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【エロゲ感想】サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-(枕)

枕さん作「サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-」の感想になります。

「サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-」は、2015年に枕から発売されたエロゲです。
略称はサク詩ですね。

芸術家の父を亡くした主人公“草薙直哉”が、
美術部に集まった女の子たちと関わる中で、様々なドラマが生まれる物語です。

※ネタバレ全開ですのでご注意ください。

「サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-」のネタバレ無しレビューはこちらのサイトに掲載しております。

サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-の公式サイトはこちら。

目次

シナリオの感想

共通パート

あらすじ

芸術家の父「草薙健一郎」を亡くした主人公“草薙直哉”は、 幼馴染の夏目藍、夏目圭らに「一緒に住まないか」と提案される。 圭が直哉の家の床を水没させてしまったので、 直哉は夏目家の世話になることに。

学園が始まり教室に入ると、転校生の御桜稟がやってくる。彼女は直哉の幼馴染であり、直哉が記憶の彼方に追いやった少女であった。

放課後、美術部募集のチラシを配る羽目になった直哉の前に稟が現れる――(OPへ)

登校途中、直哉は後輩の“氷川里奈”と出会う。 里奈は直哉の「精神的妹」を名乗る、直哉の幼馴染の女の子(2人目)であった。

放課後、真琴の指示で直哉と圭はタキシードとメイドにコスプレして美術部のチラシ配りを行い、 美術部に興味を持つ新入生“川内野優美”と知り合う。 後日、昼休みに美術部部室に優美と里奈がやってくる。 部長の真琴に認められて美術部員となった優美の紹介で、里奈も美術部に入部することに。

部費を確保するために、やはり新入部員を集めたいと告げる真琴。 真琴、稟、圭、直哉がデッサンのモデルを務めるデッサン会を開催することに。 だが問題が発生してデッサン会は中止。 問題を起こしたのは留学生のトーマスだったが、 彼のデッサンの腕や熱意を評価した真琴は、美術部の入部を認める。

夏休みに入った弓張学園。 美術部は稟の実家がある島根への合宿を計画する。 その日の帰りに、稟と真琴が夏目家に訪れる。 仲良く料理する直哉と稟。 二人を見守る圭と真琴は、意味深な会話をしているが……。 ある日の朝、直哉は藍にチャーハンを振る舞ってもらう。 藍は「直哉がまた絵を描いたら、健一郎が夏目の家に住んでいたころの話をする」と告げてくるのだった……。

芸術家の父“草薙健一郎”を亡くした主人公“草薙直哉”が、
昔馴染みの夏目家にお世話になる導入から始まり、
学園の美術部に女の子がいっぱい集まって直哉も巻き込まれて云々~みたいな話ですね。

うーん共通を終えた感想としましては、「正直面白くはない」という感じです。

全体を通して伏線を貼ることに集中しすぎているきらいがあり、
読者を楽しませようという意識が感じられないといいますか。

明石が暴走するシーンとかはっきり言って意味不明なので、読んでいて苦痛でしたね。

明石をイジめるどうでもいい描写にかなり長く尺を割き、かつSD絵も用意しておきながら、
その後の喫茶店でのみんなのバイトシーンが速攻で終了するのもダメでした。

普通に考えてサービスシーンは長くしないとダメでしょう……。
稟のメイド姿が立ち絵のみなのはさすがに寂しい。
あ、里奈と優美のメイド姿が見られないのはキレていいよね。服装差分がないんですよね知ってますよ。

まあやってることが意味不明でもギャグが笑えたらまだいいんですが、
残念ながらギャグもほとんど笑えないので、真顔でひたすらクリックする羽目になるという。

主人公のツッコミがつまらないので、とにかく会話が盛り上がらないですね。
ボケに対するツッコミの重要性を再認識したところです。

あと、ちらほらテキストの日本語がおかしいのも気になる。

芸術を掘り下げ、時には文学の引用をするようなお堅い雰囲気の作品なのに、
テキストにミスが目立つのはかなりマイナスです。

以下は具体例と修正案。

(圭のツインテメイド姿を見た真琴が)この被虐心をそそる顔!

→「嗜虐心」の間違い。

こんにちわ

→「こんにちは」の間違い。

御桜先輩が結構かなり好きになりました。

→重複表現。「結構」か「かなり」のどちらかで良い。

デッサン会のチラシ、急遽昨晩作ったんで配ることはまだ出来てないのだけど

→くどい。「昨晩急いで作ったからまだ配れてないのだけど」で十分。

(直哉の方向音痴を知った稟が)なんだか意外な一面があるんだ……。

→「なんだか意外だね」もしくは「意外な一面があるんだ」が自然。

なぜ作品に打ち込む創作活動を集団行動で行うのかわかりません……。

→重複表現。「集団で行う」でOK。

こんな感じで、色々見受けられます。

校正・推敲不足なのか、ライターの文章力が足りていないのか、
原因はわかりませんが、扱っている題材故にここはきっちりしてほしかったです。

一方で良い点としては、絵がとても綺麗ですね。

狗神煌さんの描く美少女たちはとても可愛いですし、
背景の桜は幻想的な雰囲気を作り出していて美しかったです。

(この2枚は素晴らしいデキかなと)

美麗なイラストは本作の雰囲気とマッチしているので、思わず見入ってしまいますね。
この雰囲気に合うような、儚くて切ない物語を期待したいところです。

まずは美術部部長の真琴√から行きたいと思います。

……と思っていたのですが、
後から調べたところ、2章の大まかな展開は稟の方を選んでも変わらないようです。
3章から個別√に入るっぽい?ですね。

なので、まずは2章の感想から書いていきます。

2章

前半は相変わらず面白くなかったですが、後半が素晴らしかったですね。

明石の謎すぎる行動の裏がここにきてようやく明かされたので、大分スッキリしました。
教会の壁に絵を描いて、草薙健一郎の遺作を完成させようとしていたなんてね。
まあ、わからないですよねw

みんなで健一郎の遺作を完成させる場面が熱いのはもちろんですが、
私が一番印象に残ったのは校長室での明石のセリフです。

「何のために作品を生み出すのか」

これで直哉に説教をするのは素直にかっこよかったですよね。
誰かを喜ばせるために作品を生み出す。そのためであれば、自分の名が残らなくても構わない。
そんな彼の精神はひとえに素晴らしいです。

ただ、明石はそれを実現するためにありえないぐらい周りに迷惑をかけているので、
そこでマイナスが大きくなってしまったのは痛いです。

まあ年頃の学生というものは一人で抱え込んでかっこつけたがるので、気持ちはわかりますけども(30近くのおじさんの意見)。
何にも相談してもらえない真琴が少し可哀想に思えました。

