【エロゲ感想】アンラベル・トリガー(Archive)

Archiveさん作『アンラベル・トリガー』の感想になります。

『アンラベル・トリガー』は2024年3月29日にArchiveから発売されたエロゲです。
略称は「アントリ」ですね。

アントリはトリガー探偵事務所に勤める主人公の“榊カイ”が、
ヴィルカール帝国第一皇女のミリセントと出会い、壮大な事件に巻き込まれていく物語。

※ネタバレ全開ですのでご注意ください。

『アンラベル・トリガー』のネタバレなしレビューはこちらのサイトに掲載しております。

『アンラベル・トリガー』公式サイトはこちら。

目次

シナリオの感想

共通パート

Episode 1 たとえ誰にも認められなくても、わたしは自分の信じる道を行きます

トリガー探偵事務所の調査員である“榊カイ”は帝国の第一皇女である“ミリセント”と出会う。

護衛の依頼を受けたカイはミリセントと行動を共にする。
ミリセントを狙って襲ってきた刺客を排除し、彼女の身の安全を守る。

そして、カイはミリセントのスピーチの時に襲ってきた残りの刺客もなんとか食い止めることに成功。

種族間の融和に向かって突き進むミリセントは理想を掲げて、カイに手を差し伸べてくる。
カイはその手を取りつつも、目の前にいる彼女の姿に失踪した紗衣奈の影を重ねていたのだった……。

主人公の榊カイはミリセントの手を取って彼女の理想を応援しているものの、
その内心では失踪した紗衣奈のことばかり考えていて、どこか他人事のような様子です。

幼馴染と交わした過去の約束に執着していて、目の前にいる人のことが見えていません。
今のカイはミリセントとしっかり向き合っているとは言えないでしょう。

  • 失踪した紗衣奈はどこで何をしているのか
  • 紗衣奈の影に囚われているカイは、ヒロインたちと関わっていく中でどう変化していくのか
  • ソフィアが失くしたものとは一体なんなのか
  • ミリセントルート、グランドルートで描かれる種族間融和の決着はどういったものになるのか

この辺りが本作の注目ポイントになりそうですね。

「人種差別」というかなり難しいテーマに挑戦しているので、
そこの落としどころというか、どのように決着を付けるのかは非常に気になるところ。

Episode1のプレイを終えて良いなと思ったところは演出ですね。

立ち絵の目パチ口パクがデフォなのは普通にすごいですし、
戦闘CGも人物がスライドしてカメラが引く最初の演出が見ててかっこよかったです。

背景をナナメにするアレは正直要らない気もしますが……w

まあとはいっても、本作の演出はかなり頑張っていると思います。
きっちり手間をかけている感じがしますね。

一方で気になった点はかなり多いです。

細かい部分も含めるとたくさんありますが、一番はやはりラストのスピーチの場面ですかね。
近くにいた護衛がヴァンプの強硬派で、そいつらに殺されそうになるミリセントというのは……正直ないですね。茶番が酷いです。

  • なぜミリセントが最も信頼している側近のシルヴィが近くにいないのか?
  • 自分の命すらきちんと守れずに殺されかけた人物、自身の危機管理をしっかりできていない人物のスピーチに説得力はあるのか?
  • 「ヒュームがヴァンプを守ってくれた」というのは結果論に過ぎない。そのまま殺されていたらどうするつもりだったのか?

そもそもミリセントの振る舞いが迂闊すぎて、中立特区の現状をわかっていない以前に完全に平和ボケしていますね。
理想を語るわりに現実が全く見えていませんし、その自覚があるにも関わらず行動に隙が多すぎる。

私は正直ミリセントはあまり好きになれないというか、現時点での印象はかなり悪いですね。
単純に見ててイライラしてしまいました。

反対にソフィアの印象は良かったですね。

見据えているゴールに向かって、他社を蹴落として進んでいく。
目的のために手段を選ばない彼女の行動指針は、素直に好感が持てました。

本作の荒んだ世界観に合致した指針と言えますね。
彼女が何を掴もうとしているのかはかなり気になるところです。

あと普通に可愛い。

そんな感じで、ミリセントの印象は良くなかったなというのがEpisode1の正直な感想です。

とはいっても物語は始まったばかりですので、先で巻き返してくれるのを期待したいですね。

……ちなみに、私が最も楽しみにしていたレイリちゃんの出番はありません(泣)

OPのレイリを眺めながら、「レイリ出てないよ!!」と叫びそうになりました……w

Episode 2 いつか、わたし達の目的が……果たされるといいですね

トリガー探偵事務所のアルバイトとして小花衣レイリがやってくる。
カイは彼女の目的を聞きながら徐々に打ち解ける。

その矢先、襲い掛かってきたディザスターの正体が紗衣奈であることをカイは知る。
カイはCSSにディザスターの本格的な捜索を頼み込むも、その対価としてソフィアから「ミリセントの暗殺」を依頼されることになる……。

レイリ回でした。

前回出てこなかったので、レイリを中心に話を広げていた感じでしたね。

レイリの氷のレガシーはまあ素直にかっこいい感じでちょっとワクワクしました。
SEも安っぽい感じはしないので、演出はやはり頑張っているなと。

静止画ではわからないですがこのCG、レイリから冷気が広がるエフェクトも出てます。

カイとレイリが徐々に打ち解けていく様子は上手く描かれていました。
「カイは仇討ちを目的に生きている」と知ったときのレイリの反応が良かったです。
あそこでカイとレイリの、二人の心の距離が縮まった感触がありましたね。

細かいところで惜しかったのは、お茶会のシーンはCGがほしかったなと。
あそこはCGがあればもっと良くなっていた気がします。
内容自体は面白かったので、そこに文句はないんですけどね。

Episode2は終盤でディザスターの正体が紗衣奈であるとか、
ソフィアからのミリセントの暗殺依頼であったりとか、
少し情報が出てきて動きの兆しが見えるルートという印象でした。

