『anemoi』の感想になります。
『anemoi』は2026年4月にKeyから発売された全年齢ノベルゲームです。
主人公“速川麦”が北の大地にある真澄町にやってきて、住人たちとゆるやかな生活を送っていく物語。
※ネタバレ全開ですのでご注意ください。
『anemoi』ネタバレなしレビュー(姉妹サイトヘ飛びます)

シナリオの感想
共通√

旅をしている麦と妹の六花が真澄町にやってきて、学校に潜むヤバい存在を退けて、町の人たちの依頼をこなして、徐々に真澄町に馴染んでいくお話。
本作の導入パートですが、途中で世界が災害に合って文明が半分崩壊しているみたいな描写もサラッと放り込まれます。
まあこれ、ぶっちゃけ予想付いてました……w
旅をしている兄妹とか普通じゃないですし、大人たちの会話に物資の需要がどうとかいう話もありまして、色々とそれっぽい雰囲気はありましたからね。
よくある世紀末モノに見えますが、それをメインに描きたいわけでもなさそう。地方のスローライフを軸にしつつ、少し刺激的な要素も入れましたって感じなんでしょうか。
シナリオについては学校に潜む犬のバケモノが気になりますが……これも急に伝奇モノみたいな要素が出てきて正直面食らいました。『anemoi』どこに向かうんだろう。方向性が気になりますね。
町の人たちの依頼についてはまあ日常パートといった感じですが、ギャグのキレがやや鈍っているような印象もあって、どことなく物足りない感じはありますね。良くも悪くも全体的にマイルドすぎるのかもしれない?
まあでも淡雪は結構強烈なキャラをしているので、見ていて面白いですね。ヒロインでここまでクセ強めなのはなかなか珍しいかも。彼女の√はちょっと楽しみです。
総羽 愛乃√

愛乃と鳥野郎コンテストに出て、飛行機で空を飛んで、愛乃の秘密に迫るお話。
なかなか良かったんじゃないかなと。
序盤は傘の耐久実験とか鳥野郎コンテストとかでワチャワチャしてましたけど、中盤のフライト以降から一気に読み物として面白くなりましたね。
不思議な愛乃が一体どういう存在なのかについてはある程度予想が付くとは思いますが、それでも読んでいて「早く知りたい」という気持ちは芽生えましたので、先が気になる良いシナリオだったと言えます。
個人的に好きだったのはエピローグ。愛乃が傘と共に、麦のもとへ降りてくるところですね。
愛乃さんが夢を追いかけられるようになって終わりではなく、しっかりと私たちプレイヤーが共に過ごした愛乃で締めを飾ってくれました。これはわかってるなと。
「序盤:傘、中盤:飛行機、最後:傘」といった感じで、飛行機のお話をメインに描きながらも、最後はふわりと傘で綺麗に着地したのも、美しい構成で個人的に好みでした。
一方で気になる点としては、恋愛要素が弱すぎるところですね。
男女として意識しているような描写が麦、愛乃ともにほとんどない。これは恋愛ADVとしてはどうなのかと思いました。
願望島で過ごすイベントはそういう意味で絶好のポイントだったと思うんですけど……特に何もないままそのまま帰ってしまう。君たち本当に年頃の男女ですかと。
水着姿のお胸をちょっと見てしまうだけとかさぁ……さすがに物足りないですって。もっと攻めろもっと!
