『Summer Pockets REFLECTION BLUE』の感想になります。
『Summer Pockets REFLECTION BLUE』は2020年6月にKeyから発売された全年齢美少女ゲームです。略称は「サマポケRB」ですね。
主人公“鷹原羽依里”が夏休みに鳥白島にやってきて、島の住人と深く関わっていく物語。
私は無印をプレイ済みなので、RBの追加部分以外は2周目となります。
※ネタバレ全開ですのでご注意ください。
『Summer Pockets REFLECTION BLUE』公式サイト
シナリオの感想
久島鴎√

いやーやっぱり良かったですね。
無印でプレイした時も思いましたけど、プレイしているときのワクワク感がたまらないですよね。まさに冒険している感覚といいますか。
子供の頃の夢の具現化、「こういう夏休みがあったらいいな」っていう漠然とした想いをストレートに表現してくれている印象で素晴らしいです。
志半ばで倒れてしまった鴎の夢を叶えるストーリーも感動できますし、「冒険→鴎の素性説明→海賊船制作→夢の達成」という話の運び方、描き方も上手で没入させられましたね。
少女と少年が夢を叶える、ひと夏の物語。非常に完成度が高いです。
再プレイしてもやっぱり楽しめる。これぞ、面白い物語ですよ。
紬・ヴェンダース√

最後は感動できますが、そこまで冗長なのが玉に瑕。無印プレイ時の印象とあまり変わらなかったですね。
ただ、ツムギと紬の日記を発見するシーンは、得体の知れないものを見ている恐怖感を上手く演出できていた気がしました。もう一度よく見てみると、あのシーン結構怖かったですね。初見時は紬の正体が気になって、そこを気にする余裕はなかったのかもですが……w
最後のロウソクを5,000本並べるCGは幻想的で好きでした。クライマックスなだけあって、ここは印象に残ってましたね。
気になる点としては、やはりそこまでが長くてダレやすいところです。
ギャグもあまり合わなかったので、その影響もあるかもしれません。静久のおっぱいネタがちょっとしつこいかな(そういうキャラと言いたいのでしょうが)。
紬のキャラ造形はかなりあざといので苦手な方もいるかもですが、健気な振る舞いがいじらしくて可愛いので個人的にはアリ。立ち絵のダブルピースにやられちゃいました。
あと紬は鼻声も好きですね。鼻声ボイスが可愛いというのは、古今東西どこを見渡してもそうなのだ(
水織静久√

静久を掘り下げるシナリオとしては良いと思いますが、正直私の好みではなかったかなーと。
嫌なことを忘れてしまう静久がなぜそういう風になったのかを明らかにして、静久の家庭問題も一応の解決を見る。
他人軸ではなく自分軸で生きるように努める決意を固めた静久が、新たな一歩を踏み出す。ついでに主人公も静久と一緒にトラウマに向き合って水泳を頑張ると。
良いと思いますよ。けど、「これってサマポケでやる必要あったかな?」と強く思いました。
「どこか懐かしい夏休み、ひと夏の不思議でちょっとワクワクするような体験、少年少女の輝かしい青春、感動的なクライマックス、爽やかな読後感」
私がサマポケに求めているのはこういう要素なので、静久のシナリオは根本的に噛み合ってなかったですね。
不快なシーンがちょこちょこ合ったのもマイナスでした。ヒスった静久の母親にみんなで楽しく作ったカレーを流しに捨てられるとか、みんなで作った海の家を台風にグチャグチャにされるとか。
こういうのほんと要らなかったと思います。ただ不快なだけで、「サマポケにこんなの求めてない……」と興が冷めた感覚でした。
最後の静久と羽依里が嘘を付き合うところも、いまいち乗り切れず。叫び合うとかそこまでしなくてもいいのではないかと。
お互いわかっているんだから、ちょっと戯れる感覚で軽くするほうが雰囲気的にも合っていた気がします。直前で紬と全力でやってるのもありますからね。
良かったところは、紬と静久が嘘を付き合うシーンです。
紬の意図に気づいたとき「紬ってほんとに優しくて良い子だな……」って強く感じられて、ウルっときました。色々狙っているシーンではあると思いますが、それがわかっていても感動できる。ここは素直に良かったですよ。
まあそんな感じでデキは悪くないと思いますが、サマポケの世界観との親和性をまるで感じられなかったので、シナリオ評価はCとしています。
空門蒼√