ここから話が動き出しそうな予感。楽しみですね。

Episode 3 何せ、私という勝利の女神がついていますから

カイがレイヴンのボスとソフィアが交渉するための場を作り、
ソフィアと恋人同士のフリをして人民警察のちょっかいをいなして準備を進める。

そしてカイはディザスターと交戦するも自爆され、アルカディアに捕らえられてしまう……。

今回はソフィア回でしたね。

ソフィアとの絡みを自然に用意していくストーリー展開は上手だったと思います。

加えて、戦いながら相手を冷静に分析するオレグにはレイヴンのボスたり得る貫禄を感じたり、
ソフィアの狡猾な立ち回りには、若くしてCSS中将に上り詰めたことに納得できるものがあったり、
なかなか描写がしっかりしているなと。

ポーカーで相手の特徴を観察して即座にクセを見抜くソフィア、さすがでしたね。
日常の中でソフィアの能力の高さを伺い知れる、良いシーンだったと思います。

いや、こう言ってはなんですけど急にテキストのレベルが上がりましたねw
エンジンかかってきた感じでしょうか。普通に面白かったです。

後、ソフィアの将棋の相手が水乃宮若葉だったのは意外でしたね。
「え、この子ってそういうキャラだったの!?」って普通に驚きました。

まさかすぎた。

街中でカイとソフィアがイチャついているときに若葉は「まさか、お二人がそこまでの仲だったとは……」と言ってましたが、
あれには違和感を覚えたんですよね。「若葉とソフィアって面識あったっけ?」と。
伏線だったみたいですね、あれは。もう少し考えていれば気付けていたかもしれないだけに、少し悔しいです。

にしてもソフィアが若葉と関係を持っているということは、
若葉は合衆国サイドの人間で、ある程度情報を掴める立場にいるからなんでしょうね。

カイが元軍人であることも把握しているので、彼女は合衆国の諜報機関の人でしょうか。
ソフィアとの繋がりもそういう関係だと頷けます。

Episode 3はなかなか面白かったですね。

ソフィアのことが結構気になってきましたよ。

ソフィアはプレイ前はノーマークで大して注目していませんでしたが、かなり好きになってきました。
やはりヒロインの魅力というものはプレイしないとわからないものですね。

Episode 4 わたしは若葉がいいんだ。若葉に傍にいて欲しいから

トリガー探偵事務所はミリセントから「アルカディアのボス、ナダルカーストンを生け捕りにしてほしい」との依頼を受けるも、調査は芳しくなく停滞。

一方で、交通事故をきっかけとして、レイリの親友である水ノ宮若葉がヴァンプだと発覚。
レイリは混乱してその場から逃げ出してしまうも、カイが間に入ることで彼女たちの仲を取り持つことに成功。

そしてカイはレイリから告白を受ける。
返事は自分の復讐が終わってからいいと告げるレイリだったが、その後付近から銃声が聞こえてくる。

二人は駆けつけた先で、血だまりの中に倒れるアリーシャを見つける……。

レイリと若葉回って感じでしたね。

「収まるべきところに収まった」という感じのオチではありましたが、王道的で良かったと思います。

というか若葉がヴァンプなのは普通に驚きましたよ。
公式サイトに「ヒューム」って書いてるのに……平然と嘘ついてきますねw

この回は天成院薫子のサブエピソードやレイリの告白などの日常メインで、
「今回は平和だな。よきかなよきかな」とか暢気に構えていたら……ラストでアリーシャが死亡しました。

最後で強烈な引きを作ってくるのは相変わらずといったところで。
というかアリーシャわりと好きだったのに……悲しいです。

彼女とオレグの間には何かしらあったみたいですが、それはどこで語られることになるんでしょうね。

というか誰にやられたんだろう……?
これは気になって仕方ないですよ。どんどん進めていきたいと思います。

Episode 5 ジーミイル連邦に栄光あれ

アリーシャの意識が戻るまで、ソフィアとカイは一時的に寝食を共にすることになる。
アリーシャ襲撃の犯人として3人の容疑者「ヘンリエッタ・ルーナ・ナトレ」が浮かび上がる。

3人への事情聴取や捜査を行うも事件襲撃の犯人は掴めず。
政治的な思惑もあり、3人以外の人物を犯人としてでっち上げることで事件の収束を図ろうとするソフィアだったが、カイは真犯人の正体へ辿り着く。

「真犯人の楪紗衣奈と、ソフィアが関係を持っている」と睨んだカイは、ソフィアの元へ。
中立特区を戦乱の渦に巻き込もうとしているソフィアを敵だとみなしたカイは銃を向けるも、
「紗衣奈の情報を吐くこと」と「自らの復讐を終えた後、ソフィアの配下となること」を交換条件として取引を行い、カイは銃を下ろす。

そこで突如、突風が吹き荒れる。
上空に目を向けると、そこにはカイが捜し求めていた少女——楪紗衣奈が浮かんでいたのであった……。

アリーシャ襲撃事件の真相が明かされる回でしたね。

いやーアリーシャ生きてましたね。完全に死んだと思ってましたw

楪紗衣奈がついに出てきて「おー、きたきたきた……!」とワクワクできたのは良かったんですが、
事件の真犯人が3人以外だったのは、ちょっと拍子抜けなところも正直ありました。

ミステリーっぽい感じで読み進めていて「3人の誰が犯人なんだろう?」と楽しみにしていたんですけど、
普通に部外者で少し肩透かしだったというか。

まあこの作品はミステリーではないので別にそれでも構わないんですけど、
だったら別にあんなミステリー風に描く必要もなかったと思うんですよね。

これでルーナが真犯人だったりしたら「え、マジか……!?」ってかなり驚いたんですが。

まあとはいえ、紗衣奈がついに現れたということで、ここからどうなるのかは見物ですね。

……ちなみに細かいことなんですけど、この紗衣奈のセリフ「久しぶりだね。カイくん」だけの方が良かった気がします。
こういう印象的なシーン、余計な言葉は1文字でも多く削ぎ落とした方がいいと私は考えているので。

