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【全年齢ゲーム感想】KANADE(FrontWing)

『KANADE』の感想になります。

『KANADE』は2025年6月にFrontWingから発売された全年齢美少女ゲームです。

主人公の“悠登”と、植物と呼応する不思議な力を持つ少女“カナデ”が運命的な恋に落ちる物語。

※ネタバレ全開ですのでご注意ください。

『KANADE』公式サイト

『KANADE』ネタバレ無しレビュー(姉妹サイトへ飛びます)

目次

シナリオの感想

©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

シナリオ評価:A

いやーかなり良かったですよ。

ボーイミーツガールモノではありますが、悠登とカナデが偶然出会って運命的に恋に落ちる……ではなく、「恋に落ちる」ことを目的として出会うというのが、まず面白かったですね。

恋に落ちて最高のラブソングを歌い、世界を救う。

カナデは真っ直ぐそこに突っ走ろうとするピュア娘でしたが、そんな彼女の少しズレた行動を主人公たちが優しく導いていきます。その様子がなんとも微笑ましい。

本作は世界が優しいので、悪人が登場しないんですよね。だから安心してカナデの成長を見守っていられます。こういった温かな雰囲気が、本作の強い魅力だと思いますね。

©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

シナリオに関しては非常に丁寧で、上手くまとまっていたと思います。

特に「植物に覆われた未来の地球」というSF設定が飾りではなく、シナリオと密接に絡んでいた点に感心しました。まさかカナデのお母さんが地球を守ってくれた結果、ああなっていたとは……。

両親とカナデの親子の愛情、じいさんの友人たちへの想いに触れていき、流星雨から地球を守る。
その過程が丁寧に描かれていましたし、一度ノーマルエンドを挟んでからグッドエンドに向かう流れも良きでした。

カナデと悠登の二人の歌声だけではカナデへの負担が大きすぎて100年間眠ってしまいましたが、グッドエンドでは力を合わせて地球の危機に立ち向かい、みんなで流星雨の被害を最小限に食い止めました。

この構図が王道的で感動できる!

カナデが「3日」眠っていたと知らされるまで微妙にハラハラさせられたのも含めて、かなり楽しませてもらいましたね。

心臓に悪いw ©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

あと本作は「音楽・カナデのボイス」もかなり魅力的でした。

音楽は曲数自体は多くないものの優しい音色が心に染み入るようで、目を瞑ってじっくり聴いてしまいましたね。

「最高のラブソング」と聞くと情熱的でパッションに満ちたイメージを抱きますが、本作のラブソングは、そっと愛しい人に寄り添うような柔らかなメロディが奏でられていきます。

本編でも頻出していた言葉をお借りすると、「お布団」ですね。毎日優しく包み込んでくれる、あの温もり。

ホッとするような癒しのひと時を与えてくれるED曲「For You」は、「起きた時、必ず傍にいるよ」という二人の信頼関係が確かに伝わってきて、温かい気持ちになれましたね……。

©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

あとはカナデのボイスを担当する夏吉ゆうこさんの演技ですよ。

そもそもの夏吉さんの演技レベルが高いのは言うまでもないですが、個人的にはカナデの声のトーンがすごく自然だったのが印象的でした。

天然の透明ボイスというかね、そこに媚びを感じない。カナデの可愛らしい演技に「あざとさ」や「わざとらしさ」を一切感じなかったんですよ。

この際なので本音を語りますと、本作の系譜といえる『GINKA』では正直それは少しあって(仕方ないとはいえ)、やや苦手意識を抱いた記憶があります。

しかし、カナデのボイスは落ち着いた少女というイメージを崩さず、萌え萌えした記号的な可愛さを意図的に抑えていたような印象でした。本作の作風や雰囲気に合っていて、とても良かったですね。私はそんなカナデのボイスが大好きです。

肝心の歌も非常にお上手でしたし、言うこと無いですね。完璧なキャスティングだったと思います。

©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

まあ良かった点はそんな感じで、お次は気になった点を書いていきましょうか。

まずはシナリオに関して、「カナデの両親が爆破テロを未然に防いだ」というくだりに疑問を抱きました。

正直、あれはもっと他になかったんだろうか……と思ったんですよね。
いやだって、「人間が起こす爆破テロ」と「宇宙から降り注ぐ流星」って危機のレベルとしては明らかに後者の方が高いじゃないですか。

