『絆きらめく恋いろは』の感想になります。
『絆きらめく恋いろは』は2017年にCRYSTALiAから発売されたエロゲです。
略称は『めくいろ』ですね。
主人公“三城刀輝”が幼なじみの上和泉桜夜と再会し、止まっていた時が動き出す物語。
※ネタバレ全開ですのでご注意ください。
『絆きらめく恋いろは』のネタバレ無しレビューはこちらのサイトに掲載しております。
シナリオの感想

共通パート
なかなか面白いですね。
構成としては王道的ですが、刀輝のトラウマを描いて桜夜の刀を打ったのはちょっと踏み込みましたね。
刀輝は一体何を斬ろうとしたのでしょうか。ここはシンプルに気になるところです。
本作は桜夜の√がロックされていて、公式がそれを明確に示しているので、グランドヒロインは桜夜なのでしょう。
とはいっても最後のプレイを強制せず、いつでも桜夜√を解放可能にしているのは配慮が利いていてありがたいですね。気になる方はすぐにプレイできますし、良いシステムだと思いました。
共通は刀輝がみんなと知り合って、叢雲演舞祭に向けて誰を本格的にサポートするかってところまでですね。
内容は悪くないと思いました。普通に面白かったです。
ヒロインは椿としおんが好きですね。
椿の圧倒的強者感、大好きです。普段は一刀、本気で二刀流とか厨二大好きな私にはたまりません。

あと、エッチな話になると赤面してしまうところが可愛かったです。

しおんも可愛いですね。
シンプルに可愛い女の子という感じで好きです。ボイスも好みなのでエッチシーンが楽しみ……!

本作の個別√は叢雲演舞祭までの準備、内容、結果、その後をどの√でも描いていくことになると思いますが、
他のヒロインとどう差別化してくるのか。そこに注目したいですね。
そもそも武芸科ですらないフリージアの√をどうするのかも、地味に気になるところですw
まずはフリージア√から参りましょう。
フリージア・ゴッドスピード√

刀輝とシアでしおんのサポートをするも、準決勝で刀輝とシアがぶつかってお互いに認め合うお話。
「尺が短い、内容薄い、恋に落ちるの唐突」という、粗の方が目立つシナリオでした。
技巧科のヒロインを用意したかったのでしょうけど、まあこうなっちゃうよねって感じで……w
刃道って「武芸科×技巧科」でチーム組んでぶつかり合うスポーツなので、刀輝とシアをくっつけるのは元々無理がありました。
正直この√はライター殺しだと思いますね。これは書くの相当難しかったと思います。
とはいっても決勝戦をカットするのはさすがに擁護できないので、C評価としています。
準決勝はかなり盛り上がっていて、そこは本当に良かったんですけども。

ただ、ここで完全に燃え尽きてしまいましたね……w
「決勝戦は他の√で!」みたいな感じでした。続きはWebで!みたいなw
それでは気を取り直して、お次は椿√に行きましょう。
朱雀院椿√

椿が葵との戦いを通じて、自身の殻を破るお話でした。
なかなか良かったと思います。
椿は好敵手である葵のまっすぐな思いを受け、自身のオリガミを叩き折られたことで自信を喪失してしまいますが、傍で支えた刀輝のおかげで“朱雀院のあり方”からの脱却に成功、自分だけの刃道を追求する方針に。
この流れが王道的で非常に熱かったですね。
「挫折からの復活」
スポ根にはこれが求められているわけですが、
椿√は見事にやり遂げていましたね。素晴らしいです。