本作は設定や背景などは練られていてそこは大変良いのですが、
こんな感じで細かい文章表現で惜しいと思う部分が多々あります。

本作は難しいテーマを扱っている重厚なシナリオゲーという雰囲気があるので、もっと推敲してほしいですね。

シナリオで勝負しているタイトルは最大限、テキストにまで気を配ってほしいです。

Episode6 でも、言わないと……わたしは一生後悔してしまうと思ったから

ソフィアがミリセントに正体を明かして、アルカディア殲滅作戦を開始。
途中、ミリセントがレイリの通う学園で講演を行うも、襲撃してきたアルカディアに彼女の身柄を奪われてしまう。

CSSの集めた情報を利用してアルカディアのアジトを暴いたカイたち。
ナダルと死闘を繰り広げて勝利したカイたちは、無事にミリセントを奪還。

その後、カイは知り合いたちに集うクリスマスパーティに参加する。
屋上でミリセントとダンスを踊るカイは、ミリセントから溢れる想いを受け取ろうとしていた――その瞬間。
突然屋上の足場が崩れたことで、カイは空へと投げ出されてしまう……。

アルカディアを壊滅させるオールスター回って感じでしたね。

ミリセントがあっさりアルカディアに連れ去られていったのは開いた口が塞がりませんでしたが、
それ以外の部分はなかなか良かったのではないかと思います。

CSS長官のソフィア、副官のスルツキー、近衛騎士のシルヴィア、レガシーのレイリと、
主要キャラ全員で悪の組織に立ち向かう構図は王道的で非常に熱い。

囚われのお姫様を救い出すというベッタベタなやつではありますが、ノベルゲームはそれで良い――否、
それが良いのです。

ただ、ミリセントが敵のアジトに閉じ込められているときですけど、私はあのときに彼女をもう少し虐めた方がいいんじゃないかと思いましたね。

彼女の心を折るぐらい追い詰めた方が怒りも増して、ナダルをブチのめしたときの爽快感が強くなるので。

……決して心の折れたミリセントを見てみたいとか、そんな邪な気持ちからくる発言ではありませんよ、ええ。

あと、ミリセントと紗衣奈が言葉を交わすシーン。
私はあそこで「お、来たか……!」と思わず椅子に座り直したんですけど、大したやり取りはなくて少し拍子抜けでした。

あれって、この作品を象徴する正義と悪の対面って感じじゃないですか。
真っ向から世界平和を目指すミリセントと、歪んだ手段を持ってそれを成そうとする紗衣奈。
「この二人のやり取りは見応えがありそうだ」と結構期待していたんですが……いやー全然物足りなかったですね。

ここでバチバチの舌戦を繰り広げてくれても良かったですよ?

まあ、ここは勿体付けた感じだとは思いますけどね。
もっと奥の方で二人の本質的なやり取りを見られるんでしょう。私はそこに期待しています。

……それにしても、紗衣奈が余計な情報をミリセントに与えたのはなぜでしょう。
カイとミリセントの仲をギクシャクさせたいからでしょうか。てかまた腹黒キャラを演じてるよ小倉結衣さん。

ここまでの総括としては、なかなか良い感じなのではないかと思います。
Episode2までは正直退屈でしたが、3ぐらいから面白くなってきた気がしましたね。
シナリオは普通に先を読みたいと思えるので、上手く描けているんじゃないかなと。

一方で気になるのはシリアスな作風のわりに描写が軽いことでしょうか。
具体的にはバトルのときの軽口が多すぎるところですね。どうにも緊張感に欠けるというか。

「主人公はそういうキャラだから」ということなのかもしれないですが、
それにしても彼が真剣に戦ったり真面目になる瞬間というものを、もう少し出してもいいんじゃないでしょうか。

あと、私はバトル描写は基本真剣にやり合って、たまにジョークを挟んで息抜きするぐらいが好みなんですよね。
本作の場合はジョークが多すぎるので、戦いが軽く見えてしまうのが気になりました。
その辺りのバランスについてはもう少し考えてほしいなと思ってしまいましたね。

以上がEpisode6及び、ここまでの総括でした。

さて、この先は選択肢が出てきたので、個別√に突入するようですね。

本作の企画・シナリオを手掛けた工藤氏が「レイリ→ソフィア→ミリセントの順番が推奨」と述べていらしたので、まずはレイリからいきたいと思います。

レイリ√ 

Reiri First Episode そうじゃないと……わたし自身が、わたしを許せないから

レイリの復讐に決着を付けてカイと恋人同士となり、
レイリの新たな秘密が明らかになっていく回でした。

「レイリの復讐の決着→告白→新たな秘密」と流れるように進んでいくストーリー構成が綺麗でした。
中だるみしないように常に気になる要素をちらつかせているのはさすがですね。
読み手を飽きさせまいと、よく考えてくれているライティングだなと。

内容については普通に良かったのではないかと思います。

復讐の決着はやや味気ない感じではありましたが、
レイリの両親に手を下したヘンリエッタの部下はしっかり裁かれているので、レイリも少しは溜飲が下がったことでしょう。

わかりやすい悪役が存在せず、直接レイリが報復するシーンもないのは爽快感に欠けて残念でしたが、
彼女の心境の整理というか、復讐に関して一応の解決は見られたのでまあ及第点かなと思いますね。

「ヘンリエッタはレイリの復讐相手として用意されたキャラだったのか……?」と最初は不意を突かれましたが、
彼女はそんな使い捨てのキャラではないようですね。まだ何かしらの出番がありそうです。