あと、上履き溶かすときの熱問題は耐熱服着れば良かったのではとか、
皮膚露出させるのはむしろ火傷負ったりして危険なのでは……とか色々思ったんですけど、
まあツッコむのは野暮でしょうかw

あ、ラストの花火のシーンは文句無しで良かったです。
締めとして非常に綺麗でしたね。

(雫がカメラ目線なのちょっと怖い……w)

ここから先は個別√ですね。
それでは続いて真琴√に行きましょう。

鳥谷真琴√

あらすじ

『櫻達の足跡』の制作者となった直哉はすっかり有名人になっていた。 女子にちやほやされる直哉を見た真琴はモヤモヤするも、当の直哉は全く気付いていない様子。

真琴は来たるムーア展に出品するため、学園にある登り窯で陶器を習作していた。 それを手伝ってくれた直哉への礼として、真琴は彼を喫茶キマイラに来るよう提案。 キマイラへ行った後、直哉と真琴は流れで夏目家に行き夏目家で夕食を共にする。 夏目家に飾ってある絵画「オランピア」を眺めた真琴は、 「自分がヌードモデルをやれば、また絵を描くのか」と直哉に尋ねる。 真琴がふざけてそんなことを言わないと知っていた直哉は、 「彼女は本気で、自分に絵を描くことを求めている」と実感するのだった。

放課後、居眠りしている圭の様子を見に行った直哉と真琴だったが、 水浸しの圭が階段から足を滑らせたところを二人が受けとめ、事なきを得る。 保健室で直哉は、圭と真琴が腹違いの姉弟であることを真琴から聞く。 圭とのことや美術部の存続問題、母親との不仲や喫茶店の運営など、 一人で抱え込みすぎな彼女を直哉は気遣う。

ある日、直哉は喫茶キマイラの常連客の女性が、病院で出会った杖を突く子供の母親であることを知る。 「声を掛けたことがきっかけで、その女性は喫茶店に通ってくれるようになった」と、直哉は真琴から教えてもらう。

学園での日々を過ごしながら校長の話を聞いていた直哉だったが、 その動機を真琴に訊ねられて本音を漏らしてしまう。 「真琴のことが気になるから」 それを聞いた真琴は顔を真っ赤にし、直哉の背中を押して屋上から追い出す。

キマイラにて、真琴がヌードモデルをする話が再び出る。「自分のためにそんな犠牲を払う必要はない」と断る直哉だったが、 「私は自分のために言ってる。『櫻達の足跡』を作る直哉の楽しそうな姿を、もう一度見たいと思っただけ」と反論。 妥協案として「制服姿のままヌードデッサン」をすることになる。 キマイラの二階、真琴の部屋にて制服ヌードデッサンを敢行する二人。 エロエロな妄想を広げて真琴の裸を心眼で捉えた直哉は、ノリノリでスケッチブックに描くのであった……。

常連客の女性がまたキマイラにやってくるも、様子がおかしく、突然泣き出してしまう。 直哉はその女性客――恩田霧乃の特徴から、その女性が圭の母親であることに気付く。 直哉は霧乃が鳥谷校長の元夫の妹、本間麗華から嫌がらせを受けていることを聞き、真琴と彼女の三人で鳥谷校長の元へ赴く。

鳥谷校長と直哉たちは、全員の話を照らし合わせて大方の事情を把握する。 鳥谷家を憎んでいる本間麗華の狙いは鳥谷家が保管する圭の絵であり、 あわよくば真琴を味方に付け、真琴の親である校長と争わせたいという趣味の悪いものであった。 本間麗華はそのために霧乃をこき使おうと画策しており、 霧乃に言いがかりを付けて金銭を要求し追い詰める、という外道を働いていたのだ。

校長は泣いて謝るばかりの霧乃を叱咤する。 「自分の子を守るために、自分の意思を示しなさい」と言い含める校長。 霧乃は校長に助けを請い、霧乃の子供――恩田寧を守ってくれるよう依頼する。 そのまま校長が上手くやってくれるのを見守っていればよかったが、 それを面白く思わない真琴は直哉のアイデアを元に麗華へアクションを起こす。

贋作である「カササギの花瓶」と自分が制作した陶器「四つの星」を並べ、 それらの制作過程や価値をしっかりと説明し、どちらかを選べと麗華に促した真琴。 真琴なりの誠実さを持って対応したが、麗華は迷いなく贋作のカササギの花瓶を持ってキマイラを去っていった。

鑑賞会で花瓶を贋作だと指摘された麗華は逆上して周囲を荒らそうとした結果、会を永久追放されてしまう。 圭の絵に関しての示談も成立し、ひとまずの一件落着を見る。

そして真琴の口から彼女の過去が語られる。 親と関わる時間が取れずにどう接していいかわからなくなった真琴は、 自分の描いた絵を全て燃やし、母との決別を胸に誓ったという。 その後、市役所に飾られている直哉の絵を見た真琴は、自分の世界を塗り変えられる。 真琴を苦しめ続ける過去は、直哉の描いた絵によって吹き飛ばされる。 直哉の絵は過去に囚われる真琴をあっさりと救い出していたのであった。

四つの星に使用した砂を追い求めて、直哉と真琴は田舎を旅する。 川辺で見つけた二人はそれを持ち帰って陶器を制作。 真琴は圭にそれを真っ先に見せ、圭はそれをモチーフにカササギの絵を必死で描く。 一年の時が流れ、直哉と真琴は新しい生活に向けて色々と準備をしていた。 結果としてムーア展での成果は振るわなかったが、愛を見つけられた真琴は嬉しそうに直哉を眺める。 直哉は目の前に出されたシフォンケーキを食べながら、真琴にある一言を告げようとするのだった……。

鳥谷家と中村家と恩田家のいざこざやトラブルを解決して、
真琴と母親の不仲を改善するお話でした。

中盤の霧乃の正体明かしや麗華に恥をかかせる場面がピークで、
後は長々と陶器や陶器の制作過程、
真琴の月に対するイメージなどを説明しまくります。

まあ面白くないです。読んでいてめちゃくちゃ疲れました。
真琴が平坦な声でひたすら何かを解説してるような印象しか残らなかったです、この√。

陶器や芸術に関して興味のある方なら面白いかもしれませんが、
ぶっちゃけ私はそこまで興味が湧かない人間なので、正直辛かったです。

私のようなあまり関心のない人に興味を抱かせる書き方は難しいかもしれませんが、
せめて、冗長にならないような説明の仕方は意識するべきだと思うんですよね。

そういった読み手の目線に寄り添った書き方が全く出来ておらず、
長々と説明するので全く頭に入ってこなかったです。

肝心の陶器の解説も、
窯変(炎の具合や釉薬中の物質の関係で、予期しない色や文様に変わる)という制作過程の現象に触れたときに、
国宝に指定されている「曜変天目茶碗」が全く話題に上らないなど、違和感のある部分もあります。

