平永」「桜雲」と続いたとき「……え?」って声出て、一瞬脳がバグりましたw

確かに「令和」から来たとは言ってないもんなぁ!
今回も前提を引っくり返してきましたか。司も私たちと同じ「令和の人間」という思い込みを突いてきた形ですね。
いやー、見事に騙されました……。

というかこのシーンは衝撃のトリックに目がいきがちですけど、
所長と司のやり取りも泣けて良いんですよね。

左腕のことや未来に帰りたくないという本音がバレてしまった司は自らの心中をぶちまけますが、
それを全部受け止めてくれる所長がほんとに優しくて……。

所長の普段の推理はてんでダメですけど、人に対する観察眼は確かにあり。
司の心に巣食う闇を暴き、彼の悩みに気付いたこの時の所長は紛れもなく名探偵でしたよ。

(名シーンですよこれは……)

司に優しく寄り添う所長の姿には胸を打たれ、泣きそうになりました。

元いた未来に帰るのが嫌なら、平和な未来にしてしまえばいい。

所長がそう告げた後、万葉集の引用「令和」に光るスライドが入るのもニクイ演出すぎて……もう感情がぐちゃぐちゃになりました。

なんだこの神ゲー。

プレイヤーを驚かせつつ所長と司を本当の意味で近づける。
最高の盛り上がりを見せたシーンでしたね。やってくれますなあ、冬茜トム先生は!

戦争のない穏やかな日常を過ごせる令和の日本が、こんなにかけがえのないものだったなんて。
何気なく過ごしている日常のありがたみを実感させられた気がしました。

そういったメッセージ性も感じられるシーンになっていたかと思います。

第十四章 発明! 奇想天外・タイムマシン!

今までの謎が全て明かされ、加藤大尉と決着を付ける総決算的な章でした。

万斎がタイムマシンの開発者だったり、加藤大尉が司よりも100年先の未来から来た存在だったり、
雪葉が加藤大尉に命を救われていた事実があったり、アララギはタイムマシンに宿った仮想人格であったりと、
色々明かされていく怒涛の展開でした。

まあとはいえ、結構想像の範囲内だった感じでしたね。
そこまで驚かされる情報はなかった気がします。

それにしてもこの場面かなり説明が入るので、できれば図解してほしかったですね。
年表とか出してわかりやすく説明してくれたら、もっと理解しやすくなったんじゃないかと。

我々はどうしても令和時空で考えてしまいがちなので、
桜雲時空と本編時空を図で表したりして、視覚的にもわかりやすくしてほしかったです。
ここはやや改善の余地ありかもですね。

そして加藤大尉は語り終えた後、司を未来へ飛ばそうと選択を迫りますが、
一つの手紙の登場で形勢が逆転。

ここで流れが変わり、最終章へ続きます。

(この所長、かっこいいぞ)

最終章 決戰! 雲をも凌ぐ翼となりて

加藤大尉が伏倉万斎の子孫“伏倉弁慶”であることが明かされ、
彼がタイムマシンを万斎に与えたことで皮肉にも自身の存在が消滅してしまう流れになります。

加藤大尉、自分が生まれる可能性自分で消してて草。手の込んだ自殺www

というかこの下手に先祖とか親に干渉して自分の存在が危うくなるの、
かの名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のアレと同じで笑いましたよ。オマージュかもしれませんね、これは。

それにしてもこの加藤大尉のラストはあれですね、人によっては物足りなく感じる方もいそうだなと思いました。
「ラスボスとの決着がこれは呆気ないのでは?」と思う方もいるかなと。

まあでも私はアリかなと思ったので、個人的には文句はないですけどね。

テクノロジーや金を操って理想の未来を掴もうとしていた加藤大尉ですが、
一番重要な「人の心」が掴めなかった故の末路だと思うと、わりと納得できる最期というか。

「人生を無視したロジックは、人の心には響かない」
所長のこの言葉が印象に残る名シーンでしたね。

それと、このシーンは細かい部分にも気を配っていたのが良きでした。

万斎が手紙を読んで「小夜子との結婚が無い」と思ったあの瞬間、
加藤大尉が消滅の危機に陥るのはこの世界の仕組みというか、量子論の「重ね合わせの解釈」を描いていて面白かったなと。