中盤はカイとレイリの仲を周囲にいじられるテンプレ展開ですが、まあ普通に面白かったですね。
ソフィアのいじりが開幕から面白くて笑いました。

草。

前半の「したことないゲーム」も面白かったですし、日常描写が光る回という印象でした。

最後、レイリがアリーシャに拉致されますが、ここはちょっと驚きましたね。
ソフィアの狙いがなんなのか気になるところです。

Reiri Second Episode わたしの幸せは、わたしが決めます

レイリが合衆国強硬派の政治的思惑で利用されようとしていることと、
カイとナトレの過去及びナトレの抱えていた思いが明かされる回でした。

レイリ√ではありますが、ナトレの掘り下げをメインに据えた回って感じでしたね。

カイへの好意を隠し、紗衣奈が生きている可能性から目を逸らし続け、合衆国のためにカイに襲い掛かる。

カイとナトレの戦闘はなかなか熱くて面白かったです。
BGMも「Contract Trigger」のインスト版で気合が入っているのを感じました。

戦闘を終えて「自分で何がしたいかよくわからなくなってるんじゃないですか? ナトレさん、滅茶苦茶面倒くさい女ですよ」という、レイリの火の玉ストレートがぶっ刺さっていたのには笑いましたね。

Episode5でナトレがアリーシャ襲撃の容疑者となったときにカイの様子を気にしていた描写があり、
彼女がカイのことを好きなのはわかっていましたが……それにしてもツンデレが酷いですねw

敗北を認めて紗衣奈が生きている件を受け入れようとするナトレ。
これで一件落着かに思えましたが、またもや紗衣奈が登場してぶち壊していきます。

いやー本当に何がしたいんでしょうね。
カイじゃないですけど、私もちょっとムカついてきました。

目的は見せなくてもいいから、せめてパンツは見せろと(

Reiri Last Episode それがわたしの全力で叶えてみたい夢ですから

レイリが大統領の隠し子である情報が流れて戦争の鍵として利用されそうになる。
帝国大使館で保護するも、カイたちが留守にしていた間にレイリはアルカディアに連れ去られる。

ミリィ、CSS、レイヴンたちの協力を取り付け、レイリ奪還を目指して動く一同。
立ちふさがる民警やナダルは協力者に任せ、紗衣奈と戦いを繰り広げるカイ。

レイリに気を取られて隙を見せてしまった紗衣奈はそこをカイに突かれて敗北。
心臓を撃ち抜かれた紗衣奈は死亡し、カイはここに念願だった紗衣奈への復讐を果たす。

カイとレイリ、新たな生きる目的を二人は未来への一歩を踏み出していく……。

内容としてはかなり王道的でしたね。
ラストのバトルも短めではありましたが、しっかり見応えがあったので良かったと思います。

が、レイリが連れ去られた場面は「えぇ……」と正直かなり白けました。
「レイリ救出&紗衣奈とのバトル」というシチュエーションを作りたかったのはわかりますが、過程が雑すぎです。

ここは紗衣奈が知略を巡らせてレイリを華麗に奪い去っていった方が絶対良かったですよ。
それでラスボスとしての貫禄も出せたと思いますから、ここはもっと詰めるべきだったんじゃないかなと。

ただ、その後のパーカー大統領の対応は素晴らしかったですね。
レイリが拉致された件に関して一切感情的にならず、むしろ「私に全責任がある」と言い放ってきます。

……こんな対応されたらそりゃ付いていく人もいるよなと。

パーカー大統領のカリスマを一気に実感させられる、秀逸な場面だったと思います。

カイと紗衣奈のバトルに関してはまあ良かったのではないかなと。
途中で「カイはヒュームとヴァンプのハーフ」とかいう驚きの情報がサラッとぶっ込まれたのには驚きましたがw

カイの目的はここに果たされたわけですが、平和的な解決を見たいという気持ちもやっぱりあり。
紗衣奈の考えや心の深い部分も描かれていないので、その辺りは他の√に任せた形でしょう。

世界も全然平和になっていないのも気になります。
まあそのレベルの解決はミリセント√でするのかなと思いますが。

とはいえ、センターではないレイリの√でわだかまりのないラストを描いてくれたのは素直に嬉しいですね。

こういうのは「紗衣奈が行方をくらませ、足取りが掴めないままEND」みたいなオチが多いかと思うんですが、
レイリ√は紗衣奈との決着をしっかり描いていました。ここは本当に良かったと思います。

ナトレが殺されてしまったのはしこりが残るところですが、
カイとレイリが夢に向かって歩いていくラストは読後感が良く、総合的には満足できるデキだったかなと。

ラストのレイリを見送るCG、良いですよね。

新たな目標に向かって進んでいく彼女を応援したいと思えました。

レイリ√ シナリオ評価:B

ソフィア√

Sophia First Episode その時は――私が彼を殺します

ソフィアのカイへの信頼は、カイが隠し持っていたノーブルによるものだと発覚。
ソフィアはそのことについてカイへ問いただし、自身にかかったノーブルを解除させ、カイへの信頼が本物かどうか確かめる。

カイへの気持ちに変化が現れなかったソフィアは彼への信頼が本物であると確証を得る。
それと同時に、カイへの想いが溢れて抑えきれなくなってしまう。

だがこのタイミングでカイは紗衣奈に身柄を拘束され、ソフィアへの交渉の材料とされてしまう。
自身の信念を取るか、感情を取るか。ソフィアが取るべきものは決まっていた。
しかし、彼女はカイを見捨てることはできず紗衣奈の要求を呑むことに。

カイを解放する代わりにアルカディアの仲間を解放しろと迫る紗衣奈だったが、
カイのことを信頼していたソフィアは土壇場でその要求をはねつける。

ソフィアの信頼に応えたカイは単身で窮地から脱出し、無事にソフィアと合流する。
交渉のカードを失った紗衣奈は留まる理由がなくなり、その場から姿を消した。

ソフィアとカイが紆余曲折の末に本当の恋人同士となる回でした。

前半の一旦下げてから上げるのがいいですね。

カイのノーブルで作り物の信頼である疑惑が出てしまったわけですが、
ソフィアのカイへの信頼が本物であり、それを自覚したソフィアが急に照れてしまう。

いやー非常に可愛らしかったですよね。
自分の気持ちに疎いソフィアがカイへの本当の信頼に気付いてどうしていいかわからなくなってしまう様子……こんなのご飯3杯は余裕でいけますね。