購入特典イラストが無駄に攻めていたのに、なぜゲーム内の描写がこんなにショボいのか。これはちょっと意見表明せずにはいられないですね。
まあそんな感じで気になるところもありましたが、愛乃に焦点を当てたシナリオとしては良かったと思うので、シナリオ評価はAとしています。
「風の一族」とか「カレイドワールド」とか気になる単語は色々と出てきましたけど、今の段階ではまだわからないことだらけなので、それらは一旦置いておくとします。
白渡 小詠√

小詠のおじいさんの残した手紙を届けるために、麦と小詠が頑張るお話。
小詠が小詠ではなく鳥であることには多くの方が気付いていたと思いますが、まさかのシマエナガでしたか……w
名前のピリカはアイヌ語で「美しい」を意味する言葉のようです。ピリカと聞いたらお米の「ゆめぴりか」しか浮かばないんですが、ゆめぴりかもそれが元となっているようですね。
シナリオについては正直どこかで見たような感じの内容。ヒロイン周りの設定については『サマポケ』の某ヒロインと被るところがあって、結構既視感強かったです。
それについては先に攻略した愛乃もなんですけどね。『サマポケ』をプレイしていると、「え、また?」と思ってしまうような展開がわりとあったというか。
演出もわりとあっさり目で終わってしまい、まさに風のように流れていった感覚でした。
これを狙ってやっているのであれば何も言うことはありませんが……さすがにそんなことはないですよね。
あと、愛乃√でも同じこと思ったんですけど、ちょっと主人公が可哀想だなって。
最後は良い感じに締めてますけど、愛しい人と別れて、一人で生きていかないといけないんですよ、麦くん。
後でジワジワとダメージ受けそうだなーとか思ったりして、なんか素直に感動できなかったですね。
まあ私はそれなりに歳を重ねてきているので、こんなひねくれた感想を抱いているだけかもしれませんけども……w
小詠√は「手紙で想いを届ける」という核たるテーマは良かったものの、全体的に雰囲気が湿っぽくて、あまり好きにはなれませんでした。
悪くはなかったと思うんですけどねー。個人的にはあんまり刺さらなかったかなって感じです。
辻倉 朱比華√

風の一族であるスピカが使命を果たそうとして、色々頑張るお話。
なかなか良かったと思います。
最大瞬間風速はそこまで大きくならないので印象に残るシーンは正直なかったですが、全体的なまとまりの良さはずば抜けていた気がします。完成度高めですね。
私が一番好きなのはラストシーンからEDへの流れ。
EDの「goldenfield」で黄金の麦畑が広がっている様子は、スピカ√のラストと完璧にマッチしていて非常に好きです。こういうのが良いんだよ!
エピローグがなかったのはやや物足りないですが、これはグランドまでお預けってことなんだと解釈しました。期待していますよ。
後は、麦とスピカのお互いを意識しつつもはっきりと距離を詰めすぎないところとか、じれったい恋愛描写もなかなか好みでした。
最後の「私を、あなたの好きにしてかまわない——」は笑いましたが。スピカさん、肝心なところでは大胆。女の子なのに男らしい物言い、肝が据わってますね。伊達に100年以上生きてるBBAじゃ(殴
最後のシーンでみんなに見守られているのは『サマポケ』オマージュもあるでしょうけど、なんかライターさんがこういうの好きそうだなって思いました。
個人的には麦が「一緒に暮らそう」って言った後、もう少しスピカと二人で語り合うシーンが欲しかったですが。ここはわずかに惜しいと思った点でしょうか。
後の気になる点としては六花が突然消えたなとか、小詠全く出てこなかったなとか、言い出したら色々あります。
特に気になるのは妹の六花でしょうか。
別のヒロインの√でもそうでしたけどフェードアウトするだけなので、正直妹が存在している意味をあまり感じられない。
表面上は笑って眺めてるけど、裏でそれとなく牽制してくるとか、そういう感じで、兄のパートナーを見極めようとするみたいな、そういう描写があってもいいのではないかと。嫁検定ノート付けてますしね。
まあバッサリ切っているのは潔いのでそれはそれで良いのですが、だったら妹は最初からいなくてもいいのでは?と言いたくなる気持ちが。これについては六花√をプレイしてからでしょうかね。それで色々と明らかになるでしょう。グランド√が妹メインだったら面白そうですが……はてさてどうなるか。
スピカ√の気になる点は色々ありますが、一人のヒロインの√としては上手にまとめられていて完成度高めだと思ったので、シナリオ評価はAとしています。
ちなみにスピカとはラテン語で「麦の穂(穀物の穂先)」という意味があるようです。本作のメインヒロインとして、ピッタリな名前ですね。
にしても、ゲーム内で「朱比華」ではなく「スピカ」で統一されていたのはなぜなのか。地味に気になりました。
速川 六花√

麦と六花の旅の行く末が描かれるお話。
前半では学校の修繕と六花が学校生活を送る様子を、後半は六花の秘密と旅の終着点を描いていました。
前半と後半でガラッと趣の変わるシナリオでしたね。
前半の日常パートは後半への溜めという感じではありますが、みんなを巻き込みつつ賑やかに描いていて、普通に楽しめる内容だったと思います。
個人的にはギャグが若干合わない感じはありましたが、ここは好みの問題なので、合う方は気にならないかと。
後半が六花√の真骨頂で、六花の正体や麦の抱える闇などが明らかになる内容でした。
まさかの嶽だったのには驚きました。普通に生きている人間だと思ってた……。これはわからなかったなぁ。
あとはやっぱり最後ですよね。登校しながら六花が消えていくクライマックス、あんなの泣かない人いないでしょ……!