爆破テロなんて起こったところで人間同士が戦争を始めるだけですが、流星は止めないとマジで地球が終わります。
それを力に目覚めるかどうかもわからない娘に託すというのは、あまりに博打が過ぎるというもの。ここは疑問を抱かずにはいられませんでした。

まあカナデのお母さんはすごく優しい人なので、それを見過ごして流星に備えるなんて考えられなかったんだろうとは思いますけどね。地球の人間をそれだけ愛してくれていたんでしょう。人間のお父さんと結婚するぐらいですから。

まあそういう感じで納得しようと思えばできるものの、わりと無理やりな感じはありましたので、ここは指摘させていただきました。

©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

あとはクリア後に関して。

クリア後は悠登とカナデが文通する前日譚を見れるわけですが……私は後日譚の方が見たかった。

いやもちろん良かったんですよ、前日譚も。カナデの心情が綴られていくのは本編の補完となっていましたし、全然悪くはなかったです。

けど、十分想像で補えるような程度の内容でしたので、これだったらしっかりした後日譚を描いてほしかったなーと思ってしまったんですよね(というか後で知りましたが、この前日譚はXで事前に公開されていたようです……)。

本作は全員集合CGがないのが寂しかったので、後日譚でそれを披露してくれたら私の評価はさらに上がったことでしょう。その点は少し心残りとなりました。

まあ気になった点はそんな感じです。

本作は「神秘的なSFシナリオ・カナデの落ち着いた可愛さ・優しい世界」が魅力的でしたね。

ロープライスで予算的な制限も多い中、丁寧にまとめきった素晴らしい作品でした。

主人公“悠登”の感想

主人公の悠登は自我の強い人間ではなく、周りのサポートに回る控えめタイプでしたね。

精神的には結構成熟していたような印象で、成長を感じて楽しむような主人公像ではなかったかなと。

まあ本作は主人公に強くフォーカスを当てた作品ではないので、さほど問題はなかったと思います。

ただ、カナデを強く惹きつけるような突き抜けた魅力を持たせて彼女を虜にさせる、といった構図でも面白そうな気もしました。

それで恋愛描写を引き立てて、また違った味わいにしても良さそうだなと思ったり。

総評

『KANADE』は悠登とカナデと街のみんなで力を合わせて、地球の危機を乗り越えるお話でした。

率直に言うと非常に良かったです。

「ロープライス×SF」という、描写にシビアな取捨選択を迫られる難しい作品を、ここまで丁寧に仕上げてきたのには正直驚きました。

もちろん勢いで進めている場面はあるのですが、ほとんど破綻を感じさせないような作りがさすがでしたね。ライターの浅生詠氏の描き方が巧みなのでしょう。良い意味で上手く誤魔化されたような感じがあり、気持ちの良い読後感に包まれました。

『KANADE』は深く心に刻み込まれるような尖った要素はありませんが、心にそっと寄りそうな、優しい温かみに満ちた作品という感じがしました。ヒーリング効果が高くて、終始癒されましたよ。

私はボイスを全部聞いて8時間程度で終わりましたので、時間に余裕がない方にはとてもおすすめ。
プレイ時間以上の満足感を得られること間違いなしです。

©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

点数

KANADE
シナリオ15
キャラ19
音楽18
システム・演出17
全体の完成度19
合計 88点 (各項目は20点満点)
©Frontwing / GOOD SMILE COMPANY

おまけ

発売記念イラスト

©Frontwing

商品リンク

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • Cyberさん、いつも大変お世話になっております(*╹▽╹*)えりんぎです。

    『KANADE』に対するCyberさんの感想記事、お待ちしていましたし、全て拝読しました。私も6月14日(土)には、自分のブログに感想記事を上げました。お互いにこの速度でこのレベルの記事を、ガイドラインを守って投稿できていることを誇らしく思います。無論、速度で記事の質は全く図ることができません。しかし、確実に私達はノベルゲームコミュニティの最先端を走っている気がして、嬉しくなりました。