特に、ソフィアがカイの胸倉を掴むあのシーン——

底の見えない女であったソフィアが感情を露にして、心の底から心配してくれている。

あまりにもエモすぎる。

常に利己的で冷静に立ち回っていた秘密警察のトップが、
一人の男の身を案じた恋する少女となる。

このギャップにやられない男は地球上には存在しないでしょう。

その後、カイへの想いを自覚したソフィアはアリーシャに弄られまくるわけですが、これも最高でした。

動揺してからかわれていることに気付かないソフィア可愛すぎる。

この二人のやり取りはもうくっそニヤけてしまいましたね。一生見ていたいと思えました。

そんな感じでソフィアとカイの関係は一段上に昇華されましたが、
ここでまたしても紗衣奈が登場します。

……この子、馬に蹴られて死にそうな立ち回りをしていますが大丈夫でしょうかw
他人の恋路を邪魔する人はロクな目に遭わないのでありますよ。

まあそんなことはともかく、紗衣奈がソフィアに接触してきた理由は気になりますね。

Sophia Second Episode 私と共に覇道を歩んでくれますか

ソフィアの過去と目的が明かされ、ソフィアたちが連邦政府に反旗を翻す準備を進めていく……。

ソフィアがルーラー帝国皇族の生き残りだったのは普通に驚きましたね。
まさか国家への反逆を目論んでいたとは。

そのためにアルカディアとすら手を組むのは、目的のためには手段選ばないソフィアらしいなと思いました。

アリーシャがソフィアに忠誠を誓う理由も明かされ、ソフィア関連の詳細は大方明かされた気がします。

後は個人的にはギローイの掘り下げをしてくれると嬉しいですね。

  • ソフィアが起こした反乱にギローイはどう立ち回るのか
  • ギローイはなぜ民の命を紙くずのように扱い、かつての理想を失ってしまったのか

彼女にも何か背景があるはずなので、しっかり描いてくれることを期待します。

ちなみにこの特徴的なフレーズ、日露戦争前におけるクロパトキン大将の発言が元ネタとなっています。

日本兵三人にロシア兵は一人で間に合う。
われわれは13日間に40万の軍隊を満州に集結できる。
これは日本軍を敗北させるに必要な兵力の三倍である。
来るべき戦争は単に軍事的散歩に過ぎない。

コルサコフやスルツキーといった姓の人物がいることから察してはいましたが、連邦のモチーフは語るまでもないですね。

Sophia Last Episode 奇遇ですね。私もです

ソフィアは連邦政府に反乱を起こし、連邦と講和条約を結んで新生ルーラー帝国を誕生させる……。

連邦とソフィアたちとの戦争はなかなか見応えがあって良かったですね。

中でもカイと紗衣奈が一時的にではありましたが、協力して戦う展開は熱かったです。

二人が共闘するシーンは見たかったので、
そこをしっかり用意してくれていたのはシンプルに嬉しかったですよね。

でもですね、カイ君。

はい、アウト!w

後は帝国の援軍をミリィとカイが取り付けるシーンも良かったですね。

頑ななヴィルカール帝国皇帝に対して、諦めずに粘り強く交渉していく。
そんなミリィの姿勢には胸を打たれました。

序盤の私のミリィに対する印象はソフィアも言っていた「現実が見えていないお花畑のお嬢様」でしたが、
こうもミリィの信念と意志の強さを見せられてしまうと、私も考えを改めざるを得ないですよ。

友の信頼に応えるため、自らの理想とする世界への一歩のために、
時には自身を人質として利用し、時には直接交渉に赴く。

積極的に行動していく前向きな姿勢には、素直に尊敬の念が浮かびましたね。
「彼女ならあるいは……」と思わせられる確かな魅力、カリスマのある人物として描かれていました。

一方で気になる点も二つほどありまして。

一つ目は「ギローイ書記長の掘り下げが全くと言っていいほどなかった点」ですね。

なぜ彼女は連邦で恐怖政治を敷くようになったのか。

先に述べたような彼女の背景への疑問、それに対する解答が何も描かれなかったので、これには正直失望しました。

彼女にも何か言い分があるのではないかと考えているので、
それを知ることができなかったのは残念でならないです。

加えて言うなら、連邦側の動きがほとんど描かれなかったのも物足りないですね。

ソフィアが連邦に歯向かったことで起こった連邦側の混乱、その具体的な描写を見たかったです。
反乱を知ったときのギローイの反応が見たかったので、そこはしっかり描いてほしかったよなーと。

あと共和国連邦なので連なる国々の長とかも色々いるはずなんですけど、
ギローイだけしか出てこないのも不自然というか、違和感がありますね。

現実の某連邦みたいに「独裁体制だから」ということなのかもしれませんけど……w

まあ一番言いたいのは「ギローイが何を考えていたのかわからない」ということです。
その一端だけでも描いてくれれば、彼女の真意について考えを巡らせることもできたと思うんですが……。

二つ目は「ソフィアの戦闘力が異様に高い点」ですね。

あのシーンは驚かされたので面白かったんですけど、
正直「え……?」って戸惑う気持ちの方が強かったです。

足が悪いフリをして周囲を油断させる。

情報戦を得意とするソフィアがその行動を取ることは頷けますが、傍にいるカイを騙し通せるとはとても思えず。
カイはヘンリエッタの歩き方から、彼女が元軍人であることを即座に見抜いたわけですからね。