また、椿と葵の関係が昇華されたのも良きでした。
お互いに本心を晒してぶつけ合ったことで、本音を語り合える仲になる。
まさに「雨降って地固まる」でしたね。

少年漫画のような展開で、非常にわかりやすいストーリーだったのもグッドでした。
一方で「椿の刀鍛冶としての描写が足りない」という部分が少し目に付きました。
新たなオリガミのヒノトリに関して椿と刀輝が意見をすり合わせる場面がありますが、
あそこで少しだけでもいいので、意見交換を具体的に描いてほしかったですね。
「え、椿ってそんなことも知ってるの……? すげぇ!」と驚きたかったんですよ。
本編の言葉をお借りするなら「椿の頑張り」を見せてほしかったですね、ここで。
ここだけは惜しいなと思いました。
とはいっても全体的には良かったので、シナリオ評価はAランクとしています。
決勝戦はまたしてもカットされましたが、椿√で描くべき内容はあれで十分だと感じたので、なくても問題はなかったかなと。
決勝戦で一番の盛り上がりを持ってくるのが、物語の構成としては正しいと思いますが……w
まあそこまでの過程が良かったので、不問ということで。
結果的に楽しめて面白ければ、なんでもいい私です。
それにしても続編の『椿恋歌』ではこの続きが描かれるんですよね。早くも楽しみです。
藍原しおん√

前半と後半でかなり趣が異なるシナリオだったと思います。
前半はしおんの演舞祭までの頑張りを描き、刀輝とシアがしおんのオリガミ作りに励み、
迎えた演舞祭本選でしおんは椿と当たって負けてしまう……という内容でした。
ここまではわりと普通というか、大きく盛り上がるシーンは見られず。
「椿が他の√含めて未だに無敗なのすげぇ……」とか少しズレた感想を抱いてましたw
それ以降はガラっと変わって、「刀輝の秘められた過去・彼に潜む化妖が姿を現す」という、
今までボカされていた部分の核心を描いていました。
ここがとにかく熱かったですね。
特にしおんとマガツミの戦闘が熱すぎて、めちゃめちゃ見入ってしまいました。
刀輝の魂と身体を乗っ取ろうとするマガツミ、それを全力で阻止しようとするしおん。

こういうの大好きです。
このゲームに求めていたところが出てきたようで、めっちゃアガりましたね。
こういう熱い展開大好きマンな私です。
そして「刀輝の身体を奪った後はどうするのか?」というしおんの問いに、
マガツミは「上和泉、三城、藍原の一族を血祭りに上げ、それを終えたら他の人間も殺す」と告げます。
それを聞いたしおんはいよいよ覚悟を決めて、マガツミにこう告げるのです。

「人に刀を向けるのが怖い、傷つけたらどうしよう」と怖気づいていたしおんが、
ここにきて、ついに「本気の覚悟」を見せたわけですよ。
これは本当に格好よすぎて痺れましたね。
極限の状態で固まったこのしおんの覚悟には「愛する人の尊厳を守るため」という想いも込められており、
刀輝への深い愛を感じられて最高でしたね。
演出もかなり力が入っていて、きちんと盛り上げることに成功していました。
文句なしの名シーンだったと思います。
シナリオ評価は後半だけで付けるならSランクでも良いのですが、
前半がやや盛り上がりに欠けていたのでAランクとしています。
あと「ことが終わってから駆けつける味方」という流れを2回続けていたので、そこでも少しマイナスとなってしまいました。「都子とマガツミの戦闘後に来る、しおんとマガツミの戦闘後に来る」といった感じで。
まあ気になった点はそれぐらいですね。
刀輝の尊厳を守るため、周囲の人を傷つけないために粉骨砕身の覚悟で戦ったしおん。
彼女の「刃道」はとても優しくて、格好よかったですね。
上和泉桜夜√

面白かったですが、粗も目立つ√だったかなと感じました。
桜夜√は準決勝までの前半と、決勝以降の後半にわかれます。
前半はそこそこ良かったと思います。
刀輝と桜夜がなぜ惹かれあったのかはいまいちピンとこなかったですが、
「試合中に刀輝が桜夜への想いを暗に伝えた結果、桜夜が調子を取り戻す」
この流れは非常に良かったなと思いました。