「曜変天目茶碗」は、窯変という現象が作り出した奇跡のような産物で有名です。
(器の中に宇宙が見えると評されるほど)

窯変天目茶碗。参考画像。

素人の私でも知っているので、専門の真琴が知らないはずはないと思います。
これは触れておいた方がいいと思いました。

後は、単純に要素を盛り込みすぎかなと。

陶器についての各種解説、圭との複雑な関係、美術部の存続問題、
母親との不仲、喫茶店の運営、放浪するマスターとの関係、
本間麗華との確執、日曜学校のいじめ問題、恩田家と中村家の確執、
度々出てくる月への暗喩、愛とそれ以外のことに対する疑問……などなど。

二郎系ラーメンのようなこってりしたシナリオなので、胸焼けしてしまいますね。
「お前忙しすぎないか?」と直哉が真琴に指摘しますが、それはそう。
これらの要素を全て彼女に負わせているわけですからねw 忙しいのも当然というもの。

真琴の色々な解説や冗長な説明シーンを削ってコンパクトにした上で、
母親との和解の過程や直哉との恋愛描写に力を入れるべきでしたね。

良かった点はあれですね、ヌードデッサンのシーンが面白かったです。
心の眼で真琴の裸を見ようとする直哉には笑いました。

真琴の制服が本当に透明化したり、
テキストの表示もわざと乱れさせたりして、このシーン妙に凝っていましたねw

(ペルソナの呼び出しかな?w)

圭の複雑な事情などが明かされたのも良かったですね。

しかし、夏目家にはまだ何かありそうなので(藍の幼少期とかね)、
全容が気になるところではあります。今後に期待ですね。

御桜稟√

あらすじ

『櫻達の足跡』を眺めていた直哉は吹が手掛けた部分の出来に疑問を抱き、吹が何者なのかを気にかけるようになる。

ある日直哉は下校中に「長山香奈」と名乗る女と出会う。 「直哉のことが昔から好きだった」と告げる彼女だったが、直哉は覚えていなかった。 また、香奈は直哉が絵をやめる切っ掛けとなった「過去の事件」についてずけずけと触れてくるも、 そんな遠慮のない言動に腹を立てた直哉は、怒鳴りつけて彼女をあしらってしまう。

稟に絵を教えるため、二人で彼女のアパートへ。二人は実際に身体を触って人体の構造を勉強するも、 稟の艶めかしい太ももやおっぱいに直哉は興奮してしまう。 ただの幼馴染から魅力のある女性として、直哉は稟に対する意識が変化していくのを感じていた。

美術室に集まった直哉と稟は、再びデッサンについて話し合っていた。 「手の動きが分からない」と疑問を漏らす稟。直哉は彼女の手を取って丁寧に教えていく。 いつしかお互いの手を触り合うことに夢中になってしまう二人。 だが、真琴がやってきたのに気付いて、慌ててロッカーに隠れてしまう。 ロッカーの中で我慢できずに稟を求めてしまった直哉。 「ファーストキスだったのに実感が湧かなかった」と、稟は直哉を糾弾する。 そんな彼女に、直哉は二度目のキスをする。 稟もそれを受け入れ、二人はひと時のキスを堪能したのだった……。

翌朝、直哉は稟に想いを伝えるために赴こうとするも、途中でバッタリ彼女と出くわす。 直哉は稟に想いを伝え、二人は結ばれる。 泣いて喜ぶ稟の顔に、直哉は悲しさと可愛さを感じつつ、少しばかり嬉しく思っていたのだった。

直哉の家で勉強とデッサンの話し合いをする二人。 流れで稟が泊まることになり、二人は夜通し語り合う。 父親と不仲の稟は、直哉と健一郎の関係を聞いて、草薙親子の触れ合いを羨ましく思う。

吹の探し物を突き止めるため、直哉と稟は散策に付き合う。「オランピア」という言葉がキーとなっているようだが、 吹はなかなか自分が何を探しているのかを思い出せずにいた。

稟の家で愛を確かめ合った二人。 直哉が外に出たところで、稟の父親と出くわす。 娘との不仲に罪悪感を抱いている様子の稟の父親は、直哉と過去に何かがあったようで。 彼は直哉に写真が入っている封筒を渡すとその場を立ち去ったが、 二人が話している内容を、長山香奈はこっそり盗み聞きしていたのだった。

吹の探し物を求めて神社までやってきた三人だったが、そこで稟の父親と出会う。 稟は父親に非難の言葉を浴びせるも、父親はそれに反論することなく立ち去る。 そこで稟は直哉に打ち明ける。稟の母親の名前が「御桜吹」であったことを。 稟は直哉に家族の話を語り聞かせた。 病気で弱っていく母を父親は連れて行った。 母の最期を看取らせてくれなかった父を、稟はずっと恨んでいたと。

後日、直哉は稟と共に服屋「オランピア」を尋ねる。 そこは、小さくなった母を連れて店にやってきた稟が、母のために服を作ってもらった店。 小さな人形を車椅子に乗せて歩いていた稟は母親の件で精神的なショックを受けており、人形を母と誤認していたのだ。

そのことを思い出した稟は意識を失い病院に運ばれるも、そこに長山香奈がやってくる。 長山は「稟の家が火災に遭った」という昔の記事を稟に見せる。 稟は昔に何が起こったのかを最悪の形で思い出してしまい、病院から飛び出してしまう。 走り去る稟を直哉は追う。 稟の家の跡地に出来たマンションに彼女は駆け込み、屋上へ上がっていく。 「自分が母を殺し、直哉の右腕を奪ってしまった」と自暴自棄になってしまう稟。 直哉はそんな彼女に詰め寄ろうとするも、運悪く吹いた風が彼女の身を攫う。 屋上から右手を伸ばして稟を掴んだ直哉だったが、 過去に稟を受け止めた影響で右手が動かず、直哉は彼女を引き上げることが出来ない。

「俺の右手を奪ったと言うのなら責任を取れ。俺のために、お前のお母さんのために生きてくれ」

そんな直哉の言葉に、稟は心を動かされる。 彼の身体を必死で登って屋上に戻った稟。 二人はお互いの無事を確かめるように抱きしめあう。

年月が経ち、直哉は無事に稟と同じ大学に進学する。 二人が幸せな日常を送る中、雫は吹と意味深な会話を繰り広げていたのだった……。

エッッッッッッッッッッッッッッッ!!!

何この子エロすぎる。エッチなおま○こもっと見せて!!!