まあソフィアが巧妙に隠していたんだろうなとは思いますが、それでも何かしらの違和感であるとか、
そういうのをカイは感じ取ったような気がするんですよね。

あとソフィアがなぜあそこまで強いのか。
これに対しての具体的な説明がないのも個人的にはダメでした。

私は「強さには根拠が必要」と考えているので、根拠のない強さは受け入れられないんですよね。

「実は鍛錬だけは毎日欠かさず行っていて、カイがソフィアの元へ行ったとき、たまに彼女が汗をかいているときがある」

みたいな描写があれば、まだ想像で補完できたので良かったんですけども。

アリーシャやオレグが強い理由はしっかり用意されているだけに、
ソフィアの強さは唐突にそれだけ出てくるので、不自然さが際立ちますよね。

私はこういうのは大好物なので上手く描いてくれたら褒めちぎっていたんですが……正直もったいないなと思ってしまいました。

CGはカッコよくて最高なんですけどね。

ラストエピソードの所感はそんな感じで。

ソフィア√ シナリオ評価:A

……まあ上で色々述べはしましたが、
私がこのルートをプレイして強く思ったのは「やっぱり戦争はしてはいけないな」ってことですね。

あまりにも人が死にすぎます。

「ナトレ、ルーナ、オレグ、ヤーコフ、ナダル、紗衣奈、ヘンリエッタ」
ざっと数えるだけで7人死んでますからね。

略奪や拷問といった命が奪われる以外の悲惨な出来事も数多く起こっています。

このソフィア√は戦争が生み出す闇を克明に描いた√でしたね。

両親の遺言を胸に秘めていたソフィア。
3つの種族が共存できる理想の国家のために彼女が奮闘する姿には感銘を受けましたが、
その目的のためにあまりにも多くの血を流してしまいました。

理想のためには多少の犠牲は致し方ないと思いますが、
平和的な解決ができるのであれば、それに越したことはないですよね。

……そうです、それをしてくれそうなヒロインがこのゲームにはあと一人残っているんですよ。

これは期待してもいいやつでしょうか?

ラストヒロイン、頼みますよ!

ミリセント√

Millicent First Episode これが――わたしの選択です

爆破テロの犯人捜査から始まり、帝国が隣国に戦争を仕掛け、ミリィの過去が明らかになる……。

その選択はダメよ、ミリセントちゃん!!

せっかくミリセント√に綺麗に繋げたのにギャグみたいになってしまいました……w

まあそんなことはさておき、ギャグ、シリアスともに面白いレベルの高い回でしたね。

日常シーンは生涯ゲームがかなり面白くて笑えました。

中でもソフィアが革命に失敗したりレイリが政治家になるなどのくだりは、
彼女達の個別√をプレイ済みであるからこそ笑えるものになっていて、ここは面白いと同時に上手いとも思いましたね。

そしてシリアスについては、終盤のミリィの過去に見入ってしまいました。

彼女が過去に会っていたのはカイではなく紗衣奈であったり、
ミリィの母親がとんでもない邪悪であったり、
その母親を殺していたのはカイで、ミリィのその記憶を封印していたり……。

怒涛の情報開示にはとにかく圧倒されました。

ここで「アンラベル・トリガー」のタイトル回収をしてきたのも熱かったですよね。

ミリィが銃を向けるところでFirst Episodeは終了ですが……この終わり方はズルい!

Millicent Second Episode あくまでも同じ立場で、わたしと共に歩んで欲しいから

ヘンリエッタが脱獄し、カイとミリセントが恋人関係へ発展していく……。

今回はあまり動きはなく、次のエピソードへの布石って感じがしましたね。

ナトレが早々に退場してしまった風に描かれていますが、後でまた出てくるのではないかと予想しています。

あと、ラストでソフィアに捕まってしまったのは驚きましたね。

ここでソフィアの最後のCGが登場。

ここでソフィアが強い理由をサラッとでもいいから説明してくれると嬉しかったんですが、残念ながらありませんでした。
これに関してはもうダメかもしれませんね……w

まあそれはともかく、ここから事態が大きく動きそうで楽しみです。
どんどん行きましょう。

Millicent Third Episode それこそがわたしの……皇女としての最後の務めだと思いますから

戦争を食い止めようとミリセントたちは尽力するも、
合衆国と連邦の秘密協定に連合が組まれ、いよいよ戦争が起こりそうになる……

ミリィは色々手を尽くすわけですが、
それが実を結ばずに着々と開戦への未来に向かっていくのは見ていてなかなか歯痒いというか、辛いところでしたね。

ただ、1点指摘させていただくなら、私はギローイ書記長との会談はするべきではなかったのではないかと思いましたね。

連邦はコード191の存在は絶対に認めないでしょうし(実際認めなかった)、
連邦側に「帝国がコード191について把握している」という情報を渡してしまうので、正直下策ではないかと。

まあミリィはギローイの良心、一縷の望みに懸けたいという思いはあったのかもしれませんが、
身内ですら粛清しまくる暴君に、そんなものを期待しても仕方がないよねと。

戦争を避けることは叶わずとも、ヴァンプを守るために帝国側に付くメリットを提示して逆に連邦を引き込むとか、
現実的な立ち回りをしていかないと厳しいかなって気もしますし。

あのタイミングでの連邦のトップとの会談ってかなり重要な局面で、
ミリィはあらゆる策を講じて戦争を止める働きかけをする必要があったと思うんですけど、
このシーンは妙に短くすぐに終わってしまったので、違和感が強かったです。

ミリィとギローイの舌戦を見てみたい気持ちもあってそこを期待していた部分もあったのですが、
「そういう方向に持っていきたくない」という書き手のメタ的な意志に阻まれてしまったようにも感じられて。