消えそうになってから消えるまで、自分で命を断とうと考えていた麦の心を、この世に繋ぎとめようとする。
好きな人に生きていてほしいという純粋な願い。なんだかんだこういうのに弱いのですよ……。
ただ、六花が消えた後ですぐにスピカが現れてしまったのは少しもったいない。
麦が六花との旅の思い出を振り返りつつ、どうしようもなく泣き叫ぶ様子を描くとか、そういう風にやってくれていたらさらに泣けたんじゃないかと。あそこはもう少し引っ張って、プレイヤーの涙腺を思いっきり刺激しても良かったと思いますよ。
まあにしても、Keyの得意分野である「家族」というフィールドでほろりと来るシナリオを描いてくれたので、これは古参の方も満足いく内容だったのではないでしょうか。
エピローグ、学校を卒業する六花の笑顔で締めるの最高ですね。ご立派です。
そういう感じで後半は良かったですが、前半の物語としての見所が少なかったり、ギャグが合わなかったり、周りのみんながあまりに寛容すぎたり、色々と細かい部分は気になったので評価はBとしています。
でもぶっちゃけAよりのBという感じなので、個人的には悪い評価というつもりではないです。終盤の破壊力がもうちょい高ければ、A付けていたかな。
最後に……六花の低い声が結構好きでした。「は?」「邪魔」がお気に入り(ドMヘンタイ)。
小森 健√
健の過去を知るお話。
日頃からふざけていたのでギャグ√かと思ったら、めっちゃ真面目な内容でたまげました……w
別れる時の挨拶、絵美さん気付いてましたよね。けど、何も言わずに去っていくの、健の気持ちを尊重してくれている感じがして好きでした。
哀愁漂う男の背中が、ちょっぴりしんみりするような読後感を残していく。短いですが、良い√だったと思います。
尾道 文弥√
文弥の過去と町長の息子、敦沢豪のお話。
最後の文弥さんの笑顔と「好きだったのかもしれないね」がめっちゃ印象に残りますね。こういうの好きすぎ侍。
途中の土砂崩れ連打は唐突すぎて笑いましたが、まあサブ√ですので細かいことは気にしないでおきましょう。
にしても大人√、「過ぎ去りし想い人」がテーマだったりするんですか? なんでこんな哀愁漂う内容ばっかりなのか……w
独特の味があって、面白いっちゃ面白いですけど。
河瀬 千春√
河瀬のライバルであるジェットと再会して遊んだりするお話。
話としては悪くはないですけど、ちょっとこじんまりしすぎかなと……w
わざわざ√にするほどではない気もしますね。それこそ依頼で描かれるミニシナリオぐらいでちょうど良かったんじゃないかな。
最後ジェットが生きていたのは笑いましたが。ED前のあの流れ、明らかに旅立つ感じだったのに。まあオチとしては面白かったのでいいですけど。
敦澤 塁√
学校の取り壊しを巡って、町長と対決するお話。
塁の√に真面目なお話はあんまり求めてなかったので、微妙でしたね。
合奏団で子どもたちと楽しく頑張るとか、個人的にはそんな感じの癒される方向性でやってほしかったかな。
シナリオのシリアスな内容と塁のキャラクター性が上手いこと噛み合っていなかった気がしたので、もっと色々やりようはあったように思えました。
にしても最後のCG、麦の想像で笑いました。そこはもう合奏の発表会とかそんな感じの理由付けて、塁の正装を拝めるシーンに仕上げたら良かったのに。
華押 つづら√
つづらが自身のトラウマと向き合うお話。
いや、めっちゃ良かったんですけど……!