共通パートで出てきた溶けるメイド服をまた使ってくるとは思いませんでしたw
エロ描写に妥協しないところ、良いですね。

シナリオは後半が盛り上がって面白かったので、良かったです。
まさかの吹が母親の幻影?という真実は驚きました。

稟が車椅子に人形乗せて母親と誤認しているところは「ヤバいヤバい……」と冷や汗を書きましたが、
長山香奈が良くも悪くもかき乱してくれましたね。

ぶっちゃけ彼女は直哉と稟のキューピッド役というか、悪く言えばかませ犬なんですが、
立ち絵と出会いのCGが用意されていて、かつCVも小倉結衣さんという豪華キャストなので、
待遇は悪くなかった気もしますよねw

彼女は稟に過去の火災事故の件を突き付けますが、
私としては直哉に痴○の冤罪をかけようとしたところの方が性質悪いと思いましたね。
あれやられたら男はマジで洒落にならないですから。直哉は名誉棄損で訴えてもいいレベル。

マンションの屋上まで稟を追いかけるシーンは素直に良かったです。
CGをふんだんに使用して盛り上げるところをとことん盛り上げるスタイル、大好きです。

内容としても直哉が稟に「責任を取れ」と発破をかけて、ある種の男気を見せてくれましたし、
稟も素直に受け入れて命を無駄にしなかったので、非常に良かったです。
(あの場面、Fateとかだと選択肢出てきて、間違えたら容赦なく死にそうですねw)

もう少し気持ちのぶつけ合いを見たかった気もしますが、
うだうだやっていると直哉の右手が持たないので、アレはアレで良かったということで。

気になる点としては、稟の父親のボイスはあった方が良かったかなと。
アパートの近くで直哉と話す場面、完全に無音なのは流石にね……w

あと、これは真琴√でも思って書き損ねていた点なんですけど、
エッチシーンの専用BGMがないのは気になりますね。

日常BGMを垂れ流したままとか、壮大な感じのBGMを流したままおっ始めちゃうので、
「いや、BGM変えてよw」と思ってしまいました。エッチシーンのBGMって結構大事なんだなと。

あと相変わらず日本語がおかしいので、3つほど例を挙げておきます。

一声声かけてよ

→重複表現。「一声かけてよ」でOK。

普通通り話しているつもりだけど、

→「普段通り」もしくは「普通に」が自然。

下に俯く

→重複表現。「下を向く」か「俯く」でOK。

欠点はそんな感じで。

総じて上手くまとめられた良い√だったと思います。

吹や雫に関してはまだ隠された事実がありそうですが、
それは後の√に期待いたしましょう。

氷川里奈√

あらすじ

里奈は不思議な夢に悩まされていた。 里奈は親友の優美に相談すると、どうやら大昔の出来事が関係している夢を見ているらしいことが分かる。 それは、弓張の丘に祀られる伯奇や、伯奇と駆け落ちした中村義貞に関係する夢であった。

優美の回想へ。里奈と優美の関係や直哉との出会いが描かれる。 病気のために薬を常用していた里奈は、薬の副作用で日光に弱くなっていた。 だから彼女は白いワンピースを着て、白い日傘を差すようになたのであった。 女性のことが好きだった優美は、そんな可愛らしくて儚い雰囲気の里奈を好きになった。

糸杉の森の中で絵を描く里奈と頻繁に会っていた優美だったが、そこに直哉が現れることで転機が訪れる。 死を受け入れようとしてそういった絵ばかりを描いていた里奈は、 直哉の生命力あふれる桜の絵に心を動かされ、生きることに希望を見出すようになる。 里奈は直哉に「弟子にしてほしい」と頼み込むが、にべもなく断られてしまう。 それでも直哉を慕いたい里奈は、直哉の「精神的妹」を勝手に名乗ることに。

一方で、優美は直哉に嫉妬する。 里奈に生の輝きを宿し、里奈と優美の仲にするりと入ってきた彼を優美は疎ましく思っていたからだ。 里奈は放課後、眠っている優美を見つける。 優美の傍に座って赤ずきんを読み聞かせる里奈は、自らの心中を語る。 病魔に侵される自分は、元気に走り回る健康な優美が疎ましく、うらやましかったのだと。 里奈は優美の傍にずっといることを誓って、彼女にキスをしたのであった。

優美は下校途中、大勢の女子生徒に絡まれる。 以前、直哉の取り巻きの女子を振り払うために彼のカノジョを自称した優美だったが、 それを気に入らない連中が押しかけてきたのだ。 喧嘩慣れしている優美はその場を切り抜けて逃亡し、学園の排気口に隠れるも、 疲れからか眠ってしまい、里奈と同じ不思議な夢を見る。

騒ぎを聞きつけて優美を探していた里奈は、学園に隠れて眠る優美を見つける。 その後、起きた優美は迷惑を掛けないよう里奈に気を遣うも、 里奈はそんな彼女の優しさに感じ入り、優美をぎゅっと抱きしめたのであった。

翌日、里奈が教室に入ってこないことを不審に思った優美は里奈を探しに飛び出す。 すると、服が土まみれで頬を赤く腫らした里奈を見つける。 他校の女子生徒に奪われた優美のカバンを、里奈は単身取り戻しに行っていたのだ。 優美は里奈が殴られたことに激怒するも、里奈の説得で矛を収める。

学園の屋上に移動した二人は流れでキスをする。 優美の好意を受け入れるような態度を取る里奈だったが、 当の優美はまだ現実を受け止めきれていない様子で、しばし混乱していた。 そして二人は屋上のドアに鍵を掛け、深く愛し合う。 その夜、優美は里奈に糸杉の森に呼び出される。 二人は夜空に輝く星を眺める。 優美は誰かにふさわしい詞を口ずさみながら、 里奈とのひと時を楽しむのであった……。

あら~^

まさかの百合√でびっくりしましたw
エロゲでこれは初めて見たかもしれませんね。

直哉が全く出てこなくて、二人映ってるCGが出た瞬間に、
「……ん?」と違和感を抱いたんですが、本当にそうだとは思いもよらず。

個人的には里奈が可愛くて結構好きだったので、出来れば攻略させてほしかったんですけどね~。
プレイ前は里奈と優美の3Pがあるんだろうなーと思ってたのに、直哉はそもそも出番がほとんどなかったというオチw

「二人の間に男はいらねぇんだよ!」ということなのか。
それならタイトル画面から直接選択できるようにするとか、他の√とは違う入り方にしてほしかったとは思います。

内容は二人がイチャイチャしてるだけなら良かったですが、
不思議な夢という伏線が微妙に配置されているんですよね。

おそらく他の√で回収されることになるのでしょうけども、
この√では投げた形になっているので、ややしこりは残ります。

あと、ラストの詞は「在りし日の歌」から引用してるっぽいですが、
これも意図が不明で、何を伝えたいのかよくわからない。

そもそも優美がそういった詩を読むようなキャラじゃない気がするので、
意図云々以前に、そこのところに違和感がありました。

「里奈がよく読んでたから私も読んでみた~」みたいな補足があればまだ納得できたんですが、
そういうのもないので、ただライターのメッセージを載せて話しているような印象しかないのが残念。

物語的な進展は夢の伏線が現れたぐらいだったので、
閑話休題的な√という感じでしたね。

……と思って、次の√に行こうとしたのですが、
どうやら里奈の√は分岐があるようです。
なので、そちらを先に見ておきたいと思います。

氷川里奈√(2)

里奈、攻略できました!