そして刀輝が桜夜のオリガミを新たに作って、椿との決勝戦へ。
途中までは見応えがあって良かったのですが、桜夜が暴走した辺りでキナ臭くなりました。
他の√で消えていた綾瀬が存在していたこと、綾瀬とマガツミの謎のやり取りの描写から、
「何か起こるだろうな」とは思っていましたが、正直水を差されたような印象が強かったです。
だってこのゲーム、ここまでまともに決勝戦を描いていないんですよw
「ちゃんとした決勝戦を見たい!」と思っていたので、若干白けてしまいました。
ただ、このときの椿の奮闘が素晴らしかったので、そこで少し持ち直しましたね。
暴走した桜夜に正面から立ち向かって抑えつける、学園最強の剣士。

いや、格好よすぎる……!
椿さん、それは惚れますって!!
その後は桜夜と椿がぶっ倒れているところに都子が暗躍。
桜夜の妖刀を奪った都子は目的のために彼女を殺そうとする、わけですが。
椿が都子の凶刃を食い止めます。

いや、格好よすぎる……!!
椿は惜しくも都子に敗れてしまいますが、桜夜の命をギリギリのところで繋いでくれました。
最高にカッコよかったですね。
そして刀輝と都子の最終決戦、刀での殺し合いが繰り広げられます。
ここは盛り上がってはいましたが、ぶっちゃけ「都子が状況を利用して個人的なエゴを押し付けてきているだけ」といった感じでしたので、どうにも没入できなかったというか、微妙な心境になってしまいました。
そもそも刀輝は剣士としての鍛錬を積んでいないので、はなから都子の相手が務まるはずもなく……。
なぜ都子がこれを強行したのか。理解不能ですね。
マガツミが都子を掌握しようとしてそれに失敗する描写があるので、都子は乗っ取られているわけではありません。
自分の意思でこれをやっていることは明白です。
だからこそ説明が付かない。刀輝は最強の剣士ではないんです。都子を殺すに足る実力者ではないんですよ。
真剣勝負の殺し合いをして、本気で戦った相手に負けて、殺されたい。
そんな独特の矜持を持つ都子さんに、私が言えることは一つだけです。
生まれる時代、間違えてますよ?
彼女はもしかすると人生に絶望して、本当に死にたがっていたのかもしれません。
「自分より強い相手いない説」が濃厚となり、その絶望が彼女を蝕む刃となっていたのかも……?

まあそんな都子のことは一旦置いておくとしても、
開発陣としては「白狐の呪い・上和泉の因縁の決着」を描きたかったのだとは思いますが、
その舞台を用意することに完全に失敗しています。
刀輝は羅刹に身を任せて無双しているだけで、刀輝自身の活躍とは言えない。
桜夜も倒れて太もも刺されただけ。
二人の光る場面がなかったのが痛いです。
- 刀輝と桜夜が活躍しない
- 呪いたちは都子を御しきれずに好き放題される
- ひばりは力が及ばずに結界を破壊できない
- しおんは霊刀を投げ入れただけ
改めて列挙してみましたが、このシーン、魅せてくるキャラが誰もいないですね。
ここまでで一番活躍していた椿が、やっぱりMVPな気がするなぁ……w
ひとつフォローするなら、最後に消えていく綾瀬の描写はすごく良かったです。
綾瀬は三城の守り神として、刀輝を守ってくれた
そういったポジティブな解釈もできる描写となっていました。
綾瀬はマガツミと一体化して闇落ちしていましたが、実は刀輝を守るために動いていた説も浮上して。
良いモノと悪いモノのどちらにも捉えられるような描き方をされているんですよね。
本作の神や化妖に対する解釈としっかり合致させていて、ここの描き方はすごく上手いなと思いました。
神も化妖も、人の解釈次第で如何様にも変化する。きっとそういうことなんですよね。
私は最後に見せてくれた綾瀬の笑顔を信じたいと思います。

まあそんな感じで桜夜√は「良い点も確かにあったが、悪い点の方が目立つ」といった評価です。
なので、シナリオ評価はBランクとしています。
クライマックス、そこに至るまでの舞台の作り方がマズかったですね。
もう少し上手く運んでほしかったところです。
主人公“三城刀輝”の感想