つづらのことは「ギャグキャラで面白いなー」程度にしか思ってなかったんですけど、こんな重い背景があったなんて知らなかったよ。
挽いたコーヒー豆の匂いを嗅いでつづらが感情を取り戻していくアレ。アレはかなりヤバかったですね。
微妙にギャグを挟んできて不覚にも笑ってしまいましたけど、プルースト現象を織り交ぜつつ、つづらが自身の封じ込めた想いと向き合っていく展開はなかなかグッとくる。
CG、音楽、演出が渾然一体となって我々プレイヤーの感情に訴えかけてくる見事なシーンでしたよ。
これだからノベルゲームはやめられん。サブ√でこれを言うことになるとは思わなかったですが……w
ただ、一つだけ不満を挙げるとするならば、姉についてでしょうか。
彼女は残念ながら亡くなってしまっているようでしたが、なにか手向けというか、最後に姉と一区切りを付けられるシーンがあればなお良かったかなと思います。
まあプラスアルファですので、この内容でも全然完成度は高いと思いますけどね。
淡雪の言葉を借りるのであれば、「心を動かされた」素晴らしい√でした。
淡雪 陽彩√

アルミアスの化身である淡雪と、壮大な恋愛をするお話。
美しいか美しくないかはさておき、綺麗な話だと思いました。
構成としては、大きく3つに分かれていたかなと。
- 恋人になって死んでしまうバッドEND
- 恋人にならず友情を貫くビターEND
- 恋人になって消えて帰ってくるグッドEND
順に見ていきましょう。
①恋人になって死んでしまうバッドEND
このENDは便宜的にわかりやすいのでバッドENDと言ってますけど、正直一番美しい終わり方ではあると思ったり。
納得はいかないんですけど、淡雪に課せられた使命?を考えると、この終わり方がしっくりくる感じもあるんですよね。
淡雪は全ての人に愛される存在。それでいて、全ての人を愛する存在。
麦のことは好きだけど、麦のことだけを好きになることはないわ。
ことあるごとに言っていた淡雪のこのセリフ、彼女の正体を考えると、麦だけを愛した結果、死んでいなくなってしまうのはある意味必然。ここで終わってしまうのは悲しいけれど、物語としては美しい。
でも……これは「楽しくない」。だから、美しくはないけど楽しい結末に向かう。淡雪√はそんな話が描かれていく。
今まで見せられていたのは泡宇宙だった。淡雪と想いを通い合わせた宇宙の結末を観測していたのだ。
泡の弾けるような音と共に、淡雪に告白するシーンまで舞い戻ったあの瞬間、得も言われぬ高揚感を覚えました。
ここからどう転んでいくのか。着地はどうなるのか。ここから先の展開から目が離せませんよ。
②恋人にならず友情を貫くビターEND
淡雪と麦が恋人にならず、つづらと共に生涯を友情に捧げるEND。
これはこれで美談ではあると思いますが、「本当にこれで良かったんだろうか?」と考えてしまうような、ややしこりの残るENDでもあったかなと。
淡雪が消えていなくなってしまうことは避けているので、間違いなく良いENDではあるんですが……ただ、それを「成しただけ」のようにも思える。
淡雪と共に生きた、大切な生涯の友人はもういない。誰が淡雪を幸せにするのだろうか。
「その後、淡雪は連れ合いを作ったり、親友を作ったり……そういう幸せを過ごすんだと思う」
「そういうのも……いいわよね?」
そんな淡雪の疑問に麦が答えることで、再び告白のシーンへと戻っていく。
1回戻ってからさらに戻ってきたので、これは驚きましたね(EDが通常の流れ方をしていなかったのでメタ的には予想できますが、それを言うのは野暮というもの)。
シナリオチャプターは「Another」から「The One」に。
「The One」の意味するところは「運命の人」。それが誰かは、もはや言うまでもないでしょう。
運命の人と一緒にいられなかった宇宙を経て、淡雪は、麦は、一体どこに向かうのか。この物語の結末を、見届けていきましょう。
③恋人になって消えて帰ってくるグッドEND
怒涛の10連続告白からの「俺が幸せにしたい」。麦くんが突然イケイケになって若干困惑を隠せなかったですが、主人公は格好よくてナンボなのでこれはアリです。
麦と恋人になって、つづらと遊んで、町の人たちと過ごして。淡雪の求める心の動き、それを感じさせてくれる人たちと最後の時間を過ごしていく。
綺麗なもの探しを終えて、地図を完成させて、金平糖を投げ合って。海辺で儚く消えていった淡雪の様子は、まさに淡い雪のようで。
……こういうことするの、本当やめてほしい(褒め言葉)。
そのままEDを迎えてしっとり終わるかと思いきや、エピローグで他のアルミアスたちに導かれた淡雪は、人としての身体を得て再び真澄町へ。
「家族になりたい」という麦の願いに答えるため、淡雪は自慢の美しい顔が涙で濡れてしまうことも構わず、麦への想いを言葉にする……。

泣くわ、こんなん。
余韻すごいですね。すごく浸っていたい気持ちになる。八那由他を越えた先の最高の宇宙。理想の泡宇宙はここにあったんですね……。
泡宇宙を巡るときに流れるBGM、「弾ける世界の影」があまりにも良すぎましたし、非常に綺麗に締められたので心地よい充足感に包まれました。
「望む未来を迎えるまで世界を繰り返す」というのはノベルゲームのシナリオでは王道ではありますが、やはり感動できて良いものですね。
1回目の背景がくすんだED、2回目のバックで流れるEDの演出も、ラストの破壊力を増大させるタメになっていて本当良かった。
というかこれ、他の√をプレイした後だと「本当のEDを見たい」と思わせられる作りになっていたので、淡雪√は少なくとも2人目以降に攻略した方が良さげですね。
まあそんな感じで淡雪√、総合的にはかなり良かったです。
個人的には欠点はほぼないように思えましたが、途中で麦が「俺が幸せにしたい」と言ってくれたのは格好よくてとても良かったんですけど、その後に麦の見せ場があるのかと思ったら……特に何もなく。ここは正直残念でした。
淡雪のこと、予想外のアプローチで助けてくれるのかなって期待したんですけどね。
麦が最後に何か見せてくれたら、私の期待に応えてくれるようなものであったなら、シナリオ評価は間違いなくSでした。まあ限りなくSに近いAという感じではあるんですけどね。
この√は『anemoi』の設定の神秘的な部分というか、そういうのをまるっと担当してた印象で、なかなかスケールの壮大な話でしたね。
こういう神秘的なSFシナリオは大好物なので、かなり楽しませていただきました。
間違いなく「心が動いた」シナリオであったと言えますね。面白かったです。
これでヒロイン全員クリアしたので、タイトル画面が風の回廊に一人佇むスピカに変わりました。
いよいよ大詰めのグランド√ですね。超楽しみです!