いきなり百合√に飛び込んじゃいましたからね。
ちゃんと攻略できて良かった。

内容に関しても、結構良かったんじゃないかなと。

不思議な夢に関しての秘密と結末が明かされ、
里奈と優美の関係性にも一つの区切りをつけるなど、
百合√で投げられていた伏線がしっかり回収されていたので、楽しめました。

優美かっこよかったですね。
好きな人の幸せのために自分が身を引く潔さ、惚れ惚れします。

ラストシーンの以前の男友達との会話も、なんか青春っぽくてよき。
優美と丘沢はお互いに失恋していますが、
それでも近況を報告し合えるような仲として、前向きな関係が継続しているのが良いですよね。

最後の黄昏に映る海が綺麗で、印象的なラストでした。
読後感が素晴らしいです。

千年桜伝承の具体的な説明(ネガティブな想いに共鳴して咲く)や、
「奇跡が家族の絆を引き裂いた」という直哉の意味深なセリフなど、
以降の√に続く伏線がまた配置されていたので、それらがどこで回収されるのかは見物ですね。

よくまとまっていた√だったと思います。

夏目雫√

あらすじ

直哉、雫、吹の3人でデートに。 そこで直哉は、吹の身体の関節が球体である事実を知り、吹の身体が人形であることを知る。

その日の夜、雫は直哉の枕元に倒れていた。 伯寄であった雫は、夢呑みをしようとして失敗?してしまったのだ。 雫は直哉には返しきれない恩義を感じており、それを何らかの形で返したいと考えていた。 だから女優を始めたという。お金のという形で少しでも直哉への恩を返していくために。 しかし、直哉はそんな雫を見て「お前の一番大切なものをくれ」と言う。 「みんなが与えた雫の心をくれ」と、直哉はそう言ったのだ。 こうして二人は結ばれたのであった。

直哉と雫の過去話へ。 健一郎から雫を託された直哉は自宅で一緒に住むことに。 雫が夢呑みの巫女であると気付いた直哉は、健一郎の元へ行って事情を尋ねる。 中村家と夏目家の古くからの戦いについて聞いた直哉。 健一郎が山師と呼ばれようとお金を稼ぎ続けていたのは、他ならぬ雫のためだったのだ。 そして直哉は、健一郎から稟と雫の関係性についても聞く。 心の無い雫に心を与えたのが稟であり、 観客のいない天才絵描きこと稟の観客となったのが雫であった。 そして直哉、明石、マーティフリッドマンの三人は中村章一に、 横たわる櫻の続編「櫻六相図」を売りつけ、雫を中村家から解放する計画を遂行する。 草薙健一郎の贋作として作品を描き切った直哉は、中村章一を騙すことに成功。 雫の形として中村章一からふっかけられていた15億円を、 健一郎の遺産の現金9億円及び「櫻六相図」の評価額6億円で、見事に清算しきったのであった。 これで雫は、晴れて自由の身となった。

回想を終え、直哉と結ばれた雫はこの機会に稟との過去話を語る。

雫と稟の過去を描いた回想へ。 稟の心を奪ったのは千年桜ではなく、伯奇の力を行使した雫であった。 母を生き返らせたいという稟の夢を、雫が呑むことで防いだのだ。

回想を終え、直哉と恋人同士になった雫は心が豊かになっていく。 しかし、それは雫の伯奇としての力が弱まることを意味していた。 それが進行すると、吹は存在できなくなってしまうという。 吹は消滅を覚悟していたが、自らの悲しみを抑えられずに泣き出してしまう。 直哉は「自分が千年桜を描くことで、みんなから忘れられてしまうのを阻止する」と宣言。 直哉のそんな意気込みに、雫と吹は元気づけられる。 直哉と雫はまた明日会う約束を吹と結び、 星々が照らす街を二人一緒に歩んでいく……。

雫の過去に何があったのかを掘り下げる√でしたね。

直哉と意味深会話しかしてなかったので何を言っているのかチンプンカンプンでしたが、
その謎があらかた解ける内容だったかと思います。

雫が伯奇だったのは意外でしたね。
里奈√で中村義貞と伯奇の恋が描かれていた意味がここでわかりました。

直哉との過去話が明らかになる回想シーンでは、
草薙葛と名乗るロングヘアーの雫が見られます。

(ロングヘアーの雫。可愛いですね)

伯奇である雫は中村家から追われる身となってしまいますが、
直哉は健一郎が手掛けた『横たわる櫻』の連作を作って、それを中村家に売りつけることで雫を解放します。

これはなかなかかっこよかったですね。
直哉は「スカしたいけ好かない野郎」という印象であまり好きではなかったのですが、
ここにきて株が上がった感はあります。

消滅を目前にして涙を零す吹を「助ける」と言い放ちますし、結構主人公していた感じがしましたね。

それと、草薙健一郎がボイスと絵付きで出てきたのが良かったですね。
「健一郎ってこんな感じなのか」と新鮮な気持ちで楽しめました。

後は幼少期の稟と雫の関係性でしょうか。

稟は「無から有を生み出すような具現化能力を持つ」とかいうよくわからない才能の持ち主で、
千年桜を描いて亡き母を復活させようとしますが、稟のその夢を伯奇の雫が呑むことでそれを阻止。

その結果、記憶喪失の稟と、稟の母親の幻影である吹が生まれてしまいます。

稟の願いは夢であり、それを雫が呑むというのは、ぶっちゃけ意味がわかりませんでした。
夢呑みの巫女が呑むのは文字通りの夢(寝ているときに見るやつ)であって、願望や願いを表す夢ではないのでは?
なんか微妙にこじつけている感じがして、釈然としませんでしたね。

それに、そもそも千年桜もよくわからないんですよね。

里奈の√で呪いがどうとか言ってたので、
「人のネガティブな想いに共鳴して奇蹟を起こす謎の桜」という認識でいいんでしょうか。

千年桜の力を稟の具現化能力を用いて無理やり使おうとしたから、
奇蹟を人為的に起こそうとしたから、それはまずいということで雫が止めに入ったのでしょうか?