    さて、本作に対するコメント。気になった点、素晴らしかった点。そして、Frontwing様などの今後に分けて語っていきます。

    まず、気になった点を大きく分けて2点。1点目。Cyberさんが仰ったように、シナリオの爆破テロのくだりですね。流石に違和感を抱きましたね。カナデの世界観に合っていない、人為的な事件だっただけに壮大な世界観に若干以上水を差していた印象を抱きます。次に2点目。サブキャラクターの活躍ですね。伊織、みのり、亜希といった魅力的なサブキャラが本編後半にほぼ登場しません。これはかなり大きな問題だとは思っていて。というのも、伊織、みのりは特に、カナデの恋愛の相談役、補助役として適切であると思いますし、事実、その意図の下、配置された節があります。しかし、実際にはじいさんやカナデの両親以外シナリオの内部に関わらず、フェードアウト。これは流石に由々しき事態です。浅生先生やスタッフ陣の中で、尺や予算関係のトラブルがあったようにお見受けします。

    良かった点。これは、「価格に対する満足度」。これに尽きるでしょうね。Cyberさんも仰ったように、希望小売価格1,980円にしては得ることができる満足は凄まじいものです。カナデの、他キャラクターのヒーリング効果は確かなものであり、読んでいて、非常に癒されました。何より、貴記事でも触れていらっしゃった夏吉ゆうこさんの演技は非常に素晴らしかったですね。流石、老舗であるFrontwing様のキャスティングです。信用できました。
    私は上記の観点を鑑みるに本作は(比較対象として不適切なのは無論、承知の上で)、かの名作『ATRI』に比類できる完成度であったと推測しております。ゲーム体験という点では私のブログに書いた通り、相変らず明確に不足していますが、それでも物語性は良かったと認識しています。

    最後に、今後のFrontwing様について。私は今後のノベルゲーム市場においてFrontwing様は重要な役割を担うと確信しております。全年齢ノベルゲームの楽しさ。物語性の追求。その点ANIPLEX.EXE様やFrontwing様は確実に大きな力とノウハウを持っているように推測します。私は、先日、同人ノベルゲームサークルCURARE様所属の工場長様と対談させていただきました(https://www.youtube.com/live/Ey0Xyq8jaHo)。その対談の際にも話題に上がったのですが、現在のノベルゲーム市場の拡大には全年齢、女性層の獲得はマスト。確実に進化していって欲しい。そう願っております。面白いノベルゲームは人生の宝です。今後の糧にしていきたいとともに、全力で買い支えたいと思い、応援しております。

    本日はこんなところでしょうか。一応、私のブログの『KANADE』の記事(https://note.com/eringi6234/n/n7f5bbe325bec)のURLも貼っておきます。機会がありましたら、是非、ご一読ください。最後になりますが、Cyberさんは、Steam自体のレビューは執筆していらっしゃいますでしょうか?私は結構、書き残しているのですが、クリエイター様が真っ先に読むのは恐らくSteamレビューだと思います。無論、浅生詠先生は視野が大変広く、Xやブログもチェックしているでしょうが、私はSteamレビューかブログを通じて、Xで浅生詠先生から直接お礼のご連絡をいただきました。非常に嬉しく、また、クリエイター、ユーザーの好循環が生まれていると考えています。工場長様との対談でも思ったのですが、それだけ感想、レビュー、批評には力が宿るのだと思料します。

    Cyberさんは、私の大切なブログ仲間で、戦友です。上記の情報、コメントが少しでもCyberさんのためになれば幸いです。最後になりますが、URLを2つも貼ってしまい申し訳ありません(汗)それでは、今日はこのあたりで失礼します。またコメントさせていただきます。

    • えりんぎさん、いつもお世話になっております。
      Cyberです(*^^)v

      こちらこそ、毎度コメントいただきありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいです。

      『ATRI』と『GINKA』をプレイしてきた身としては、本作をプレイしないわけにはいきませんでしたね笑
      しっかりと本作をマークし、迅速に感想記事を書き上げたえりんぎさんもさすがです(`・ω・´)ゞ

      >>シナリオの爆破テロのくだりですね。流石に違和感を抱きましたね。カナデの世界観に合っていない、人為的な事件だっただけに壮大な世界観に若干以上水を差していた印象を抱きます。

      まさしくその通りですね。唐突に挟みこまれた人為的な事件は、本作が築き上げた壮大かつ神秘的な雰囲気と不和を起こしており、非常にもったいなく感じました。
      「爆破テロ→流星雨」の繋がりや必然性をまるで感じられなかったのが残念です。上からの偉そうな物言いで恐縮ですが、ここは大いに改善の余地ありといったところでしょう。