総じて、この場面は色々不自然な点が多かったように思えました。

シナリオの流れに関しての所感はそんなところですが、各場面においてはなかなか驚きの多い回だったと思います。

黒幕が杏野雲であったことは納得を抱きつつも驚きましたし、
エステル=佐藤大使は完全に予想外で、青天の霹靂でした。

いや、これ予想できた人います?w

エステルは重要な場面でいないことが多かったので、同時にいないキャラ……と考えていくと推測は可能かもですが、そもそも「エステルが変身のレガシーを持っている」という前提に気付かないと出てこない推測ですし。

なかなか意外な角度から切り込まれた感じで、面白かったですね。

これは余談ですが、私はエロゲのプレイ本数が地味に増えてきたのもあって、
謎が明かされたとき、私の予想とそこまで外れないことが多くなってきています。

なので、こういった完全に予想外のものを見せられるとすごく嬉しい気持ちになるんですよね。
「ああ、そうきたか……!」と高揚してしまうといいますか。

自分は考察とか得意ではなくむしろ苦手なので、そういった能力が高いとは全く思っていませんが、
経験である程度わかってくるものというのはやはりあって。

なのにそれを外されるというのは、良い意味で裏切られた感じがしてすごく嬉しいです。

最近の私はノベルゲームに刺激や驚きを求めている節がありますので、
その期待に応えてくれている本作は、私としてはすでに高評価です。

……個人的な話をして申し訳ありません。本作の感想に話を戻しましょう。

いよいよ戦争が始まりそうで、物語は佳境に突入していきますね。
最後まで見届けていきたいと思います。

Millicent Last Episode 空が青くても、黒くても、わたしは手を伸ばします

ヴィルカール帝国民の命を少しでも守るため、
合衆国と帝国の戦争の落としどころについてミリセントが死力を尽くす……。

グランド√のラストエピソードということで、なかなか気合が入っていましたね。

徐々にクライマックスに向かっていくストーリーはもう先が気になって、クリックする手が止まらなくなりました。

ここはやはりカイと紗衣奈の一騎打ちが熱すぎましたね。

心が読める紗衣奈はレガシーのせいで苦しんでいたわけですが、
「嫌ならレガシーを封じればいい。それを活用していたのは紗衣奈自身だ」というカイの正論パンチが炸裂します。

これには思わず笑ってしまいましたね。

この指摘を受けた紗衣奈は案の定ブチギレますねw

ここにきて彼女の懊悩、人間らしさが浮き彫りになっていきます。

小倉結衣さんの叫び声、助かる。ありがとうございます。

そしてこの戦闘に敗れた紗衣奈なんですけど、彼女の処遇に関しては正直モヤっとする感じですね……。

カイのノーブルで記憶を改竄された紗衣奈は、
今までのことを完全に忘れさせられて、まるで別人のようになってしまっています。

彼女が孤児院にいた頃に語っていた自身の一番大事なもの、すなわち「記憶」をカイに奪われた形ですね。
自分を構成する記憶、それがなくなるということは紗衣奈にとっては「死」を意味すると同義であり。

「紗衣奈を殺す」というカイの復讐は、疑似的にではありますがここに果たされました。

紗衣奈が今までしてきたことを考えるとこの処遇は妥当かもしれませんが、
それは残酷ではないかと思ってしまう気持ちも正直あって。

何かしらの形で元の紗衣奈を救う方法はなかったのかなと、複雑な気持ちになりましたね……。

紗衣奈と和解するIFストーリーとか、何かしらで出してくれてもいいのよ(チラッ

一方でミリセントの種族間の融和、理想の決着に関しては、
「理想を捨てて現実を取る」という方向に落ち着きましたね。

まあ彼女一人が背負うにはヴァンプの業は重すぎたので、
「結局理想を諦めるのか」と責めるべきではないと思っています。

一人でも多くの民の命を救うために動いた彼女は高潔な精神の持ち主であり、
本編でも述べられていたように、皇族として相応しい、人の上に立つべき人物と言えるでしょう。

ミリセントに関して印象に残ったシーンはやはり、
実の父である皇帝に向かって「アンラベル・トリガー」を撃ち込むシーンです。

タイトルの名を冠した銃弾でヴィルカール帝国皇帝を殺す。

このシーンには重要な意味が込められていると考えます。

このシーンに込められた意味は本作のメインテーマにもなっていると感じていて、
それはおそらく「過去との決別」なのかなと。

強硬派となってヴァンプの優性を主張し続け、民を先導したヴィルカール帝国皇帝を葬ることは、

  • ヴァンプが抱いてきた「自身は上位種族である」という幻想を打ち砕くこと
  • ミリィが次の皇帝となり、ヴァンプの新たな未来を切り拓いていくこと

この二つを意味しているのかなと。

ヴァンプの未来のために過去と決別する、理想を捨てて現実を取る。
「過去を乗り越え、未来へ進む」というミリセントの決意が込められていたのではないかと推察します。

しかし、心の拠り所であった立派な母親の像が崩れ、父親までも手にかけなければいけなくなる。
……ミリィはなかなかに酷な人生を歩んでいますよね。

印象に残ったシーンはそんな感じで。

気になったところは正直色々あります。

  • 複数の国家が共謀してジェノサイドを行う狂気具合
  • 人権ガン無視の悪法が制定されている帝国の闇の深さ
  • 人道に反する人体実験の実施、大量破壊兵器の開発をし続ける合衆国

そんな感じで色々ありますが、
アントリの世界は人権という概念が浸透していなさそうなので……まああんまり言うのも野暮なのかなと。

現実世界を舞台にしていたらアレですが、オリジナル世界みたいですしね。

ミリセント√の所感はそんな感じで。

ラストシーンではカイの新たな約束も描かれ、
紗衣奈の亡霊を追うこともなくなりましたね。

カイの「過去との決別」を示して新たな未来を提示する、良い締め方だったと思います。

まさに「失くした過去を乗り越え、未来へと歩む物語」でしたね。

ミリセント√ シナリオ評価:A

主人公“榊カイ”の感想

本作の主人公“榊カイ”は、幼い頃に交わした楪紗衣奈との約束を果たすことを目的に生きており、
仲間を殺した彼女に報いを受けさせるべく、紗衣奈を殺すことを至上命題としています。