また、加藤大尉の拠点に乗り込む上での準備も手抜かりがありません。

景虎が判子を作り、蓮が加藤の筆跡をマネて偽造文書を作る。
マイとちよが地上で人を遠ざけ、上の安全を確保する。
リーメイとみんなで盗まれた骨董品を奪取する。

全員で加藤大尉に立ち向かっている感じがして、熱かったですね。

無駄なキャラクターが存在せず、誰かが何かしらの役割を担い、それが作中でしっかり活かされている。
冬茜トム氏の筆力の高さを感じました。これは素晴らしい仕事ですよ。

一方でひとつ気になったのは、加藤大尉の溢れ出る歪みの描写でしょうか。

「どんどん大きくなっていく」と説明されているにもかかわらず、CGに全く反映されないのは残念だったかなと。
ここを差分でしっかり表現できていれば臨場感が出てもっと良くなっていたと思います。ここは惜しかったですね。

そんな感じでほんの少し惜しい点もありましたが、クライマックスとしては申し分ない盛り上がりだったと思います。

(アララギちゃんも嬉しそうですね)

その後はみんなに別れの挨拶を済ませて、いよいよ司が未来に帰ります。

所長と司が今まであったことを振り返るわけですが――

いや、二人の帽子を交換してるの最高に尊いんですけど!

全く、最後に見せつけてくれますよねーほんとに。

視界がボヤけてちゃんと見えないのが残念でなりませんよ……。

結句 令月風和

未来へ帰ってきた司は左手に実感を得たことで世界の変化を感じ取り、
その場にやってきたレベッカ・クルーガーの子孫、マリィ・クルーガーから手紙を渡されます。

所長からの最後の手紙は反則ですって。どんだけ泣かせれば済むんですか、本当に。
ちょっと淡白な文章も所長味を感じて良いですね。
本人も言ってましたけど、色々書きすぎたあげくに何回も書き直してこうなったんだろうなぁ。

無事に平和な「令和」の世界にやってこれた司は、二代目チェリィ探偵事務所を開くことになるみたいですね(ED情報)。
マリィちゃんもめっちゃ可愛いので、二代目チェリィ探偵事務所の話もぜひお願いします。

(可愛すぎるな??)

ちなみに本作の終盤で描かれたメッセージ、伝えたかったことについては総評で述べますので、
もう少しだけお付き合いくださいませ。

主人公“風見司”の感想

100年前にタイムスリップして所長に拾われ、チェリィ探偵事務所の依頼を解決していく名探偵。

推理力は所長を遥かに凌駕しており、アララギから名探偵と言われるのも頷ける頭脳明晰ぶり。

ですが、司はある秘密をひた隠しにしており、これが物語終盤に繋がっていく重要な情報となっていましたね。

本作のトリックの真相部分で、これにはかなり驚かされました。
相変わらずの前提をひっくり返すトリックはさすがといったところ。よくこんなにネタを思い付くなとw

トリックが明かされるシーンは司の心の深奥に辿り着くシーンであり、
彼の心の闇が暴かれ、本音が出てくる重要なシーンとなっていました。

良い仕事ぶりで善人な印象を与えてきた司でしたが、
ここでようやく人間味を感じられた気がしましたね。

左腕がなくなり、化学兵器で家族を殺された悲惨な未来。

未来がそんな状況では過去にしがみつこうとするのも当然であり、彼には同情を禁じ得なかったです……。

総評

『さくらの雲*スカアレットの恋』は2020年から1920年へタイムスリップした風見司が、
チェリィ探偵事務所の所長に拾われ、自身が過去へ飛んだミステリーに挑むお話でした。

さくレットは100年前の大正時代を情感豊かに描いていたのが良かったですね。

現代では存在しない凌雲閣、当時の流行語、欧化が進みつつも自然豊かな浅草の街並み、
東京駅やカフェーのモダンな背景など、大正時代の描写はかなり頑張っていたと思います。

「大正ってこんな感じなのか……!」とゲームであることを忘れて背景を眺めてしまうほどでした。
開発陣の方々は相当勉強したのではないでしょうか。ここは大きく評価できる点ですね。

また、スマホを見て驚愕する所長など、
過去にないものに対する反応が丁寧に描写されていたのも良かったです。

所長や遠子が未来のことを知りたがる様子も見ていて微笑ましく、
タイムスリップものとしてユーザーが求めているもの、見たいシーンがきちんと描かれていたのは非常に高評価です。

そして肝心のシナリオですが、正直「つまらない部分がない」と言えるぐらい全部が面白かったですね。

特に後半のメリッサ編、所長編は本当に素晴らしかったです。
メリッサ編は単体としての完成度が凄まじいほど高く、ラストの演出も神がかっていてもう本当に最高でした。

所長編は先の演出とラストヒロインということでハードルが上がっていましたが、
期待を下回るものは出てこず、むしろ期待以上のデキで大満足でした。

特に所長の見せ場がきちんと用意されていたのは大きかったです。

所長は事件や依頼の推理は司に頼っていたので、彼女自身の活躍というものをあまり感じられなかったわけですが、
ここにきて「誰も気付かない司の悩みに唯一気付く」という最大の活躍を見せました。