まあ最後までプレイしてみないとわからないこともあると思うので、
千年桜とか稟と雫の所感についてはひとまず置いておきましょう。

雫の過去や雫と稟の関係性が明らかになってスッキリしましたし、
雫が直哉と恋仲になることで心を豊かにしていくのはとても良かったのですが、
その反面、記憶の戻らない稟と消滅を免れられない吹が生まれてしまったのは複雑ですね……。

吹に関しては直哉が助けると言ってくれていたのでまだ救いがありますが、
稟の記憶に関しては放置されてしまっているので。

直哉も言っていたように「思い出さない方がいい」ということなのかもしれませんが、
知ってしまった以上はなんとかしてあげたいといいますか。

個人的に読後感はあまり良くなかったかなと。

ラストの吹が泣いちゃうシーンは、見ていて少し辛かったです。

草薙健一郎は若田に自分の昔話を語って聞かせる。 健一郎と中村水菜の出会い。 埋木舎に住んでいた水菜は中村家の人間に身体を穢されていた。 それに憤慨した健一郎は屋敷にいる水菜と藍を救うことを決意。 健一郎は、夏目家の女当主でヤクザの組長を務める夏目琴子の力を借りる。 自らの描いた絵「オリンピア」を中村章一に破らせることで口実を作り出し、 中村家に10億円の負債を生み出すことに成功。 ヤクザの夏目家と中村家の戦いが勃発する。 両当主の話し合いの結果、 「藍と屋敷を夏目家に渡し、水菜を中村家に残す」ことに決まる。 そして健一郎は水菜を連れて海外に逃亡。 中村家に借金を背負う形になってしまった健一郎であった……。

健一郎と水菜の馴れ初めや、
小音羽の屋敷が夏目屋敷となる過程が描かれる過去話でした。

健一郎がかっこよかったですね。

腕を折られて死にそうになってもロクに治療もせずに裸婦画を描くって、
ぶっちゃけ常軌を逸していますが、一人の女のために頑張る男の姿は好きなので良かったです。

(水菜さんの太もm……!)

中村家が所有していた小音羽の屋敷が、どういう過程で夏目屋敷になったのか。
藍が言っていた「健一郎には恩がある」という意味がわかるようになるシナリオでしたね。

心とは何か。 物質(身体)とは何か。

健一郎と水菜が言っていた言葉遊びの意味が、
二人が惹かれあう過程で表現されていたように思えます。

「心は、身体じゃない。身体は、心じゃない」
「だけど、心は身体だし、身体は心だ」
「違っていながら、同じものだ」

心と身体をいたわることで、幸せになれという健一郎の言葉が水菜に刺さります。

心も身体もどちらも大切な自分で、自分を幸せにするのは自分なのだと。
どれだけ辛い境遇にあったとしても、自分のことを嫌ってはいけないと。

健一郎なりの優しいメッセージに胸を打たれた√でしたね。

直哉に付きまとう長山香奈は「櫻七相図は草薙直哉の作品」だと言い張ってくる。 あまりにもしつこいので、直哉はその真相を彼女に明かす。 絵を描くのを止めてすっかり凡人になり下がった直哉。 香奈はそんな彼を見て満足したのか踵を返そうとするも、直哉がそれを引き留める。 散々直哉を煽って挑発した香奈は、直哉の負けず嫌いの火を灯してしまったようで。 直哉は「吹と絵の対決をするから、お前はそれを見届けろ」と香奈に言い放つ。

深夜0時、学園のプールの底をキャンバスにして絵の対決をする直哉と吹。 吹の圧倒的な具現化能力を宿した絵に、絵の具の点を被せることで点描画として新たな絵を作り出した直哉。 作品単体としての評価は吹が、作品を生む過程の評価を直哉が得て対決は終了。

後日、香奈は絵を描き続ける直哉の元へやってくる。 絵を描く情熱を取り戻した香奈は、いつかは直哉たち天才すべてをねじ伏せて頂点に立つと言い放つ。 そんな香奈に直哉はお礼を言う。 両者のわだかまりは解け、共に絵を描くことの意義を取り戻したのであった……。

直哉と圭はムーア展への作品提出を終えた。 結果、二人の作品は六次選考を通過して受賞ノミネートされることに。 授賞式当日、 見事に圭の作品が受賞するも、圭は会場に向かう途中で事故に遭い帰らぬ人となってしまう。 ライバルだった圭がいなくなり、直哉はこれ以上ないほどの喪失感を覚える。 その一方で、圭が亡くなったことによって雫の心情が乱れ、吹が稟の元へと戻ることに。内に神を宿すと言われるほどであった絵の才能が稟に戻り、稟は必死で絵を描き続ける。稟に目を掛けていたフリッドマンは、稟の絵をムーア展のノミネート作品として強引にねじ込む。 結果、稟はムーア展の最高クラスの賞「プラティヌ・エポラール」を受賞する。

春、久方ぶりに稟と出会った直哉は彼女と様々なことを語り合う。 稟と別れた直哉は香奈と出会い、彼女の意気込みを聞く。 圧倒的な才能を見せつけ、世界に羽ばたいていく稟。 自分の美が絶対だと信じ、高みを目指す香奈。 圭がいなくなってひとつの指針を失った直哉はどこに向かうのか。 薄紅が舞う春の空を眺めた直哉は、「桜が綺麗だ……」とぽつりと呟いたのであった……。

直哉は香奈に煽られたことで絵描きの魂が再燃してムーア展に作品を出すも、
突然の圭の臨終によって、また絵を描く意義を見失ってしまう……という√でした。

色々言いたいことはあるんですが、この√は長山香奈の活躍が光る√だったかなと思います。
直哉の負けず嫌いを発動させ、彼に再び絵を描かせたのは紛れもなく彼女の功績ですよ。

自分以上の才能は無くなってほしいと思っているにも関わらず、
直哉が絵を描くことに協力する彼女。

直哉に「絵を描くのを止めて欲しい」と思う気持ちは本心でしょうが、
彼が絵を描くと言い出すと、どこか期待を寄せてしまう。
本物がわかってしまう香奈は、本物を作り出せる人物が動き出すと嫌でも注目してしまうんですよね。

櫻七相図が草薙直哉作品であることを見抜いた、彼女の審美眼には驚かされましたw

あとこの√で重要なのは、直哉にとっての圭の存在の大きさが描かれたことでしょうか。

「二人で世界的な芸術家になる」という夢を語る圭。
直哉は「自分は無理だ」と言いつつも、本心では悪くないと思っていたんですよね。

圭が亡くなって荒れる直哉と、彼に寄り添う藍のCGが悲しかったです。

(愁嘆場ってやつですね……)