最高でした。
私は蒼√が無印で一番好きでしたが、もう一度読んでもやっぱり良かったですよ。
藍を目覚めさせるために頑張る蒼、その蒼を支えたいと思う羽依里。蒼もずっと傍にいてくれる羽依里に少しずつ気を許していく。
羽依里と蒼、お互いにどこを好きなのかが明確でわかりやすいのがグッド。
読み物というのは基本的にわかりやすいほどいいと思っているので、ここは立派な長所ですよ。
あと、蒼√は言葉遊びも面白いんですよね。
蒼:あたしに惚れてるの?
羽依里:少なからず、惚れてるんだと思う。迷惑か?
蒼:少なからず……
上記のような感じで言葉で遊んでくるので、読んでいて楽しい。
最後の蒼の「少なからず……」は「迷惑だけど」という意味ですが、そこまで発言させないのが粋です。同じ言葉に違う意味を含ませ、それを察してもらうことで笑いを取っているんですよね。
こういったやり取りの妙、キャラの会話劇を楽しめるシナリオが好きなので、そういう意味でも私は蒼√を高く評価しています。
もちろんストーリー自体も最高ですけどね。
最後、蒼の目覚めるところまでしっかり描かれるので、気持ち良く読み終えることができます。
羽依里が蒼の元に通い続ける描写も、彼の本気度を感じられてすごく良い。応援したくなるような恋愛というかね、二人の頑張っている姿が多く描かれていて好みでした。
BGMも「虹の蝶」の神秘的なメロディが雰囲気抜群で、引き込まれましたね。
姉である藍の言動も個性的で面白かったです。空門姉妹が眠りから覚めて再会するシーン、とても良き。
総じて、私の好きが詰まったシナリオでしたので、シナリオ評価はSとしています。
野村美希√

前半はあまり面白くなかったですが、途中から徐々に巻き返した感じでしたね。
途中で流れる謎の夢のシーンが全然面白くなかったのでそこはかなり退屈でしたが、のみきの素性が明かされて、夢の意味がわかるようになったぐらいで少し持ち直した印象です。
新聞記者の二人がガッツリシナリオに絡んでくるのはちょっと意外でしたね。これは見ていて面白かった。
七影蝶もしっかり絡んでいてサマポケのシナリオであることの意義は感じられたので、静久√よりはよくできていたんじゃないかなと。
あとラストシーンですよね。のみきと両親をしっかり対面させてくれたのはとても良かった。ここは素直に感動できましたので、なかなか良い読後感でしたね。
気になった点としては、やはり前半から中盤の冗長さでしょうか。
島の見回りをして裸の良一を撃っていただけで、それ以外ほとんど何もしていないという。かなり空虚な内容だったので、中身がほしかったですね。
あと途中のシリアスが重すぎたので、そこはもう少し軽くしてもよかったと思います。
友人のみんなに面と向かって悪意をぶつけられるのはキツい……。
のみきの心の弱さの演出であることはわかっていても、あまりにも直接的すぎるので、もう少し間接的に描く方法はなかったのかなと思ってしまいましたね。
まあそんな感じで、ラストは良かったですがその過程で気になる点が目立ってしまったので、シナリオ評価はBとしています。
鳴瀬しろは√

大きな盛り上がりはないですが、つまらないわけでもない√といった感じでしたね。
無印の頃にも思いましたが、グランドの種明かしのために情報を伏せているので、いまいち盛り上がりに欠けるんですよね。
ヒロインのしろはは十分可愛いですけど、やや影が薄い印象もあって。どちらかというと小鳩さんの方が印象に残るというw あの水中バトルは相変わらずめっちゃ面白かったです。これは何度見ても笑えますわ。
気になる点としてはやはり、シナリオが尻切れトンボになってしまっているところですね。
「しろはと想いが通じ合って終わり!」は、さすがに物足りないですよ。
まあグランドに続いていくのはわかっていますが、それにしてももう少し見せてほしかった。エピローグの写真は最高なので、それは良いんですけどね。
まあそんな感じで色々と描写不足が気になるので、シナリオ評価はBとしています。
神山識√