eternicle

麦とスピカの新居での生活が描かれ、大きな厄災を封じるためにスピカが風の回廊の最奥へ潜ってしまうお話。
前半~中盤は物語に大きな動きはないですが、幸せな後日談という感じで普通に良かったです。
スピカ√はエピローグがなかったですが、ここでじっくりやるためだったんですね。噛みしめるように堪能できて最高でした。
クルミの新規CGが結構出てきたのも面白かったです。彼女は後半で意外な設定を持ったキャラであることが明らかになりましたが、若干それの伏線という意図もあったのかも?
あと個人的に好きだったのが、夜に仲良くする直前のシーン。
「YES/GO枕」を抱えて部屋にやってくるスピカが可愛すぎた。あれは反則!

そんな感じで日常シーンは良かったですが、シリアス部分に関しては個別√の繰り返しという感じで、あまり面白みはなかったですね。
まあ個別√のスピカとは違って、彼女の内面はあの頃より間違いなく成長しているので、その点については良いんですけれども。
ただ、結婚して新たな家族を形成して子供を作って、そしてパートナーと子供との別れがやってくる。これってかなり既視感を覚える展開なので、正直食傷気味な感じはありますよね。
「それがKeyなんだ」って言われればそうなのかもしれませんけど、形を変えて同じようなものを見せてくる「結局いつものKey」と言ってしまいたくなる感じで、目新しさに欠ける印象はどうしても拭えない。
真澄町の住人もみんな良い人たちばかりなので良くも悪くも荒れなくて、そういう意味でも面白みに欠けるところはあり。
まあ本作は「牧歌的で平和な真澄町の雰囲気」が魅力だとは思っているので、そこに浸ってもらうという意味では悪くないんですけどね。シナリオのパンチはどうしても弱くなりがちですが。
ラストは交換日記にスピカの書いた文字が表れ、麦が「必ず見つけてみせる」と決意を見せるところで終わります。
あの瞬間、なかなか熱くてワクワクしましたね。
なんだかんだ私はハッピーエンドが好きなので、スピカにはちゃんと戻ってきてほしいな。
anemoi

麦とスピカと穂乃夏、速川家の顛末を描いたお話。
スピカがいなくなって麦がギリギリの状態になり、それを見た穂乃夏が励ますという、なんとも危うい生活が描かれていきました。
十年日記が逆にスピカを苦しめていたかもしれないと、あそこに気づかされたときの絶望感半端ないですね。
ただ、麦にとってスピカと穂乃夏が全てだったように、スピカにとっても麦と穂乃夏が全てだったと思うので、やっぱり十年日記はやめるべきではないですよ。
クルミにその事実を突き付けられて日記を書くのをやめてしまったのは、麦の弱さが出てしまったなと。eternicleの最後で見せた強さが揺らいでしまいました。
でも、ここで麦を支えてくれるのが穂乃夏なんですよね。穂乃夏は年のわりに頭が回りすぎているような気もしましたが、母がいない分、父の動向はつぶさに観察していたのかなと。
色々と参ってしまった時にこそ、家族で支え合っていく。この構図がまさにKeyのシナリオという感じで、込み上げてくるものがありましたよね。
穂乃夏関連で特に良かったのは七夕の短冊のシーン。

「父が母に会えますように」
ここでかなり涙を誘われました。穂乃夏ちゃん、マジで良い子すぎて……(泣)
後は穂乃夏のアルミアスが尽きかけて、消えそうになったシーンですけど、個人的にはここが「anemoi」のピークというか、最大瞬間風速だった気がしました。
ここはスピカと穂乃夏が初めて言葉を交わす瞬間ということで——まあ泣きますよね。これで感動しない人はさすがにいないでしょっていうぐらい、感極まるシーンだったと思います。
スピカにアルミアスを与えられて人間になった穂乃夏は使命に目覚め、スピカを探す旅に出る。
麦は家で、スピカ・穂乃夏・旅に出た人たちが帰ってくる場所を守りぬく。
「使命と旅」という、スピカと麦の行ってきたことが、子である穂乃夏に継承されていく。上手いこと描いているなと思いました。
ただ、そこから「arrive」のくだりは結構性急に描かれていた印象で、スピカが最後に帰ってきて感動はしたものの、頭の方での理解は追いついていなかったというのが正直なところですね。
本当になんで帰ってこれたんだろう。カレイドワールドにみんなの想いが届いたからとかなんかそういう雰囲気を感じますけど……これは想像力が試されるやつでしょうか。わかりまてん!