      >>サブキャラクターの活躍ですね。伊織、みのり、亜希といった魅力的なサブキャラが本編後半にほぼ登場しません。これはかなり大きな問題だとは思っていて。というのも、伊織、みのりは特に、カナデの恋愛の相談役、補助役として適切であると思いますし、事実、その意図の下、配置された節があります。しかし、実際にはじいさんやカナデの両親以外シナリオの内部に関わらず、フェードアウト。これは流石に由々しき事態です。浅生先生やスタッフ陣の中で、尺や予算関係のトラブルがあったようにお見受けします。

      個人的には本筋に絡むサブキャラとしての役割はじいさんに背負ってもらったんだろうなと解釈しておりますが、えりんぎさんのご意見も頷けます。
      本編の終盤で悠登とカナデの恋愛に一波乱起こり、そこで伊織とみのりがまた間に入ってくれる……みたいな展開があれば、シナリオ的にも面白かったかもしれませんね。

      >>希望小売価格1,980円にしては得ることができる満足は凄まじいものです。カナデの、他キャラクターのヒーリング効果は確かなものであり、読んでいて、非常に癒されました。何より、貴記事でも触れていらっしゃった夏吉ゆうこさんの演技は非常に素晴らしかったですね。流石、老舗であるFrontwing様のキャスティングです。信用できました。

      頷きしかないコメントをありがとうございます。
      1,980円のロープライスでありながら、妥協を感じさせない作り。夏吉ゆうこさんの素晴らしい演技も合わせて、素晴らしかったですね。とても良いゲーム体験でした。

      >>私は今後のノベルゲーム市場においてFrontwing様は重要な役割を担うと確信しております。全年齢ノベルゲームの楽しさ。物語性の追求。その点ANIPLEX.EXE様やFrontwing様は確実に大きな力とノウハウを持っているように推測します。私は、先日、同人ノベルゲームサークルCURARE様所属の工場長様と対談させていただきました(https://www.youtube.com/live/Ey0Xyq8jaHo)。その対談の際にも話題に上がったのですが、現在のノベルゲーム市場の拡大には全年齢、女性層の獲得はマスト。確実に進化していって欲しい。そう願っております。面白いノベルゲームは人生の宝です。今後の糧にしていきたいとともに、全力で買い支えたいと思い、応援しております。

      仰る通りですね。Frontwing様は海外ローカライズの技術が抜きん出ておりますので、その強みを存分に生かされているような印象です。
      海外シェアも狙っているのだろうとお見受けします。ノベルゲーム、ビジュアルノベルの広い普及を目指されている、素晴らしい企業様だと私も感じております。

      あと、えりんぎさんと工場長さんの対談はアーカイブで視聴させていただきました。
      ノベルゲーム市場の発展が停滞しているといった趣旨のパートは非常に参考になりました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。

      >>私のブログの『KANADE』の記事(https://note.com/eringi6234/n/n7f5bbe325bec)のURLも貼っておきます。機会がありましたら、是非、ご一読ください。最後になりますが、Cyberさんは、Steam自体のレビューは執筆していらっしゃいますでしょうか?私は結構、書き残しているのですが、クリエイター様が真っ先に読むのは恐らくSteamレビューだと思います。無論、浅生詠先生は視野が大変広く、Xやブログもチェックしているでしょうが、私はSteamレビューかブログを通じて、Xで浅生詠先生から直接お礼のご連絡をいただきました。非常に嬉しく、また、クリエイター、ユーザーの好循環が生まれていると考えています。工場長様との対談でも思ったのですが、それだけ感想、レビュー、批評には力が宿るのだと思料します。

      感想記事のリンクをご掲載いただきありがとうございます。すでに拝見しております笑
      えりんぎさんの熱量溢れる素晴らしい感想でした。『緑に沈む街』良いですよね。私も大好きなBGMです。

      Steamのレビューにも総評を部分的にではありますが、本感想の投稿と同時にそちらにも投稿させていただきました。
      本作は今のところSteamのみのリリースということですので、少しでも力になれればと。まあ、いずれCS化しそうですが笑
      ご助言いただきありがとうございます。

      今回もコメントいただきありがとうございました。

      こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いいたします(*^▽^*)
      失礼いたしました。

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