RBで追加されたヒロインということで楽しみにしていましたが、なかなか力の入ったシナリオで良かったんじゃないかなと。
追加ヒロインなので内容としては外伝的な感じにはなっていましたが、夏鳥の儀や既存のキャラとしっかり絡めたシナリオは、サマポケらしさを損なわずに上手いこと仕上げていた印象です。
CGも要所で効果的に使われていたのが良かったですね。船に松明を灯している海賊の鬼姫のCGがお気に入り。識の赤く光ってる目が最高にカッコイイですよ(思春期)。
音楽もEDはまさかのオリジナルで驚きましたね。「二つの貝殻」とか「手を合わせて」とか、しっかりと本編を意識した歌詞なのがまたニクいんです。
これがノベルゲームの音楽の強さ。
物語体験を経た上でのこれですから、普通に曲だけを聴くよりも遥かに感情が揺さぶられるという。
全く、これだからノベルゲームはやめられん……!
シナリオの結末に関しては大方想像がつくわけですが、それだけに、羽依里と識の過ごす日々をひとつひとつ噛みしめるように楽しむことができましたね。
子どもたちとの鬼ごっことか三半規管を鍛えるために床をゴロゴロするのとか、ありふれた日常描写が本編を終えた後に思い返すとエモくなる。
これがサマポケの魅力だよなーと。クリア後にしみじみとノスタルジーを抱く感じ、どこか懐かしい気持ちに包まれるプレイ体験がたまらない。

あと、慰霊碑に刻まれた文字が「神山識」に変わるのはさ……薄々わかっていたけど、それでもやられちゃったよね。
ここはやるせない気持ちにさせられる、良い場面だったと思います。
一方で気になった点としては、「島の人間を大津波から救う計画が、あまりにも識頼みすぎる」ところでしょうか。
鳴瀬とか空門の協力者がいたわけなので、もっとみんなで力を合わせれば、識が犠牲にならない方法もあったんじゃないかなと思ってしまいましたね。
あとはあれだけの船と松明を大人にバレずにどうやって用意したんだとか、加藤の先祖の女の子が浜に一人でいるよーっていう突然の描写に面食らったりとか、細かいところも地味に気になりましたね。
沖に出ていれば識が助かる可能性は高かったわけですが、それができなかった理由としての描写があれだったので、そこは安直に感じてしまいました。
というかこの「女の子が一人取り残されてる」ってしろは√でもやってるので、さすがにワンパターンではないかと(もしかしたら、何かしらの意図があるのかもしれないですが……。)。
まあそんな感じで細かいところは気になりましたが、全体としては「限られた夏休みの日々を楽しむ」というサマポケの作風に合致したシナリオで、寂しくも晴れやかな読後感が訪れる素晴らしい√だったと思います。
ALKA

うみの秘密を明かすグランド√の前半ですね。
羽依里が父でしろはが母として、うみと過ごす日常を描きつつ、うみに隠された秘密に迫っていく内容でした。
概ね無印と同じような感想を抱きましたが、やっぱり花火のシーンが最高でしたね。
忘れていたうみを羽依里としろはが思い出すこの場面、三人の想いが溢れだす様子は涙なしには見られない……。
演出もかなり力が入っていてわかりやすいぐらいに泣かせにきていますが、それが分かっていてもしっかり涙ぐんでしまうという。
本作でもっとも破壊力のあるシーンといってもいいでしょう。三人で手を繋いで花火を見上げているCG、最高にエモいんだ。
ただ、細かい部分を指摘させていただくならば、しろはが死んでしまう流れはいまいち納得できないところがありまして。
産まれてくるうみが心を過去に飛ばす力を得ないようにするため、その方法を探すことに頑張りすぎたからしろはは死んでしまった、みたいな説明をサラッとされるんですけど、その具体的な描写が全く足りていないので、唐突に死んでしまったような感じで付いていけなかったんですよね。
「しろはが死んでしまうことを前提とした、その先の展開」という構造が透けて見えるといいますか。
なので、しろはの頑張りはもっと密に描いて、説得力を持たせるべきだったと思います。うみを産んで力尽きてしまうぐらい頑張るって、相当じゃないですか。ここの描写は妥協してはいけないところだったと思いますよ。
あとはまあ無印のときにも思いましたけど、ALKA以降のシナリオはテーマが変質してますよね。完全に家族のお話になってます。
家族愛を描くのはKeyさんの得意とするところでしょうけど、それだけにどこかで見たような既視感を払拭できないですよね。
それが悪いわけではないんですけど、サマポケだったらもっとそれらしい雰囲気のシナリオを描けたんじゃないかと思う気持ちもあって。
個別√で見せてきたものとグランドの内容が微妙に噛み合っていない感じがして、モヤってしまうのが惜しい。単体で見ればクオリティは高いんですけど、全体としてのまとまりに欠ける印象があります。
まあ色々言いましたが、ALKAのシナリオはPocketに続いていくので、最後まで見ていきましょうか。