まあこの辺はっきり描かないのはいつものKeyという感じですけどね。サマポケ無印のグランドルートラストもよくわからないところ多かったし、本作もそこは受け継がれてしまった感ありますね。
にしてもスピカのいるクルヌギアの最奥は現世の1年が1万年になるらしいですが、交換日記が終わった時点で10年、麦の干支が5回訪れた発言で60年、スピカがいなくなってから、少なくとも現世では70年は経過していることになる。
ということは、スピカの体感時間はざっと計算しただけでも70万年以上。今から70万年前は前期旧石器時代に当たるらしく、日本には人類の祖先がまだ存在していないようです。
そこから現代に至るまで、一人でずっと過ごすんですよ……。
うん、無理。27年ごとに麦の日記を見られるとはいえ、これはさすがに辛いとかいうレベルではない。人間には耐えられませんね。
まあそれぐらいの果てしない時間をスピカは乗り越えたのか……もしくは穂乃夏が救出してくれたか。
描写が曖昧なのでわかりにくいですが、少なくとも言えることは「麦とスピカはずっと繋がっていた」ということ。
穂乃夏もまた繋がっていた。家族の愛が為せたと言いたいところですが、真澄町のみんなの存在も忘れてはいけない。彼らも麦たちをしっかりと支えてくれました。
最後に仲間たちが現れたのには、そういう意図があったのだと私は思料します。
グランドルートのテーマが家族にあるのはもちろんだと思いますが、個人的には、もっと大きく包みこむような「人の愛」というものを見せてくれたように感じましたね。
ちなみにタイトルの「anemoi」はギリシャ神話における風の神々のこと。本作においては、風の一族のことを示しているのでしょう。
総評
約8年ぶりとなるKeyのフルプライス新作『anemoi』は、風が吹き抜けるような心地よい空気感に浸りながら、「何気ない毎日がどれほど尊いものなのか」を改めて実感させてくれる作品でした。
本作の「宇宙規模の災害によって電子機器が使えなくなった」という世界観設定は、現代から現代的な要素を排して一昔前の雰囲気を演出したいだけではないのかと、プレイ当初はやや穿った視点で捉えていましたが、蓋を開けて見るとさすがKeyというべきか、そんな単純なものではなかったですね。
グランドルートではスピカをメインとして、本作の世界の過酷さ、アルミアスやエネルギー生命体の謎を描いていくような構造となっており、Keyお得意の「家族」というミクロな要素を中心に据えつつ、「世界に起きた悲劇・宇宙規模の災害」というマクロな要素も描いていました。この描き方が非常に上手でしたね。
風の一族の過酷すぎる使命は世界を救う力でありながら、世界の理不尽さを強く象徴するものであったように思えます。
そして本作の重要な要素である「風」というものは、つまるところ「移り変わり」というものを表現していたのかなと思います。
過ぎ去っていくものもあれば、確かに残るものもある。
- 町を出ていく人 旅の道すがらやってくる人
- 災害で亡くなってしまった家族 旅を共にしてくれた六花
- 姿を消してしまったスピカ 傍にいてくれた穂乃夏
何が無くなり、何が残るのか。そして、その先でどう生きていくのか。
人生の旅路を思わせるような本作の作りは、色々と考えさせられるものがありました。
ずっとそのままであり続けるものなんてない。だからこそ、今あるもののありがたみを噛みしめよう。
個人的には本作から、そんなメッセージ性を感じたところでしたね。
まあそんな感じでやや抽象的な話をしてしまったので具体的な話もすると、本作はシンプルによくできている作品だったのではないかなと。
個別ルートは前評判に違わず、淡雪√が非常に良かったですね。神秘的で壮大な、宇宙を巡る淡雪の物語。演出面も秀でていて、かなり力の入ったシナリオだったと思います。
他にも色々書きたいことはあるのですが、際限なくなってしまいそうなのでこの辺りで。ネタバレあり感想会……スケジュール的に開催はもう厳しいかもですが、なんとか開催できれば、そこで色々語りたいと思います。
Keyさん、素敵な作品をありがとうございました。ここまで読んでくださった読者の方も、ありがとうございました!