司の悩みに寄り添い、彼に最も近い存在となる。
「司の隣にいるのは所長以外ありえない」と思わせられる、確かな説得力がありました。
これは本当に良かったですね。

最後も綺麗に閉じられているので、読後感も良いです。

令和に生きる私たちの現実とリンクした終盤の展開は熱かったですし、
平和の尊さを説くメッセージも考えさせられました。

物語を通してプレイヤーにエンタメを提供する、ノベルゲームとしての完成度は随一ではないかと。

終盤で描かれた本作のメッセージ性について。

遠子が最後に「安寧に過ごせる時代を作る」と司に言っていましたが、
これは私たちも意識しなければならないことですよね。

儚い目で空を見上げていた加藤大尉。
彼がいた2100年の時代も、司のいた時代と同じく平和とは程遠い日本だったのかもしれない。

自分の望む未来のために過去を修正する。
そんなことを考えて実行する加藤大尉のような人が、この先の未来で現れないようにしなければならない。

「今を生きる私たちは、より良い未来を作るために努力しなければならない」

そんなメッセージが本作には込められているのかもしれないと感じましたね。

一方で、本作の気になる点は3つありまして。

1つ目は「システム面の貧弱さ」ですね。

セーブ枠があまりにも少なすぎます。
メリッサルートぐらいで全部埋まって1ページ目から上書きして、最終的に5ページ目までいったので全く足りてないです。
全部で80枠は本当に少ないので、これは気になる欠点でした。

まあこれはきゃべつそふとさんの落ち度というよりも、BURIKOエンジンの欠陥なんですけども。
次のジュエハでもまだBURIKOだったので、エンジンは早くアルテミスとかに変えた方がいいと思います。

2つ目は「恋愛関係に至るまでの過程の弱さ」ですね。

これはアメグレやジュエハでも言えたことなんですが、司がヒロインを好きになる理由が弱いです。
所長に関しては説得力があるので除くとして、他のヒロインがまあ説得力に欠けますよね。

司は大正時代で余生を過ごす決心をするぐらいヒロインのことを好きになるわけですが、
「そこまで好きになる要素あったかな……?」と、私と司とで温度差を感じてしまったというか。

あと、ヒロインはやっぱり司の秘密に気付いてあげないとダメですよね。

物語のクライマックスに繋がる要素なので、その場面は所長ルートにしか存在しませんでしたが、
司とヒロインの関係に説得力を持たせるためには、それは必須だと思います。

まあこれは本作の構造上どうしようもないところかもですが、
それを明かさないなら何か他の納得できる理由を用意してほしかったと思ってしまいましたね。

3つ目は「アララギルートの未実装」ですね。

私は声を大にして言いたいんですよ。

ヒロインじゃないのにパンツ見せてくるの止めてくれません???

下半身の欲望を抑えきれなくなるので、
「平行世界の観測者」のパンツを観測させるのはやめていただきたいですね。
プレイヤーの股間に血を「送る」のよしてください。

さくレットの総評はそんな感じで。

いやー本当に面白かったです。

プレイしていて「ああ、終わってしまう……」と惜しむ気持ちが芽生えたのは久しぶりでしたね。
きゃべつそふとさん、本当にありがとうございます。良いゲーム体験をさせていただきました。

さくレットは数あるエロゲの中でも最高クラスの完成度であり、高評価を得ているのも頷ける納得の出来栄えでした。
「プレイして良かった」と心から思えましたね。
シナリオゲーがお好きな方には絶対にプレイしてほしい作品です。

100年の恋が萌え咲かる、桜舞うレトロミステリィ。

存分に楽しませていただきました!

点数

シナリオ 20
(最高でしたね。真相が気になるミステリー、楽しいエンタメ、考えさせられるメッセージ。
隙がありません。純粋に「読んでいて楽しい」のが何よりも素晴らしい)

キャラ 20
(魅力、個性、役割の全てが揃っている良いキャラクターたち)

音楽 20
(雰囲気があってかなり良いです。特にOPの「桜爛ロマンシア」が強すぎますね)

システム及び演出 17
(演出は良かったですが、システムが足を引っ張っていた印象。
最大解像度がHDまでなのは惜しい。もったいないです)

全体の完成度 18
(所長以外の恋愛描写がやや引っ掛かりを感じました)

合計95点です(100点満点中。各項目は20点満点)

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おまけ

マスターアップイラスト

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