本作の主人公である三城刀輝は叢雲学園に通う技巧科の生徒。
刀を打つことに嫌悪感を抱いてしまう体質の持ち主でしたが、
「自身に宿る白狐の呪いが、刀輝の刀作りを妨害していた」というのが真相でしたね。
幼い頃に桜夜を斬ってしまったのも呪いのせいなので、刀輝の人生はかなり呪いに狂わされています。
ただ、これが明かされるのはしおん√と桜夜√のみでした。
そういえば椿√の刀輝は呪いが残っているんでしょうか。……プレイしたところなのに覚えてないぞ(汗)
まあFDの椿恋歌で解決するでしょう! 多分w
そんなことはさておき、本作の主人公はヒロインを支える役回りなので、あんまり活躍する機会はなかったかなと。
主人公にガンガン活躍してほしい!というタイプの方は、合わないかもしれません。
『めくいろ』は戦う女の子たちを眺めて楽しむゲームでしたね。
総評
『絆きらめく恋いろは』は近未来の日本を舞台に、
「刃道」という真剣を打ち合って戦う独自のスポーツを押し出した作品でした。
本作はなんといってもこの「刃道」が魅力的でしたね。
スポーツとはいえ、女の子が真剣を振り回してガチで戦うんですよ。めっちゃ熱かったです。
霊式機巧デバイスやバリアジャケットなどは天呪(八百万の神々の力)に頼った設定なのでふわっとしていますが、それをもたらす神々や化妖についての言及がそこそこあるので、完全に雰囲気だけという感じでもなかったのが良いですね。
しおん√と桜夜√はそういった伝奇的な要素が濃い√になっていましたが、椿√は王道のスポ根という感じで万人向けでした。√ごとにシナリオの方向性がガラっと変わる作品と言えるでしょう。
あと、本作は音楽が強かったですね。
スタイリッシュな電子サウンドは良い意味でエロゲっぽくない感じで、新鮮味がありました。
「和風×シンセ」って意外と親和性高いんでしょうか。聴き心地抜群で、非常に良かったです。
本作で気になった点はシステム面ですね。
ブランド処女作なのもあってか、とにかく不安定で荒削りでした。
どうやらお気に入りボイス機能が悪さしているようで、テキストボックスから登録すると高確率でバグります(画面真っ暗のまま進まない、強制終了など)。
なので、お気に入りボイス機能を利用する方はバックログから登録するようにしましょう。
バックログから登録するとバグらないです。
(ちなみにこの情報はXのフォロワーさんからいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございます!)
あと、場面転換のときにBGMがプツッっと切れるノイズが毎回入るんですけど、これが地味にイヤでした。
没入を阻害する要素となっていたので、わりと不快でしたね。
加えて、起動時のタイトルロゴですね。なぜスキップできないんでしょうか……。
普通に意味がわからなかったので、次で改善されていることを祈ります。
まあそんな感じで、私としては主にシステム面に不満を抱いてしまいましたね。
本作の独自要素である刃道は非常にカッコよくて魅力的でしたので、ここが最大の評価点でした。
FDの『絆きらめく恋いろは 椿恋歌』は椿√の続編みたいなので、そちらもプレイしたいと思います。
CRYSTALiAさん、素敵な作品をありがとうございました!

点数
絆きらめく恋いろは | |
---|---|
シナリオ | 15 |
キャラ | 18 |
音楽 | 19 |
システム・演出 | 14 |
全体の完成度 | 14 |
合計 80点 (各項目は20点満点) |

名フレーズ・格言
新しい項目です。本感想から取り入れてみました。
作中で良いなと思ったフレーズをご紹介します。

“人間50年、何かを得るにはあまりにも短い時間じゃ。いつまでも歩みを止めていては勿体ないぞ”
人間50年というのは「敦盛」からの引用ですね。人生は儚く短いという意味です。
目標を達成するには必死で掴みに行かなければならない。自ら積極的に動く気構えを忘れないでいたいものですね。
おまけ
マスターアップイラスト

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