点数
| anemoi | |
|---|---|
| シナリオ | 18 |
| キャラ | 18 |
| 音楽 | 20 |
| システム・演出 | 17 |
| 全体の完成度 | 19 |
| 合計 92点 (各項目は20点満点) | |

おまけ
「マスターアップイラスト」


コメント
コメント一覧 (2件)
Cyberさん、いつも大変お世話になっております(=^^=)えりんぎです。コメントが遅くなり、申し訳ありません(汗)私が『anemoi』のプレイを終了したのが5月12日なので、ややタイムラグがあり、少々コメントしたいこともありましたので、お時間をいただきました。
まずは、謝意を。Cyberさんの記事は、いつも情報の整理になるとお伝えしておりますが、今回もまた、『anemoi』という作品理解に繋がる素敵な記事を残していただき、誠にありがとうございます。私も含めて人間は時間の流れとともに作品の大切なものをどうしても忘れていくものです。ゆえに、貴記事のようにきちんと画像付きでまとめられている感想を拝読するたびに、新しい発見や変化の気付きがあり、とても有意義な趣味ライフを送ることができていると思います。
さて、早速本題です。Keyさんというある種、業界トップ層の、久し振りの完全新作。魁さん達スタッフの方々にも相当なプレッシャーが掛かっていたのは言うまでもありません。しかし、結論から述べると私は、本作は期待に真っ向勝負で応えることができた作品であると思います。その点で私は制作陣やレビュワーなど作品に真摯に向き合っておられる方々全てにお礼をしたいと思います。私にとっても大切な作品になりました。詳しくは私が記しましたnote記事をご覧ください。注目作に相応しい分量(笑)ですが、一読の価値があると自負しております。個人的に言及しておきたいのは小詠√と、ラストエピソード「eternicle」と「anemoi」です。
小詠シナリオはCyberさんも相対的に低めの評価をなさっておりますし、客観的に見て、『anemoi』ファンから見ても評価がやや低いシナリオであると推測します。しかし、私にとっては災害の一部を感じられて、かつラストエピソードに対する伏線にもなり、本作『anemoi』の中でも一級品の優れた物語であったように思います。個人的な好みで言えば、六花√も同様に大好きです。はっきり言って、愛乃√や淡雪√の方が単体で見ると評価が高くなるのも納得できる程度には咀嚼が難しい(=好感を抱きずらい)シナリオであるとは思っています。事実、『Summer Pockets』の某ヒロインと被るという貴記事のご指摘は至極、妥当であると感じます。ですが、被っているから価値が低くなるかと言われると私は違うと言いたいです(無論、Cyberさんもこの点は同様に認識していると考えております)。人外ヒロインだらけの本作ならではの味は、実は小詠√のジャッジ(=評価)にこそあるのではないかと私は思っています。勿論、Cyberさんが仰るように比較対象の存在を考えれば、評価も妥当なのでしょう。ただ、個人的には淡雪シナリオのEND分岐に正直、疑問を抱いているので(笑)、相対的に六花&小詠、特に小詠√の評価が上がりました。
そして、最後の「eternicle」と「anemoi」です。某映画作品を良い意味で思い出す、温かくも厳しい展開でしたね。私はこういう作品に好感を抱きます。ゆえに刺さりました。私は常々、「責任を取る」ことを重視して作品を楽しんでいます。例えば、一般的な学生恋愛が舞台の作品ならば恋愛において、どう男女間で責任(性交渉も対象です)を取るかが、文字通り「肝」なのです。その点で言えば、麦が責任を十分に取れる年齢や立場になってから行動に至っている点が本当に好みでした。私ももはや学生恋愛には満足できなくなった注文が多いプレイヤーになってしまったという証拠ではありますが、だからこそ十分な満足感があったのです。今までのKey作品のセルフオマージュも効いていて、実に読み応えがありました。
一方、Cyberさんのようにしっかりと自分の意見を、例え自分が不利益を被ってでも仰っていただくプレイヤーに、私は心からの尊敬と敬意を示します。個人的には文弥√や小詠√、淡雪√の感じ方が私とは大きく異なっている感想だな、と拝読していて思いましたが、だからこそ「それが良い‼」のです。自分とは異なる視点で感想や批判、賛辞を観測できた時こそ、真に私はノベルゲームプレイヤーで良かったと思います。
本作に対しては注目作であり、かつKeyという歴史あるブランドであることから「過去作品との比較」、「作品評価自体の是非」など興味深いテーマで議論が今なお、なされていると感じました。