自分本位で目的を見据えて行動するその姿はある意味安定しており、
自分の軸がブレることはほとんどありません。

「精神的に安定している裏表のない主人公」なので、途中までは見ていてあまり面白みを感じなかったのですが、
「二面性のないカイの素直な言動は紗衣奈の拠り所となっていた」という事実が終盤で明かされ、驚かされましたね。

カイの性格には意味があり、紗衣奈の特別な存在として納得のできる理由となっていました。

とはいえ、ヒロインたちと関わっていく中で「人を信じるのも悪くない」と思っていくなど、
成長している部分もありますので、人間味もしっかり感じられます。

「魅力的な主人公」という感じではありませんでしたが特に不快に感じる部分もなかったので、
キャラクター造形としてはまずまずだったかなという印象です。

総評

『アンラベル・トリガー』は榊カイとヒロインたちの生きる目的や、
3つの種族に分かれた国家と人々の争いを描いた作品でした。

全体としては「非常に丁寧に作られた良作」という風に感じました。

「ヒューム、ヴァンプ、アニマーの設定、種族ごとに分かれた国家、緩衝地帯となっているフロスト中立特区の役割」などの土台の設定がしっかりしており、シリアスで重厚なシナリオを描くに耐えうる規模感と深みが用意されていたと思います。

国家間の政治的な駆け引きや各国の派閥争いもかなり気合を入れて描かれていた印象で、
首脳や大使の対談シーンもしっかり緊張感を作り出せており、この辺りの描写は非常にレベルが高かったように思えます。

「種族の対立」という難題に挑戦していたのも個人的には評価できるポイントです。

私はわかりやすい回答を用意できないこのテーマを扱うのはそれだけで至難と考えているので、
「世界平和、種族の融和」という大きな理想を掲げるミリセントには期待させられましたね。

結果は本編の通りですが、このテーマの難しさについて改めて考える機会をいただいた感じで、
それだけでも本作をプレイした価値があると言えます。

また、ヴィルカージ戦争で家族や仲間を失った者たちの過去など、
人物の背景も脇役含めて練られていたように感じました。

ジーミイル共和国連邦やギローイ書記長関連の掘り下げ不足、
序盤のストーリー展開、違和感のある文章など気になる点も多いですが、
総合的には高い完成度を誇っていたかなと。

「シンプルに面白いシナリオゲー」という感じでしたので、
気になる方はぜひプレイしてみてほしいですね。

点数

アンラベル・トリガー
シナリオ18
キャラ16
音楽18
システム・演出19
全体の完成度17
合計 88点 (各項目は20点満点)

商品リンク

おまけ

マスターアップイラスト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (2件)

  • Cyberさん、お疲れ様です。いつもお世話になっております。えりんぎです。まず『アンラベル・トリガー』の話に入る前に感謝を。私はCyberさんのブログを大変参考にしておりましたので、ブログの復活、心待ちにしてました。憧れのCyberさんのブログに初コメさせていただけることを誇りに思います。今後ともよろしくお願いいたします。

    さて、肝心の『アンラベル・トリガー』の話です。私も自分のブログに感想を書きました。素晴らしい作品だと思います。一方、Cyberさんが仰るように、本作は「良作」どまりであり、所謂「名作」「傑作」級になれなかったと個人的には評価しております。こう言うと誤解されてしまうかもしれませんが、物語の作り自体がお利巧過ぎるのですよ。工藤先生も分かっているのだと思います。実質前作の『創作彼女の恋愛公式』でも思ったのですが、ストーリーラインが分かりやすい反面、他強力な有名作品と設定など要所要所が似ている(=シンプルに面白いとも言えます)と感じます。

    しかし、「普通に面白い作品」が今は求められているのかもしれませんね。実際、私は本作に悪い感情をほとんど持ちませんでした(点数という評価基準では77点を点けました)。現時点で、ビジュアルノベル始めて間もない方には特に面白いと感じる作品かと思います。そんなところでしょうか。

    本当はさらに中身について語りたいです。しかしコメントが長大になってしまうので、これ以上は自重しますw

    ご迷惑でなければ、貴ブログに今後ともコメントさせていただきます。その際は是非、Cyberさんの知識に富んだ返信をいただけると大変嬉しいです。以上です。長文失礼しました。

    • えりんぎさん、お疲れ様です。Cyberです。いつもお世話になっております。

      私の長文感想は読むだけで大変かと思うので、えりんぎさんにコメントしていただける度に恐縮な気持ちでいっぱいになります。いつも本当にありがとうございます。こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します。

      えりんぎさんの仰る通りで、概ね私も同意見ですね。
      『アンラベル・トリガー』は有名作品の良いとこ取りをして、堅実に面白く仕上げた作品という印象でした。
      設定などが似通っているので既視感を覚えますが、その分物語にすんなりと入っていけるというか。
      ある種のプレイのしやすさ、間口の広さなどを重視した結果の作風なのかなと思えましたね。

      えりんぎさんと中身について語りたいのは私も同じですw
      えりんぎさんの感想は拝見しましたが、「紗衣奈を掘り下げる真グランド√」は「私も読みたい!!」と思いましたからw

      アントリについてだけでなく、色々なエロゲについて語り合いたいなとも思っております。
      もしそういった機会があれば、お付き合いいただけると嬉しく思います。

      迷惑どころかありがたい限りなので、じゃんじゃんコメントお願い致します

      私なんてまだまだ浅学な身なので、恐れ多いです。
      ただ、いただいたコメントには全力で返信させていただきます。
      少しでもえりんぎさんの参考になるようなコメントができていれば、幸いでございます。

      以上となります。ありがとうございました。
      長文失礼致しました。

コメントする

CAPTCHA


目次