七海となったうみが最後の力を振り絞って、自らが生まれない世界へしろはを導くグランド√の後半。
ALKAからさらに焦点を絞って、母と娘の愛を全力で描いてきましたね。
Pocketも、無印初見の時とあまり感想は変わらなかった気がします。
ただ、無印初見のときより話が理解しやすかった気がするので、結構加筆されてるんでしょうか。比較して調べていないので、その辺りはよくわからないですが。
「七海の正体明かし→しろはとの別れ」がPocketのクライマックスですが、ここは音楽と演出にかなり気合が入っているので引き込まれましたね。良かったです。
ただ、正直予想の範囲内のやり取りで進んでいくので、ノベルゲームに慣れている方は物足りないかもですね。想像を越えない範囲での感動に収まってしまっている印象で、驚きがないというか。惜しい感じです。
あと、羽依里が完全に蚊帳の外なのも個人的には気になりました。そういう意味では、やはりALKAのみんなで花火を見るシーンの方が好みだったりします。
最後の追加部分は良いんじゃないかなと。
いきなり識が入ってきたのは面食らいましたが、あのままだとうみちゃんが報われない感じだったので。親子三人で手を繋いで歩いているあのCG、素直に好きだったので良かったと思います。
うみ√

羽依里がうみと一緒に昆虫採集して秘密基地で戦い合って、最後に水泳のトラウマを克服するお話。
グランドの後のエピローグ的な感覚で楽しめる内容といった感じで良かったです。うみと一緒の夏休みを堪能できる素晴らしい√ですね。
Pocketを読み終えた直後だともう——
何もかもがエモすぎる!
羽依里とうみのやり取りをずっと微笑ましく見守っていましたね……。

後半では羽依里に強く焦点を当てていますが、これもとても良かったんですよ。
私はPocketにおける羽依里の描写の薄さに引っかかりを感じていたのですが、うみ√はそのモヤモヤを解消してくれるような内容で非常に良きでした。
グランドで手の届かなかった部分を補完していた印象で、最後まで頷きながら読み進めることができて大満足。
ラストの別れのシーンに関しては「ALKA・Pocket」をプレイ済みかどうかで、大きく読後感が変わってくると思いますね。
うみ√は公式の推奨攻略順がグランドの後ということだったので最後にプレイしてみましたが、先にプレイするよりも深みというか、違った味わいを感じられました。
羽依里とうみが二人だけでじっくり遊ぶシーン、何気ない日常シーンの捉え方が大きく変わります。
親子で一緒に楽しく遊べるって、すごく幸せなことなんだなぁ……。
主人公“鷹原羽依里”の感想

水泳でトラウマを抱えて鳥白島に逃げ出してきた本作の主人公。
羽依里の抱える水泳のトラウマは断片的に語られていき、しろは√で大まかな内容が明らかになります。
父親の拒絶の一言は年頃の青年には大きな傷を与えるもので、羽依里がショックを受けて逃げ出してしまうのは仕方ない気もしましたね。
グランドの「ALKA」と「Pocket」では羽依里の影が薄くなってしまったのが無印の問題点でしたが、それを受けてか、本作のうみ√では羽依里のトラウマ克服を明確に描いていました。
うみが優しく羽依里の頭を抱えて慰めてくれるあのシーン、すさまじい破壊力でしたよね。正直このシーンを見れただけでも、RBをプレイして良かったと思えましたよ。
プールで仲間たちが協力して、羽依里の水泳の練習に付き合ってくれるシーンも熱かったです。
こういうの大好き侍なので、最後までかじりついてプレイしてしまいましたね。
RBは羽依里関連の描写がかなり追加されていたので、この点は大きな改善と言えるでしょう。
総評
『Summer Pockets REFLECTION BLUE』は『Summer Pockets』に様々な追加要素をプラスした完全版でした。
発売されてから5年間積んでいましたが、プレイして良かったと思えました!
特に識√とうみ√は、無印をクリア済みでもプレイする価値があると強く言える内容だったかなと。
ゲームとアニメを行き来しながら楽しむ贅沢な遊び方もできたので、この機会にプレイして良かったです。
最高の夏休みをありがとうございました!

点数
| Summer Pockets REFLECTION BLUE | |
|---|---|
| シナリオ | 19 |
| キャラ | 19 |
| 音楽 | 20 |
| システム・演出 | 18 |
| 全体の完成度 | 19 |
| 合計 95点 (各項目は20点満点) | |

おまけ
マスターアップイラスト



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