一方で、稟に吹が戻って云々の話は「そっか」って感じで微妙ですね。
そもそもこの「稟が内に神を宿している」とかいう半ファンタジー設定、本当にいるのかなと。

芸術論とか美に対する考え方とか色々述べる本作ですが、
そういうことをするのであれば、こんな超常的な要素は必要なかったんじゃないかなと思います。
現実的なことを語ってるのにその中に非現実な要素が混じると、説得力が弱くなりますよ。

あと「心と自然ってなんだろう、数ってなんだろう、人がいなくても世界は~」とか色々語ってましたが、
なんかよくわからんこと言ってるなーとしか思えず。

偉人の名言とかたくさん引用してつらつらと考えを述べているんですけど、
10代の直哉と稟がなぜそんなに博識なのか。この違和感が大きくて、話が頭に入ってきません。
単にライターが主張したいだけですよね。とても直哉と稟の口から発せられている言葉とは思えない。

私は、考え方や意見というものはそのキャラの経験、過去に裏打ちされたものであるからこそ、
説得力が生まれると思っています。
どこから生まれたのかわからない哲学を延々と語られても、「なんのこっちゃ?」としか思えないんですよね。

しかも、このシーンびっくりするぐらい長いです。
途中でボイス聞く気が失せてスキップしました。(バックログで一応読みましたけど)。

別に何かを主張すること自体はいいんですよ。
むしろそれは大事だと思います。創作物ってそういうものだと思っているので。

ただ、それを読者にストレスなく聞かせる努力をするのも同じぐらい大事だと思ってます。
読んでいる途中でうんざりして「スキップしよ」と思わせないような、それぐらいの工夫はしていただきたいですね。

せっかく作品として世に出しているのに、それを読まれもしないというのはもったいないですよ。
「プレイヤーを楽しませること」「意見やメッセージを聞かせること」。
このバランスについて、ぜひとも考えていただきたいなと思います。

シナリオとしては圭が亡くなってしまったわけですが、ここからどう繋げていくのか気になりますね。
Ⅵで続きが描かれるのでしょうか? とりあえず進めていきたいと思います。

長い年月が経ち、大学を卒業した直哉は弓張学園の非常勤講師を務めていた。 弓張で共に過ごしたみんなは違う場所で活動し、かつてのメンツは直哉だけとなっていた。

空虚な日々を過ごす直哉の元に、弓張学園の風紀委員である咲崎桜子、 地味な生徒である栗山奈津子、里奈の妹のルリヲ、優美の妹の鈴菜が集まる。 直哉は彼女たちに絵を教えることに。

ある日、教会の壁画に描かれた「櫻達の足跡」が、何者かによって落書きされる事件が起こる。 それは香奈やトーマスが所属する芸術家集団「ブルバギ」によるものであった。 学園の理事やスポンサーの意向により、これを現代アートとしてマスコミに発表することに決まる。 それを校長から聞いた直哉は、ある計画を立てる。 それは真琴や新たな世代の女の子たちの協力を得て、草薙健一郎の遺産を蘇らせる計画であった。

直哉たちはセロファンでステンドグラスを制作し、病院の屋上に設置。 壁画の光の当たる角度によって、元の「櫻達の足跡」が浮かび上がる作品へと昇華させたのだ。 これを草薙健一郎とブルバギのコラボ作品として発表される。 しかし、これはブルバギに大きな手柄を与えることになった。「悔しくないのか?」と香奈は直哉に問いかけるが、ここで直哉は明石が以前言っていた言葉の意味を理解する。 「作品を作ることの意味」 それさえ見失わなければ、あれが草薙直哉作品である必要はないと香奈に言い放つ直哉であった。

いつもの居酒屋で飲みすぎた直哉は家で具合が悪くなってしまうが、そこに藍が現れる。 遠くの学園に転任していた藍が仕事を終えて弓張に帰ってきたのだ。

後日、弓張学園の校長から直哉は辞令を受ける。 それは来年度から学園の新規教員として直哉を雇用するというものであった。 学園に続く夢浮坂で、直哉は藍と出会う。 来年度から、藍も弓張の教師となることを直哉に伝える。 櫻のつぼみが芽吹き始めた夢浮坂を、 直哉と藍は二人寄り添って歩んでいくのであった……。

弓張の非常勤講師となり、生きる意義を見失って空虚な日々を送っていた直哉が、
香奈が率いる芸術家集団ブルバギとの一件で、自身の在り方を見つめ直すお話でした。

大枠で捉えると「良かった」と言えますが、
いまひとつ盛り上がりに欠けたラストルートといった感じでもありましたね。

ブルバギが叩きつけてきた挑戦を、
直哉は数年温めていた計画で見事にいなします。

それ自体はとても良かったんですが、そこの演出が弱かった気がしますね。
みんなでステンドグラスを作った事実が描かれるだけで、
それを生み出すまでの過程、直哉と彼女たちが楽しんで作った場面が描かれなかったのが痛い。

「楽しいから作った。作者が俺である必要はない」と直哉はかっこつけているわけですが、
その楽しんで作った過程をしっかり見せてくれないと。

それがあればこちらとしても、
「確かにあれだけ楽しんでたし、作者が誰とか些細な事だよな」と納得を得られるわけです。

「櫻達の足跡」を作る場面ではそれがしっかりできていて、見ているこっちもワクワクしましたよ。
なのに、なぜここで手を抜いてしまったのか。

プレイヤーを驚かせるために今回は隠したのかもしれませんが、
このシーンを描くことにおいて重要なのは、そこじゃないでしょう。

長山香奈に問い詰められた直哉が、「作品を作ることの意味」を理解したあの場面。
あの場面での直哉の心境とプレイヤーの心境をシンクロさせることが、何よりも大事だったのではないでしょうか?