しかし、作品自体やスタッフの方々、そして盛り上げてくれているユーザーの努力の下、偉大な作品がまた1作品。誕生したと確信しています。その中には当然、Cyberさんのレビューも含まれています。私事ですが、今、私生活の環境が大きく変わり、ノベルゲームが以前ほどはできていない(遊ぶ意思は強く持っています)のがお恥ずかしながら、現状です。しかし、Cyberさんという素敵なレビュワーさんと友人になれて、コメント欄でコミュニケーションを取るのは、作品理解の点やそれ以上に一人間として楽しみとして深いものです。Cyberさんもレビューや動画の投稿頻度から、諸要因がお忙しいのではないかと推測します。お互いに、多忙を極める中でも、心のどこかで友情やノベルゲームを愛する気持ちを忘れないでいたいものです(´∇`)
長文失礼いたしました。また遊びに来ます。
えりんぎさん、コメントありがとうございます。
こちらこそ、いつもお世話になっております。本当にありがとうございます(*^^)v
最近の感想記事は以前に比べてあまり作り込めていない自覚がありましたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。
私もえりんぎさんの記事は拝読いたしました。また色々と私とは違った感想を抱かれていて、読んでいて参考になりました(他の方の記事を参考にして作っている点、さすがと感じます)。
素敵な記事をありがとうございます。
小詠シナリオについては色々な方の感想を読ませていただきましたが、高評価なコメントも多かったですよ。
私としては『ララジャム』の月望√の感想を読んでいたのと同じような感覚で、「結構高く評価されているんだなー」とやや驚きました。
小詠√は災害や真澄町の外の町の具体的な描写がありましたからね。本作の世界観の解像度が高くなるような感覚はあって、そこは確かに良かったなと思えた点でした。
「淡雪シナリオのEND分岐に疑問を抱いている」というのは、なんというか意外ですね笑
私は「えりんぎさんの好きそうな選択肢ギミックだなー」と読んでいるときに思っていたんですが、また違った感覚を抱いたということでしょうか。
私としては淡雪√は複数ある宇宙(=世界)の具体的な描写に説得力を感じましたし、別の世界の六花や麦に出会った時のショックを受けた反応など、結末以外にもハッとさせられる描写がありまして、そういうところも個人的には高く評価しています。
「eternicle」と「anemoi」については人生を描き切っていて、麦も本当に頑張っていたので、確かに様々な責任を果たしていたように思えますね。ご立派ですよ本当に。
個人的には「育児」の描写がなかなか真に迫っているように感じまして、この辺りは実際に子供がいる方などはまた違った感想があるのだろうなと思いました(私は子供はいないですが笑)。
私は自分の意見を言って不利益を被った自覚があんまりないのですが……なんか私の知らないところで色々言われてたりするんですかね?笑
まあ何を言われようと私は自分の主張・意見は曲げずに言っていきますよ。それがノベルゲームの制作者に対する礼儀だと思っていますし、お金という対価を払っている以上、相応の発信をする権利はあると思っているので。
えりんぎさんが私の個人的な感想を尊重してくれている点は、今までのコメントを通じて感じているところですので、その点については本当にありがとうございます。
『恋愛、はじめまして』の感想で旋風を巻き起こしたえりんぎさんを見て、他の方は色々言われていたと思いますが、私はむしろ誇らしく思っていましたよ。
外野にとやかく言われると芯がブレそうになるときもありますが、自分の信念だけは曲げずにいたいものですね。そういう意味では私もえりんぎさんのことは心から尊敬しています。
『anemoi』と「過去作品との比較」についてはやはり、『サマポケ』や『CLANNAD』と比較されることが多いのでしょうね。
私自身、「『サマポケ』とどう違うのか、麻枝さんなしでどこまでやれるのか、ちゃんと泣けるのか、そして『サマポケ』より面白いのか」。
こういったところを無意識に抱きながらプレイしていたところは正直あると思います。
単体で評価するのが好ましいとは思いますが、Key作品は歴史があるだけに、なかなか難しいところがありますね。
こちらこそ、いつも熱いコメントをいただきありがとうございます。
お時間が取れない中、私の拙い感想にここまで真摯にコメントをいただき、感謝の念に堪えません。
ノベルゲームをプレイして、その感想について語り合う時間はかけがえのないものですね。
えりんぎさんとの縁への感謝の気持ちを忘れず、これからもノベルゲーム、どんどんプレイしていきますよ!
えりんぎさんもご多忙かと思いますが、どうかお身体に気をつけてお過ごしください。
長文失礼いたしました。またよろしくお願いいたします。