このシーンを描くことの“意味”は間違いなくそこにあるでしょう。
その一点が惜しかったですね。

(直哉と彼女達の制作風景を見たかったです……)

ラストの「藍との関係性の落としどころ」については、賛否分かれそうですね。

藍は直哉と恋仲にならず、お姉さん的な立ち位置をキープしたままエンド。
Ⅴにエッチシーンが1枠用意されているとはいえ、エロゲ的にこの終わり方はいかがなものでしょうか。

藍の彼との付き合い方に関しても「直哉に合わせる」と言ったっきりで、彼女の心の深い部分が本作ではあまり見えてこない。
夏目家の歴史を一番見てきて直哉をガキの頃から知っている彼女は、変わっていく人と世界を見て何を思うのか。
その辺りが深堀りされないので、藍が好きな方は物足りなさを感じてしまったのではないかと。

本作の締め方については、個人的には「少し儚いラスト」という印象で読後感は良く、
ひとつの物語としてはこういう終わり方もありだと思いましたが、エロゲとしては正直微妙かなと。

「色々な女を見てきたけど……藍、お前が一番だよ」って最後に言ってくれていたら、
直哉の評価は爆上がりしていたんですけどね。そうはならなかったので残念。
彼は童貞を守り切ったのだ。

主人公“草薙直哉”の感想

芸術家の父「草薙健一郎」を若くして亡くした本作の主人公、草薙直哉。

彼は子供の頃、火災事故に遭った稟を助けることで右腕が動かなくなり、
里奈との共作を完成させたのを最後に、絵を描くことを止めてしまったという過去を持っています。

直哉の才能を惜しむ周りのみんなは「描け」とことあるごとに言うわけですが、
彼は聞く耳を持たず、頑なに筆を折り続けてきました。

「櫻達の足跡」を制作した時点では、「作品を作ることの意味」について明石に説教されてしまいますが、
本作の最後で、直哉もそのことが理解できるようになります。

他の絵描きたちが次々に作品を発表していく中、
直哉はひとりで鍛錬に励み、「自分は何ができるのか」を何年も考え続け、ラストでその成果を披露します。

極度のかっこつけたがりで、才能あるくせになかなか絵を描かないスカした態度が鼻につく直哉ではありましたが、
終盤でしっかり成長していたのでそこは良かったかなと。

彼の作品は「挑発的である」とよく言われていましたが、
最後のステンドグラスはまさにそんな感じがしましたね。

世界を股にかけて活躍する稟に対しての挑発。「俺は此処にいるぞ」と。
フリッドマンと語り合う彼の表情が印象的でした。

周りのほぼ全ての女の子から好意を向けられてくっそモテる直哉ですが、
グランドまで進めても誰ともくっつかないのは正直驚きましたね。

桜子が押し倒してきたあのシーンでエッチしなかったときは、
「こいつEDか?」と思わず疑ってしまいましたw

なぜあそこでエッチシーンを入れなかったのか。いやー不思議ですね。
刻に繋げるためですよね知ってますよ。

総評

芸術家の父“草薙健一郎”を亡くした主人公“草薙直哉”が、
様々な人の意見や生き方に揉まれていく果てに、自身の芸術に対する向き合い方を確立し、
幸福の先へと辿り着くお話でした。

シナリオはトータルで見るとなかなか良かったかなと思いますが、
面白い部分に辿り着くまでがまあ長いですね。

伏線を撒きまくる序盤はお世辞にも面白いとは言えません。
「2章までに挫折するプレイヤーが結構いる」という話を耳にしていたのですが、実際にプレイしてみて納得でした。
登場人物全員がことあるごとに意味深な会話を始めるので、プレイヤー置いてけぼりでしたね。

序盤でプレイヤーを楽しませる工夫が大して見られなかったのは、本作のマイナスでしょう。

オーラスのⅥにおいては「さあ、どうなる?」と期待していたわけですが、
クライマックスの描き方に不満が残ってしまいました。

ステンドグラスで光を当てて云々をやるにしても上で述べた通り、
制作風景を描いて、直哉たちの楽しそうな様子をプレイヤーに見せる。これをやってほしかったんですよね。
あの場面で重要なのは作品自体ではなく、作品の制作過程だと思うので。

作品のアイディア自体は素晴らしいですし、なかなか出てこない発想で凄いなと思えたのですが、
そこだけが悔やまれますね。

キャラクターに関して。

私が本作で魅力を感じたのは夏目藍と長山香奈ですね。
二人ともスタンスがブレていないといいますか、安定しているところが良かったです。

藍はみんなのお姉さん的な役回りで面倒を見てくれていて、
直哉が辛いときは気付けば傍で励ましてくれている、素晴らしい女性です。
長い練習の果てに、おいしいチャーハンを作れるようになったエピソードも良かったですね。

ラストシーンの坂の上に立つ藍は、特に印象に残りました。
1年間離れてもちゃんと直哉の元に戻ってきてくれる、彼女の優しさが心に沁みます。

長山香奈は直哉の敵役として描かれていますが、彼女は非常にキャラが立っていました。
直哉への執念深さがね、もう半端ないです。

下校中の直哉を全速ダッシュで追いかけて汗だくになりながら、
「偶然だね。こんな場所で会うなんて!」はめっちゃ笑いました。

芸術家集団ブルバギの代表となり、
直哉の敵役としてブレずに走り続けた彼女は、本作の裏のキーパーソンだったように思えます。

声優の小倉結衣さんの演技も最高。
あの人、こういう悪役の演技がほんと上手なんですよねw

エッチシーンやシステム面に関しては、あまり力を入れていないんだろうなという印象です。

特にシステム面はゲームエンジンの古さもあって、かなり不便。
「セーブ枠が少ない・選択肢スキップ未実装・ムービー鑑賞モード未実装」。
BURIKOエンジンはもうダメかもしれませんね。時代について来れてないです。

あとはテキストですね。

本作の文章のレベルはあまり高くないです。
全体的に助詞の使い方に違和感を覚える文章が多く、非常に読みづらい。

上で挙げたような日本語のおかしい文章もちらほら見かけられます。全く洗練されていませんね。
それなりのテキストを求める方にはあまりおすすめできません。

「サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-」は、

  • 芸術に興味がある方
  • 哲学や考察が好きな方
  • 有名作品を押さえておきたい方

上記の方におすすめのエロゲです。

芸術論や哲学などの難しい話が多いですし、
プレイ時間も70時間(ボイスをほとんど聴いて)ぐらいかかりますので、
万人におすすめできる作品ではありません。

エロゲ初心者が軽い気持ちで手を出すと、多分挫折します。
10作以上エロゲをプレイ済みの、玄人向けといった感じですね。

ただ、完走した時のやり終えた感はなかなかのものなので、
エロゲのプレイ経験がそれなりにあって、時間に余裕がある方はぜひ。

直哉が幸福の先へ辿り着く物語を、ぜひその目で見届けてみてください。

点数

シナリオ 16
(芸術家たちの生き様は伝わってきたかなと)

キャラ 18
(藍と香奈が良かった。覚醒前の稟もえちえちで好きでした)

音楽 16
(OPはかなり良い。エッチシーン専用BGMが用意されていないのは×)

システム及び演出 14
(セーブ枠が全く足りない。バックログを閉じた時にボイスの再生が中断される仕様がダメでした。
演出のパワーも弱い。芸術作品の見せ方はもっとブラッシュアップできたはず)

全体の完成度 16
(長い物語を描き切ったのは素晴らしい。ただ、要所での盛り上がりは不足気味)

合計80点です(100点満点中。各項目は20点満点)

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おまけ

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